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相次ぐ自動車メーカーの認証不正問題に思うこと

ボクは元自動車メーカー社員でしたけど、早期リタイアしたいまではもうまったく関係ない身なので、
最近ニュースで話題になっているこの自動車メーカーの認証不正問題に対して
直接的にあれこれと語る情報は(秘匿にする情報も)ないですし、

本件に関して詳しく聞いたり調べたりしたわけでもないので真相を正確につかんでませんが、
まぁちょっとだけ感じたことを書いてみようと思います。

 

まず、ボク自身の自動車メーカー在籍時のことからいうと、当然ながら認証不正には関与してません。
というか、国内認証に直接携わったことがないし、海外の認証でもほんの少ししか携わってないです。

ヘンテコ部署(モータースポーツなど)では量産車の認証はまったく関係ないし、STi発足時もそうだし、
排ガス実験部署でも排ガス耐久やエバポなどほぼ北米認証(規制)しかやってなかったし、
在籍期間が長かった操安乗り心地の実験部署でも国内認証はまったくありませんでした。

操安では欧州の舵力試験、豪州のパンク試験があったくらいですね。

欧州の舵力試験ってのはパワステが壊れてもなんとかハンドル操作ができるかどうかの規定だけど
大型トラックなど重たい車両でも通る規制値なので、小型乗用車のスバルなら絶対に通る認証ですし、
豪州のパンク試験ってのもパンクしてもちゃんと停止できるかどうかの規定なんだけど
これまた普通に走れるクルマならほぼ確実に受かるような認証試験でしたね。

その後は実験総括部というところで実験全体の開発をまとめる部署に異動となったので、
ますますもって個々の認証試験とは直接関わることはなくなりました。
ですから、あまり認証についてボクが語る資格はないんですよね(汗)

 

ただ、それでも上記のように欧州舵力試験とか豪州パンク試験とかは直接やっていたわけです。
そう、スバル以外でも似たようなものだと思いますが、
自動車メーカーには各国の認証業務を専門にする認証部門があるけれども
実際に認証試験をするのはその認証部門ではなく開発部門にある実験部署です。

同じような設備や人員を認証部門と開発部門で二重に有しているなんてことはないでしょうから、
開発部門の設備と人員が認証の試験=実験もしているということになります。
なので、認証部門はその結果を受け取り認証機関に送る仲介役でもあり、
また不正がないかのチェック役でもあるこということなります。

そして、この記事にも書いたように、多くの場合、実験部署が目標性能を設定します。
その目標性能には認証試験に合格することも含まれますが、情報公開での成績やら、
競合他社との比較やらユーザーの期待値や満足度などやらが含まれるわけですが、
いずれにしろ自分たちで目標を立てて、自分たちでそれを達成するよう開発を進め、
自分たちでそれを確認し(実験し)、目標達成することが責務となるわけです。

ここに今回のような不正が起きてしまう一因があるのでしょう。
何らかの事情で認証試験に不合格になってしまった、あるいは試験を間違えた、
別の事案で試験ができなくなった(試験車=認証車が足りないとか)とか、
そういう事態でもなんとか日程通りに認証を通させないといけないとなってしまいますから。

おそらく、今回明るみになった不正問題はこのようなことから発生させてしまったと思われます。
まぁ、もしかしたら何らかの事情がなくとも、意図的に計画的にやることによって
開発日程・認証日程の短縮や試験車・認証車の制作台数削減を狙ったのかもしれませんが、
もしそうだとしたらそれはかなり悪質ということになるでしょう。
(※燃費・走行抵抗の認証不正問題時のス〇キの不正などは限りなくこの手の悪質なものでしょうし、
 VWのディーゼルゲートに至ってはもう会社ぐるみの不正なので悪質も悪質の最悪質ですが)

もちろん、だからといって不正していいわけではないし、どこでも誰でも不正するわけではないし、
でも、いかに問題発生をオープンにしていけるかという風土や、不正は絶対にだめという教育や、
外部、特に認証部などが不正の芽を摘み取ることをしているかという組織体制などが重要になります。

そういう意味では、ボクは晩年に在籍していた実験総括部というのは直接認証には携わらないけど
不正の芽を摘み取るということに関してはその責任の一端を担っていたとも言えるんですよね。

 

もうひとつ問題だと思われるのは、国交省の対応です。
ただ、こう書くと、トヨタ会長がちょろっと口走ったように国交省の認証基準が世界基準と違うとか、
それが自動車メーカーの足を引っ張っているとかの論調の批判を書いている評論家(?)もいますが
そうではありません。

そういう部分もまったくないとは言い難いですけど、今回の問題の本質はそこではないし、
認証業務の効率化については自動車メーカーと国交省との間で話し合いの機会もあるので
そういう場で議論すべき話なので、今回の件では議論のすり替えとも言えることですし、ましてや
不正をした自動車メーカーのトップが言い訳がましくそんなことを言うべきことではありません。

問題なのは国交省というか日本の自動車の認証制度はほぼ完全に性善説に基づいているということ。
今回の5メーカーの不正発覚にしたって、それぞれのメーカーが内部調査して分かっただけ。
トヨタはまだ一部しか調査してないと言っていたけど、そうでなくとも今回がすべてではないだろう。

今回の5メーカー以外でも本当に不正がないのかどうかは分かりません。
スバルだって本当にホワイトなのかと言われたらどうなんでしょう、としか言えません。
まぁ、元社員だった人間からすると、たぶん大丈夫じゃないかと考えていますし、
他メーカーで不正が横行していたことにも驚きというかちょっと信じられないという思いですが。

なんにせよ、性善説に基づいて認証制度ができているので、不正しても分からない。
不正するかもしれないから、不正しないように目を光らせて、不正できないような制度にしよう
とはまったくもってなってないから。

その意味ではどこかのトップが謝ってたように「認証制度の根幹を揺るがしかねない不祥事」で、
これを機に性善説ではなく、性悪説に基づいた認証制度というのを検討していかないといけない。
例えば、国交省で独立して試験をできるようにする、あるいは第3者の認証機関で試験するとか。
まぁ、第3者の認証機関でも癒着が発生したりしていろいろ問題は起こり得るけどね(汗)

 

それから、ニュース報道などでは該当するメーカーの車のユーザーなどが登場して
「乗り続けていいのか心配」とか語ってるのが放送されていたりまするけど、
まぁたぶん大丈夫でしょう。

それぞれの案件を事細かに見たわけでもないので無責任な発言ではありますが、
すぐに壊れるとか事故るとかの話じゃないし、
万一事故になったからといって今回の件に原因があって命に係わるという確率はかなり低いでしょう。

事故が起きるかどうかも含めて、その事故の様態などの要件に比べれば、不正の影響は誤差範囲かな。
そもそも命に係わるかどうかはかなりの部分は運/不運なところなので、
よほどのことがなければ、例えばエアバックが誤爆するとか作動しないとか、、、
そうじゃなければまぁ普通に使っていて大丈夫かと思えるのですが……

(※それでも、開発している技術者からすれば、その細かなところが大変だったりもするし、
 その僅かな命に係わる確率を良くしていくことの積み重ねが大切なことでもあるんですが)

かといって、不正を犯したメーカーが自ら「安全性には問題はありません」と言い切るのも、
それはあまりに無責任な発言ではないかと思っちゃいますけどね。
認証試験と全く同じ試験を追試験してOKを確認済みだというのならまだいいですが、
勝手に厳しい条件でやってるのでOKだとか言うのはあまりにも酷い言い訳です。

入学試験で不正=カンニングしたのに、模擬試験でもっと難しい問題を解いているので実力あります、
と言っているようなもんです。なんの言い訳にもなってません。

そして、そう言いながら暗に国交省の認証試験が二重基準になっているかのような印象操作や
認証基準より厳しい社内品質基準で良い車を作ってますアピールをするのは姑息なやり方です。

 

そういう意味においても国交省は舐められ過ぎですね。
さすがに現行車で不正が明らかな数車種だけは型式認定の一時取り消しで生産停止状態ですが、
これはダイハツの時から問題だと思っていたんですが、
本来ならこういう不正が発覚したら、そのメーカーの全車の型式認定を一旦取り消すべきではないのか。

入学試験で不正=カンニングが発覚して、あっ4問目と7問目をカンニングしたのでそこだけ0点に。
とはならないでしょう。その教科どころか一連の試験はすべてなし、受験資格を失うのが当然。
性善説に基づいた認証制度ということはお互いの信頼があって成り立っているわけで、
その信頼を蔑ろにした行為が発覚した以上は、すべてにおいて信頼が喪失されたということですから。

そりゃぁ、メーカーの全車が数週間も数ヵ月も販売も製造も出来ないとなれば大問題ですよ。
そのメーカーだけじゃなくて部品メーカーやらなんやらかんやらもう大変、
日本経済への影響も計り知れないでしょう。

でも、だからといって甘い対応でお茶を濁していいというものではないはずです。

たまたまミス(過失)で間違えちゃったのなら事後対応をしっかりして(それがリコール)でもいいけど、
捏造なりすり替えなりなんらかの不正をしておいて、後からヤバそうな案件だけ自己申告で報告して、
これはもう販売終了した車種だし、こちらは後から認証合格を確認済みですから……
でハイ終了なら、こんなに美味しい話はないですよ。

またほとぼりが冷めれば同じことが発生しかねないし、今度は別のメーカー、
別の国(新興国とかも含め)のメーカーだって同じことをやりかねないですよ。

まぁ、立ち入り調査にも入ったので、何か決定的な証拠(会社ぐるみの不正とか)が出てこれば
これまた事態は大きく動くことになるのでしょうが、おそらくその可能性は低いでしょうね。

 

というわけですが、でもまぁ裏金問題と政治資金規正法改正に比べればマシな話なのかもね(汗)

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コメント

そういえば、スバルも幻のAC#の型式指定を取り下げて、AA#でやり直しした事案がありましたね。ジェットさんはもう入社されていたのかな?

投稿: よっさん | 2024-06-10 21:43

>よっさん

あぁ、鉛事件ですね。
ボクはまだ入社前でした。話には聞いてましたけど。
スバルの黒歴史のひとつですね。

投稿: JET | 2024-06-11 05:45

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