新書「『人口ゼロ』の資本論」を読了
講談社+α新書の「『人口ゼロ』の資本論 持続不可能になった資本主義」大西広著を読みました。
前回紹介の単行本「科学と資本主義の未来」では資本主義が持続可能かどうか
さらに少子化=人口減少との関係はどうかなどの視点で書かれていたわけですが、
それらとも繋がってるっぽいタイトルですし、興味もあるので読んでみたわけです。
ただし、本書における“持続不可能”とは昨今の地球環境観点からのSDGsという意味ではなく
人口がどんどんと減っていって資本主義が持続不可能になるという意味で使われています。
なので、資本主義は経済成長し続けなければならず、それには人口増が必要との前提ですし、
“人口ゼロ”とは文字通りこのまま人口減少が続けばいずれ人口ゼロになるということを指しています。
まっ、本当に人口ゼロなら資本主義も資本論もなにもかもまったくなくなりますけど……
ですから、本書の主旨としては、人口減少の中で持続可能な資本主義のあり方は何かではなく、
資本主義を持続するにはまずは人口減少を食い止めなければならない、ということになります。
そのための少子化対策の具体策には直接触れられてはいませんけど。
本書には「日本人口は2080年に7400万人に縮む」と書かれています。
もちろん、少子化対策が進まずという前提でしょうし、その前提ではたぶんそうなんでしょうし、
逆にもっと加速度的に少子化が進み人口減少となる可能性もあります。
そして、それによって日本社会、いや少子化は世界的に進んでいるので日本だけでなく世界的に
様々な問題が噴出して、それは資本主義国家でも共産主義国家でも起こりうるのでしょうけど。。。
だから、急激な人口減少は問題だから抜本的な少子化対策をというのは分かりますが、
個人的には緩やかに人口減少していくのはいいんじゃないか、
その中で資本主義はどうなるのか? どう対応できるのか? できないのか?
それを模索していくのがいいんでは、という思考回路なんですけどねぇ。
ある試算によると、100年後の2120年には日本人口は5000万人を割り込み
今の40%くらいになるという話もありますが、
でも考えてみたら明治維新から100年の間に日本人口は3倍にもなってるんですよね。
なので、何がいいたいかというと、日本人口でも世界人口でもいいけど人口ゼロになるまで
いったい何百年かかるのかということと、
その間に世の中も人々の考えも科学・医療なども大変化するから人口増加に転じることもあるでしょう。
まっ、個人的には人口増加に転じずに本当に人類滅亡してもそれはそれで仕方ないと思ってますが。
というわけで、本書はボクの興味の対象とは論点が少し違っていたようです。
それでも、いろいろな考え方とかは興味深いものもあるし、考えさせられることも多々ありましたが。
とはいえ、著者の「人口問題は貧困問題」という主張にも少し疑問を抱いたのは事実です。
つまり、少子化は若い人がお金がなく(給料が安く)て子供を作ろうとしないからだというのです。
もちろん、そういう面もあるでしょうけど、じゃぁ給料あげれば、
あるいは社会保障で子育て支援を増やせば、少子化が解消できるかというと、うーんとなっちゃいます。
もっとも、著者もそれだけが原因ではないとは分かったうえで、先ずは……という考えでしょうけど。
それに、資本主義の思想が相対的貧困という問題を起こしているのは事実でしょうから
そこそこ普通に生活できる日本人でも相対的に貧困になりたくないから
つまりはもっと自由に(子どもではなく)自分たちのために贅沢したいから子どもは作らないという
そんな人が多くなっているのかもしれないというのは否定できないこととも言えるでしょうが……。
そんなことから、著者はマルクス経済学、特に数理マルクス経済学の立場と視点が必要と説いています。
というのも、著者はマルクス経済学を専門とする慶應義塾大学名誉教授とのことだからです。
そこで、本書ではそのマルクス経済学、数理クルマス経済学についても説明がされているのですが
なんとなく総論は分からないでもないけど、各論=具体的な提言はないので、
ぼんやりとしてしまってよー分からんということになっちゃいましたね。
だからといって具体策を書けといいたいわけではないし、
みんなで考えて行かなければならない問題なのはそのとおりなんでしょうが……
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