新書「静かな退職という働き方」
PHP新書「静かな退職という働き方」海老原嗣生著を読みました。
「静かな退職」っていう言葉やその概念は最近にどっかで見聞きして分かってるつもりですが
内容はともかくどうも変な言い方だなぁ、しっくり来ないなぁと感じているんですよね。
本書の「はじめに」では次のようにはじまっていきます。
(以下引用)
「静かな退職」という言葉をご存じですか?
2022年にアメリカのキャリアコーチが発信し始めた「Quiet Quiting」の和訳で、
会社を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やる
べき業務をやるだけの状態、とされています。
彼らは、「働いてはいるけれど、積極的に仕事に意義を見出していない」のだから、退
職と同じという意味で、「静かな退職」と名付けたのは、言い得て妙と言えるでしょう。
(引用終わり)
あぁ、そうなのね、「Quiet Quiting」の和訳なわけですか。
英語に詳しくないけど、「quit」には退職という意味もあるけど「や~めた」って感じであって、
会社を辞めるという他にも「がむしゃらに働く」のを已~めたってニュアンスでしょうし、
そこに -ing が付いて「已めつつある状態」みたいな現在進行形のニュアンスも加味されてますし、
さらにきわめつけで「quiet」と「quit」で韻を踏んでいるようなところもあるので、
それなら著者が書いてあるように「言い得て妙」な表現だと感心しますけど、、、
それをそのまま「静かな退職」と和訳したのは誰かは知らんけど、
はっきり言ってセンスのかけらも感じない無粋な訳だなぁと思っちゃいますなぁ。
じゃぁ他にもっといい和訳があるのかよ、と言われるとボクもセンスがないので困りますが(汗)
例えば、退職と書かずに「怠職」と書くとか、それだとネガイメージが強すぎるので「泰職」とか。
まっ、言葉遊びはともかく内容的には「大した仕事もせずに会社に居座り続ける」ということなので、
こちらの「働かないおじさんは資本主義を生き延びる術を知っている」と共通するところが多々ある
というかほぼ同じというところですかね。
ただし、「働かないおじさん……」はオジサンだけに絞っているのに対して
本書では新入社員も含めた若い世代をも対象にしているのが少し違っているかなという感じです。
要は社会人になった時からすでに上昇志向を持たずに出世も働きがいも関係なく
プライベート優先で必要最低限の賃金をもらうために働くという考え方とも言えます。
著者はこのような働き方は欧米ではむしろ普通であると書いていますけど、
ボクの感覚でも働く基本は賃金収入を得ることだと思っているので当然のことと受け止められるし、
だからこそそれを「静かな退職」という変な日本語で語るのに違和感を覚えるんでしょうね。
出世とか働きがいとかを完全否定するわけではないけど、
それはあくまでも必要な収入を得るために働くという基本があっての上で
それぞれの人がそれぞれの考えでそれぞれの制約の中でプラスαとして得られればラッキーって感じ。
ですから、本書に書かれていることはおおむね納得できるし、むしろ当たり前のことに感じます。
けれど、途中、「第5章『静かな退職』を全うするための仕事術」というHow toに近い内容となると
いきなり次のようなことが書かれています。
(以下引用)
その際、重要になるのは心証です。(中略)
まず第一に気を付けるのは「身なり」「言葉遣い」「マナー」。(中略)
逆に言うと、マナーさえ一流であれば、話の中身に意義があるかどうかなど、多くの場
合、あまり問題視されないのです。ここに気づいてください。 (引用終わり)
うーん、身なりも言葉遣いもマナーも最低限必要ですが、それが第一というのはかなりの違和感。
著者は「静かな退職」は欧米では普通だと言いながら、欧米の会社員が
「マナーさえ一流であれば、話の中身に意義があるかどうかなど」関係ない仕事ぶりなのかと言えば、
ボクの感覚ではおそらくそんなことはありません。
むしろこのような発想は、日本の「村社会」のような会社組織の中で村八分にされないように
上司や同僚に「心証」だけは良くしておきましょうと言った極めて日本的な思考に陥ってるかなと。
もちろん、日本にはそういう会社、あるいは上司や同僚が多いから、
つまりきちんと賃金に見合った仕事をしているかどうかよりなんとなく目立たず和を乱さずやってる
「心証」だけ良ければ「静かな退職」という状態を続けやすいというのは確かかもしれませんけどね。
それでも、そんな「村社会」のような会社や職場は長い目で見れば淘汰されていくでしょうから
高齢オジサンが逃げ切れるかどうかという話ならそれでもいいかもしれませんが、
若い世代の方たちが心証だけで一生「静かな退職」を続けられるとは思えませんけどねぇ。
どうでしょうかねぇ。
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