新書「『今どきの若者』のリアル」を読了
PHP新書の「『今どきの若者』のリアル」山田昌弘編著を読みました。
ボクは独身無職のオッサンなので「今どきの若者」との接点はほぼありません。
まぁ見かけるくらいはありますけど、何を考えているのかとかはまったく分かりません。
でもまぁ、分からなくて困ることもないわけですが……(笑)
なんですが、興味本位ということで本書を読んでみることにしたわけです。
ちなみに、山田氏は中央大学教授だそうで、ボクより少し上のもう高齢者と呼ばれる年齢の方です。
で、“編著”となってるように、本書は山田氏だけでなく総勢16名の識者(?)の方々が各章を著してます。
山田氏がどれだけ全体の編集に関わっているのか不明ですが、
読んでみた感覚としては各章の内容そのものはそれぞれの著者に任せているように思えました。
そして、本書の「まえがき」では山田氏が次のようなことを書いています。
(以下引用)
若者論は昔から数多い。 (中略) それでも、つい、「今の若者は―」と否定的な
目で見てしまうのが私も含めた中高年世代かもしれない。(中略)
今の若者は、権威に反抗するものは少なく、政治的にも自民党支持が多く、保守的になっ
たと言われている。だからといって、これからも同じ状態が続くとは限らない。それは、五
十年前の革新的な意識をもった若者が結局は戦後体制にのみこまれてしまったのをみればわ
かる。
(中略) 忘れてはならな
いのは、今若者が置かれている状況は、中高年世代が作り出したものである。金間大介氏が
強調するように、若者が消極的になっているのも「今の若者の責任ではない」のである(第
五章)。若者に何か問題があったとしても、反省すべきは、私を含んだ中高年であることを
肝に銘じなければならない。
萱野氏がいう世代間対立にならないためにも、若者の将来にとってどのような社会が望ま
しいのか、考えていく必要がある。本書がそのヒントとなれば幸いである。 (引用終わり)
別段、ボクは「『今の若者は-』と否定的な目で見てしまう」ことはないですし、
一方で「五十年前の革新的な意識をもった若者」でもなかったですが、
今の若者の考えが「これからも同じ状態が続くとは限らない」というのはその通りだと思います。
また、「今若者が置かれている状況は、中高年世代が作り出したものである」というのもその通りです。
まぁ完全に中高年世代だけで作り出したというと少し言い過ぎですが
少なくとも若者だけで勝手に考えて若者文化を作っているわけでもなんでもなく
彼らより先に生まれた人間が作り出した状況の中でそれらの影響を受けて育ったんですから、
言わんとしていることには納得できます。
とは言え、その「萱野氏がいう世代間対立」というのは第二章に出てくるのですが、
その内容自体には少しボクは違和感を抱きましたので、そこだけ紹介しておきましょう。
(以下引用)
とはいえ、ここからが本題なのだが、現代の日本で生じている世代間対立はそうした一般
的な世代間対立とは異なる位相をもっている。
なぜなら、現代の日本で生じている世代間対立とは、構造的な要因にもとづいた世代間の
具体的な利害対立であるからだ。(中略)
例として年金をとりあげよう。
日本の年金は賦課方式で運営されている。(中略)
そのため、高齢者の人口が増えていけば、その高齢者に支給しなくてはならない年金の総
額も増えていくので、現役世代はより多くの年金保険料を負担しなくてはならなくなる。現
役世代の人口が減っていけば、その傾向はなおさら強まるだろう。 (引用終わり)
確かに年金だけでなく社会保障の負担の問題は少子高齢化の進展に伴い
現役世代=若者の負担が重くなっているのは事実なんでしょうけど、
それはぶっちゃけて言えば時代が違っているというだけのことで
じゃぁ今の若者が昔の時代は良かったとかその時代に生まれてきたかったと思うかと言えば、
けっしてそんなことはないでしょうし、
そもそも、今の若者がそのような世代間対立という構図というか考え方を抱いているのかも疑問です。
また、そのような世代間対立=利害対立となるのは次のような理由があるとの意見もよく聞きます。
(以下引用)
しかし、高齢者の社会保障の受益を減らすことは現実的にはきわめて難しい。
なぜなら、そんなことをすれば政権与党は選挙で一気に逆風にさらされることになるから
だ。高齢者は人口も多いし、投票率も高い。 (引用終わり)
これなんかもシルバー民主主義としてよく言われるある意味でステレオタイプの意見なんですが、
本当にそうなのか、そして特に本書で取り上げるなら、若者がそう捉えているのかどうか、
それによって世代間対立があると認識しているのかどうか、そこまできちんと調べてほしいものです。
まぁ、独身・子なし・無職のボクがいう資格はあまりありませんが、
高齢者だってまだまだ大半の人は結婚して子どもや可愛い孫がいるわけですから
それら子どもや孫の世代はどうなってもいいから自分たち高齢者だけの政策を望んでるわけないし。
それよりも既得権益や利権ばかりの政策の方が問題だし、
社会保障を高齢者の既得権益のような言い方はそれは違うだろと言いたくなりますけどね。
もちろん、まったく問題がないわけではないのですが、
世代間よりもっと大きな格差はあって、それこそが大問題じゃないのと言いたいですけど……
ただし、本書は何もこのような世代間格差だけの話をしているわけでもなく、
他の章、つまり他の人が著している章ではなかなか面白いこと・興味深いことも多く書かれていましたが。
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