新書「マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか」
朝日新書「マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか」鈴木貫太郎著を読みました。
タイトルの「マイナス×マイナスはなぜプラスになるのか」?と問われても、
当たり前のこととして理解しているので何をいまさらということですが、
もちろん、ボクは学校でそう習ったからそうなんだというわけでもなく理解してるつもりですし、
大学生のころにアルバイトで家庭教師もしてましたからちゃんと説明してあげられますけど
それでもそこにはいろいろな説明の仕方があるのでコレと決まったものがあるわけではありません。
そんなことなどから、本書ではどんな切り口で説明しているのか、
あるいはそれだけで一冊の本にするほどのことでもないので、他にどんなことが書かれているのか、
まぁ、そんな興味から本書を買って読んでみました。
なお、著者は数学者とか大学教授とかではなく、数学解説動画を投稿するユーチューバーだそうです。
また、本書は左開き・左綴じの横書きというスタイルとなっています。
数式が出てくるのでこのスタイルなのは当然ですけどね。
そして、本書の「はじめに」ではのっけから
「5年間で1.5億円数学的に『競馬で勝つ』には?」なんてことからはじまりますが、
もちろんこれも数学的な話なのですが、それはさておき、次のようなことが書かれています。
(以下引用、改行位置変更)
数学教師が受ける質問のダントツのNo.1はおそらく「数学って将来的に役に立つの?」でし
ょう。それに対する私の答えは、「公式に数字を当てはめて答えを出したり、解法パターンを覚え
て類題が解けるようになったりすることは一生役に立つことはない」です。(中略)
しかし、単なる丸暗記ではなく、なぜそうなるかということを考える姿勢、すなわち、「論理的
思考力」はどうでしょうか。実生活において、答えはもちろんマニュアルもない問題を解決すると
き、筋道を考える手段になりますよね。また、新たな独創的創造の基礎にも、理論的思考力は必須
です。だからこそ数学は、目に見えないところで間接的に役に立つと信じています。(引用終わり)
本書で著者が伝えたいことってまさにこういうことであって、
以下に数式などを用いていろいろと具体的に書いてあることは
これらの論理的思考力を養うための例題と考えることができるのではないですかね。
その中のひとつの「マイナス×マイナスがプラスになる」というのがあるということです。
まっ、ボクは以前にも書いたことがあるかと思いますが、
数学の勉強は、それがたとえ入試勉強であっても、クイズ感覚・ゲーム感覚で楽しんでやってたので、
上記のような「将来的に役に立つの?」と思ったこともないし、
でも確かに「論理的思考力」は身に着いたと思うから、著者の考え方には全面的に賛同しますね。
逆に言えば、そういうスタンスなので本書を読んでもあまり新鮮味はありませんでしたが……(汗)
そんなんですから、ここでそれらの“例題”のひとつひとつを採り上げて結論だけ書く意味はないし、
「マイナス×マイナスがプラスになる」説明もここではしませんが、
その説明の過程で次のようなことが書かれていて、ちょいと面白いので紹介しておきましょう。
(以下引用、改行位置変更)
二次方程式の一般形は(中略)
という解の公式を使えば、a、b、cがどのような値でも万能に解くことができます(中略)
ほとんどの中学生は「エックスイコール、ニーエーブンノ、(中略)と理屈もわからず念仏のように
何度も唱えて丸暗記しています。だから2017年に埼玉県が公立高校の入学試験で全学校同一問題を
やめて、数学と英語は上位校向け問題を用意し、そこでこの解の公式を導かせる記述問題を出題し
たところ、壊滅的な正答率で試験中にすすり泣く声まで聞かれたそうです。 (引用終わり)
いいですねぇ。まぁ「すすり泣く声」は脚色が入っているかもしれませんけど(笑)
ボクも二次方程式の解の公式はいちおう覚えましたけど、それでも今でも簡単に導き出せます。
何度も導き出しているので、なんとなくで覚えていても曖昧にならずに間違えないし、
何年経っても忘れるなんてこともないんでしょうね。
これが論理的思考力が身に着いているということなんだと思います。
でも、それって別に自慢でもなんでもないわけで、本書では次のようなことも書かれています。
(以下引用、改行位置変更)
では、数学が好き・得意な人はどうでしょうか。そもそも数学が好き・得意な人は、なぜ数学が
好きで得意なのでしょうか。
それは、数学は暗記しなければならないことが他教科に比べて極端に少なくて、楽だと思ってい
るからではないでしょうか。高校までの数学に出てくる定理・公式はすべて導出・証明ができるの
で、なぜそうなるのかという根本原理を「理解」しておけば、覚えなくてもその場で導けるという
安心感があるのです。(中略)
数学を学ぶ本当の意義は、定理・公式を覚えてそれを使うことではなく、定義に基づいて定理・
公式を導いていく論理構成を理解することにあります。 (引用終わり)
数学が得意な人(単に受験勉強で点数が高いだけの人もいますが)は上記のようなことなので、
ボクも含めて頭から公式を覚えようと思ってないし、
むしろ覚えることが嫌なので数学は覚えなくてもできるから面白いってな感覚なんですよね。
ただ、著者はユーチューバーで数学解説動画を投稿しているとのことですが、
視聴者のほとんどが中高年のオッサンばかりで高校生など若い人にはほぼ見られていないそうです。
受験生なんかは結局は目先の試験テクニックとして公式の使い方だけ覚えて
パターン化してテストでいい点を取ろうということなんでしょうね。
これを嘆かわしいと考えるかどうかはいろいろですが、
でも、本当に数学が得意な人は高校生・受験生でもユーチューブなんかで数学の動画なんか見ないで
自分の頭で数学の勉強というか解き方を考えるんだろうと思いますよね。
だって、ユーチューブなんて見ないで自分の頭で解けた時が至福の喜びなんですから(笑)
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