BLUE BACKS「宇宙になぜ、生命があるのか」を読了
講談社BLUE BACKSの「宇宙になぜ、生命があるのか 宇宙論で読み解く『生命』の起源と存在」
戸谷(とたに)友則著を読みました。
BLUE BACKS なので基本的には科学読本であるわけですが、
「なぜ、生命があるのか」と問われてもそもそも生命の起源さえ解明されてないわけですし
現時点では知的生命体はさておいても地球外生命すら見つかっていないわけですし、
かといって「神が創造した」とかの非科学的な神話や宗教論になるわけでもないので、
このことについて何らかの科学的な結論が得られているわけではありません。
なので、本書では現時点で科学的に解明されている事実に基づく生命の起源のシナリオ等を説明しつつ
地球外生命の可能性について言及し、最終的な「生命の存在意義」みたいなことについては
科学の枠を飛び越えてやや哲学的な妄想も含めて言及されているような内容になっています。
そのあたりにことについては本書の「序章」でも著者は次のように書いています。
(以下引用)
今、本書の執筆に取りかかろうとして、少々緊張している。というか、正直にいえば怖気づい
ている。 (中略) 今回はとにかくテーマがおそ
れおおい。「生命の起源」である。おそらく、人類が最も答えを知りたい問いであり、最も難解
な謎といってよいであろう。 (中略) 筆者の専門は天文学や宇宙物理学といった分
野である。なかでも、超新星やガンマ線バーストといった星の爆発現象や、銀河形成や宇宙論と
いった分野で飯を食ってきた人間であり、私の研究歴の大部分は生命とはまったく無縁である。
(引用終わり)
まぁ完全に専門分野ではないからこそある程度の妄想みたいなのも交えて読者の興味に沿ったことを
著することが出来るのかもしれませんが、SF小説ではないのでやはり科学者なら緊張するでしょう。
そんな著者がどうしてこのような本を著すことになったのか、それも「序章」に書かれています。
(以下引用)
そこで生命の基礎を一から勉強し始め、あれこれ考えていくうちに、私の専門に近い「インフ
レーション宇宙論」によって予想される「宇宙の広大さ」こそ、生命の起源の謎を解き明かすう
えでのカギなのではないかと思いついた。それを論文として発表したのが2020年であり、国
内外で予想以上の反響を得た。
本書は、そんな筆者がさらに調子に乗って(?)、「宇宙における生命」についての科学的理解
の最前線を一般社会の読者に解説することを目的としている。 (引用終わり)
なるほど、そういう考えというか経緯があるんですね。
ということを踏まえるとなかなか面白そうな内容じゃないかと予感させられます。
分からないことだらけの宇宙と生命についてその両者を橋渡しするような話であるでしょうから。
さてさて、ここまで書いてきたように本書を最後まで読み切っても
本書のタイトルに対する答えは書かれてはいませんし、
例え著者の考えのひとつを紹介しても意味はないでしょうからそこに踏み入ることはしません。
ただ、本書を読む前は、この広大な宇宙にはどこかに地球とは似たような生命体のいる場所があり、
そしてどこかには知的生命体、そこまででなくとも高等生物と言われるような生命がいるはず、
だが、あまりに時空として離れているので彼らに遭遇・接触・確認することは不可能に近い、
そんな風に考えてましたけど、それすらも揺らいでしまうのかもしれないとも思うように。。。
例えば、既に本書の「序章」で次のような記述があります。
(以下引用)
ところが、生命の起源をたどっていくと、この否定されたはずの「生命の自然発生」が、全生
物の共通の祖先である原始生命体についてだけは、なぜか起こったと考えざるを得ない。そし
て、すべての生物種が一つの共通祖先に由来するということは、原子生命体の誕生は地球史のな
かでたった一度しか起きなかったことを示唆している。可能性としては、独立な起源を持つ原始
生命体が何度か生まれたが、我々とは別の起源を持つ生物種はすべて死に絶えてしまったという
ことも考えられる。だが、これだけ科学が発達し、多くの研究者が日夜、さまざまな物理現象・
化学現象を見つめているにもかかわらず、非生物的な物質から生命が誕生しそうな気配すらつか
めない。それを考えると、仮に複数回起こったとしても、基本的には稀な現象であることは間違
いなさそうである。 (引用終わり)
確かにそうなんですよねぇ。
地球上というか今まで見つかったすべての生物はDNAを持ち
それからもただ一つの共通祖先に由来することが確定してしまった以上は
上記のことも言えるんですよねぇ。
つまり、生命誕生はそうそう簡単なことではなく「基本的には稀な現象である」と。
これは生命の起源が地球外にあるとするパンスペルミア説をとったとしても同じことになるでしょうし、
その地球外の生命体はどこでどのように生まれたのかを考えるとまったく同じ議論になるでしょう。
まぁそれでも生命誕生の謎の解明あるいは地球外生命の存在の探究は
ロマンもあるしワクワクすることに異論はありませんし、
いつかその謎も分かるのではないかと、それだけの理由で長生きしてみたい気もありますけどねぇ(笑)
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