新書「味の世界史」
本書の「はじめに」には次のようなことが書かれています。
(以下引用)
このように産業革命をベースに中国とヨーロッパを比較するのは、一見、当然のように思
えるかもしれません。
しかし香辛料と砂糖という産品を軸に歴史を見ていくと、それとは別の視点を示すことが
できます。すなわち、(少なくともヨーロッパ史の立場から)もっとも重要な国際商品として、
まず香辛料が、ついで砂糖があったという変遷を考察することには、世界史の研究上、大き
な意義があるはずなのです。 (中略)
そして本書の主旨からも重要なことに、もう一つ、現代世界が第二次産業革命の所産であ
ると示すものがあります。それは、うま味調味料と食品添加物です。
詳しくは第5章に譲りますが、人工的につくられるうま味調味料と食品添加物は、80億人
以上にもなる地球上の人口を支えるために不可欠なものになっています。別言すれば、それ
は、現代社会が第一次産業革命ではなく、まさしく重化学工業を軸とする二次産業革命によ
って形成されたことを物語っているといえるのです。 (引用終わり)
そう言われるとなんとなくそうかなぁと思わなくもないけど、
香辛料なんだ、塩じゃないんだ、塩分は生命維持に必要不可欠だけど、
胡椒や唐辛子やカレー粉(といっても様々あるが)はなくても死ぬわけじゃないのにねぇと思うし、
砂糖は中毒性があるから分かるけど、香辛料にも中毒性があるのかな、うーんどうなんだろう?
といろいろと疑問が湧いてきますね。
うま味調味料も個人的にはないと困るけど、旨味が規定されたのも近年になってからのことなので、
これまたなくても人が生きていけないわけでもないから世界人口を支えてるとは言えないような。
食品添加物だって保存料としては必要不可欠になっているけど
それを言ったら冷凍保存技術やら缶詰、レトルトパウチ、フリーズドライとかの技術進歩もそうだし
世界人口を支えているのはなんといっても化学肥料や農業機械の進歩の影響が大きいのでは?
まぁ、それもこれも二次産業革命の成果とも言えるけどね。
ただし、本書でも単に香辛料とか砂糖だけに焦点が当てられて世界史が語られているわけではなく、
それらに付随する形で貿易・流通形態や、奴隷制、植民地支配、戦争、武器輸出などにも及びます。
まぁ、だから世界史なんですけどね。
というわけで、味だけの切り口で世界史を見るのは面白いけど少し無理があるかなという感想ですが、
とはいえ、冒頭に紹介したように機械化による「産業革命」ではなく砂糖による「砂糖革命」と捉え、
それが資本主義の中毒性を表していて、
金も糖質も際限なく欲してしまう人間の愚かさであると考えることができるのかもしれないですね。
どうでしょう?
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