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新書「シンボルエコノミー」

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祥伝社新書「シンボルエコノミー――日本経済を侵食する幻想」水野和夫著を読みました。

本書の帯の裏表紙側にはこんなことが書かれてます。もっとも本書の「はじめに」からの引用ですが。
                               (以下引用、改行位置変更)
リアルエコノミーは、人々が必要とする財・サービスを提供するために、L(労働)とK(資本)を
用いてGDP(実質国内総生産)を生み出す世界です。対してシンボルエコノミーは、ROE(自
己資本利益率)を引き上げてK(資本)を増殖させる世界です。(中略)シンボルは単なる記号であ
り、「幻想」です。株式も為替も記号にすぎません。(中略)シンボルに振り回されるているうちに
実質賃金は下がり、人々の自由が奪われている(中略)。このことにリアルの世界に住む主権者で
ある国民が気づかないと、国民国家の時代が終わり、「資本の帝国」の臣民となりかねません。い
や、すでにそうなりつつあります。                   (「はじめに」より)
                                     (引用終わり)

本書の内容はここに集約されてますね。なので、以上(笑)
じゃブログ記事になりませんから、個人的に面白いと思ったことなどを紹介しておきましょう。

 

本書ではまず第1章から日銀・黒田前日銀総裁の「異次元金融緩和」というか
アベノミクスといってもいいけどたぶん安倍氏は乗っかってただけでしょうけど、
そこらあたりから説明がスタートしていきます。
                                   (以下引用)
 この事実は、日本の経済構造が「大胆な金融緩和」(安倍晋三首相[当時]が掲げた「ア
ベノミクス」第1の矢)や「機動的な財政政策」(第2の矢)では変えられない段階、すな
わち「定常状態」に入っていることがうかがえます。第3の矢である「民間投資を喚起す
る成長戦略」を含め、3本の矢が成功しなかったのも同じ理由です。日本が「定常状態」
に入っているとの仮説が正しければ(同仮設は第4章で詳述)、日本には再びゼロインフレ
に戻ってくるであろうと私は予想しています。             (引用終わり)

日本だけでなくグローバルで資本主義は定常状態に入りつつあり、日本はその先頭にいるのだと。
だから、定常状態を前提にしていないアベノミクスもクロダノミクスも成功しなかったというわけ。
小難しい経済学の理論でなくともボクは直感的にアベノミクスは間違ってると思っていたし、
それは経済成長しなければならない/経済成長はするものだという前提に疑問を持っていたからで、
その意味ではそのことが「定常状態」という表現になっているのだということですかね。

もっとも、本書ではそんなボクの肌感覚みたいなものに頼ったような内容ではなく
きちんと経済学の用語やデータを用いて丁寧に説明されていますけどね。
ただ、あまりに小難しい話となると直感的な理解が追い付かなくなるので
何度も読み返さないと分かったような気になるけど後で考えるとアレレ?ってなるんですけどね。

 

そして、リアルエコノミーとシンボルエコノミーを分けて考えなければならないのですが、
その際たるものが日本のGDPに関する次のような話です。
                                   (以下引用)
 日独の名目GDP逆転を額面通り捉えれば、2010年に中国に、2023年にドイツ
に抜かれた日本の衰退を表しているということになります。しかし、この認識は正しくあ
りません。なぜなら、リアルエコノミーを代表するGDPをシンボルエコノミーの物差し
であるドルで評価しているからです。賃金下落や預金金利ゼロなど、国民生活の低下とう
うリアルエコノミーの犠牲のうえに、ビリオネアに象徴されるシンボルエコノミーの繁栄
が成り立っているのです。                      (引用終わり)

日本のGDPの伸びが鈍化している=(リアルエコノミーでの)経済成長していないではないわけで、
ただシンボルエコノミーの世界で巨万の富を独占しているのが、
特にアメリカなどと比べて少ないのでリアルエコノミーでも搾取される側に回っていて
結果的にグローバルでの格差がとんでもなく大きな世の中になっているということですな。

これに対して本書の最終章となる「第5章」ではこんなことが書いてあります。
                                   (以下引用)
 私たちが今、問われているのは「自由と平等」を掲げたフランス革命の理念を維持する
か、放棄するかです。すなわち、歴史の岐路に立たされていることになります。
 資本主義はこの理念を放棄して、上位1%の人は下位99%の「不自由」のうえに「自
由」をもっと増やそうとしています。実質賃金の下落は自由を奪います。 (引用終わり)

なるほど。と、途中を端折ってしまっているので、ここだけ読んだ人は論理の飛躍と感じられるかも。
でも、国家間でもあるいはどこの国の国民間でも格差の問題は大きくなる一方ですから、
その根本的な原因がシンボルエコノミーにあるであろうことは直感的にも感じるはずでしょう。

それはフランス革命の理念の「自由と平等(と友愛)」に反するということです。
フランス革命そのものはいろいろな捉え方があるでしょうし、
この理念についてもさまざまな解釈があるでしょうけど、少なくともボクはこの理念を支持しています。
まっ、フランス車に乗り続けているからというわけでもないですがね(笑)

 

じゃぁ、どうすればいいのか? 革命を起こせ! というわけにはいきませんが、
本書の「おわりに」には次のように些細なヒントになることが書かれています。
                                   (以下引用)
 本書でもっとも訴えたいのは、早急に資本主義を止めることはできないので、まずは行
動原理を変えようという心意気を持つことです。そうしなければ、「幻想」の世界に資本
が君臨し、リアルの「絶望」はますます深まります。「幻想」のシンボルは、リアルの
「絶望」の裏返しだからです。
 資本主義の行動原理は「より遠くへ、より速く、より合理的に」です。これに従ってい
れば、会社は儲かり、従業員は出世することができました。今後は180度転換して「よ
り近く、よりゆっくり、より寛容に」という行動原理を取ることで、一人ひとりの人間性
を大切にする社会を築いていくことができます。            (引用終わり)

ふむふむ、ボクは絶望したくはないしかといってもう幻想を追い求めようとも思わないし、
だから早期リタイアしてリアルエコノミーからもシンボルエコノミーからも少し距離をおくようにしたし、
そうしたら確かに「より近く、よりゆっくり」という行動原理というか思考回路になってきてるかな。
さすがにそう簡単に寛容にはならないけど(汗)、それでも昔より少しは寛容になった気もするけど……
単に鈍感になっただけかもしれませんがね(笑)

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