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新書「分子をはかる」を読了

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文春新書の「分子をはかる がん検診から宇宙探査まで」藤井敏博著を読みました。

分子をはかるってまさか不穏分子を見つけ出すわけじゃないでしょうし(笑)
サブタイトルにあるがん検診とか宇宙探査とか聞くとX線とか放射線とかから
素粒子や量子力学の話かと思ってしまっていたんですが、ちょいと違ってました。

本書の「まえがき」には次のようなことが書かれています。

                                 (以下引用)
 質量分析法(マススペクトロメトリー)は、分子の質量を測定することで、その物が
何であるかを知ることができる技術です。その分子の質量(マス、重さ)を測定する
装置を、質量分析計(マススペクトロメーター)といいます。はかる対象は、惑星・彗
星上の岩石から、ヒト細胞中のタンパク質までをカバーしています。つまり、この質
量分析法により、原理的には「宇宙に存在するすべてのものが何であるか」を知るこ
とができるのです。(中略)
 本書は、まず、この質量分析法が、私たちの生活をどのように変えてきたか、そし
て今後も変えていくかを示します。いわば最前線のルポです。その上で、この先端技
術を支える基本的な物理・化学の原理を簡単に解説します。それによって、理系、文
系にかかわらず、「分子をはかる力で切り拓かれた新世界とは何か」、そして科学が私
たちの社会にどのように生かされているかを考察し、紹介したいと思います。
                                (引用終わり)

要するに質量分析法、もしくは質量分析計についてあれこれと書いてある本であり、
その質量分析計で測るものは分子の質量だというわけですね。

ボクはいちおう元エンジニアではありますが、材料研究とかしていたわけでもないし、
医療や宇宙にも関係してなかったこともあり、恥ずかしながらその質量分析計がなんだか知りません。
質量分析計にも幾つかの原理・仕組みがあるようですが、
本書でもその一例が簡単に次のように解説されています。
                 (以下引用、改行位置変更、図の説明部分省略)
 ここでは、質量分析法が誕生した20世紀初頭から使用され、原理がイメージしやす
い磁場偏向型で説明します。
 イオンは、磁場の中では質量(マス)の違いにより変更軌道が違ってくる性質をも
っています。質量が大きいイオンはあまり曲がらず、質量が小さいイオンは大きく曲
がるのです。この性質を利用して、質量ごとに分離することができます。(中略)そこ
で得られるのが質量スペクトルです。
 この質量スペクトルは、横軸に質量数(20~240)、縦軸に信号強度(%)を示
すグラフです。グラフの縦線をピークと呼びます。         (引用終わり)

あぁ、なんかTV番組の「なんじゃこれミステリー」とかでおなじみの岐阜羽島のパレオラボで
隕石じゃないかと成分を調べてくれるアレですか? と思ってしまいましたが、
アレはどうやら蛍光X線分析装置みたいで原理も測定対象もまったく違うもののようですね。

まぁ、パレオラボも隕石だけを調べているわけではないので質量分析計も幾つも所有してるでしょうが。
それに、驚いたことに本社は埼玉県戸田市にあって、群馬県桐生市黒保根町にも施設があるみたい。
特に黒保根にはAMS(放射性炭素)年代測定装置もあり、これは本書でも登場する質量分析の一つです。

 

それにしても、原子については陽子と中性子の質量がそのまま原子の質量になるので
質量を測れば原子を特定できるのは分かるし、簡単な分子ならそれも分かるけど、
タンパク質など高分子でもそれが可能だとはまったく理解していませんでしたよ(恥)
しかもこの高分子をイオン化して測定するなんて、どうやってイオン化するんだって感じでした。

そういう意味では目から鱗みたいな内容満載の一冊となっていてかなり勉強になりました。
まぁ勉強になったからといって、もうそれを活用・発揮できるわけではないんですけどね(笑)
単なる興味本位として、あるいは雑学として勉強になっただけですね。

 

なお、質量分析とは直接に関係のないことなのですが、
組織と個人の知的財産争いについてちょいと面白いなと思ったことを紹介しましょう。
                                 (以下引用)
 この訴訟を、中村修二博士と日亜化学工業との青色発光ダイオードの特許問題と比
較すると、面白い違いに気が付きます。青色発光ダイオードの場合は、研究者が会社
側を提訴しましたが、アメリカの場合は、大学側が個人の研究者を訴えたのです。私
個人の見解としては、当時の日本企業の特許制度を考えたとき、よく中村博士は訴訟
に勝てたなと不思議に思いました。もっとはっきり言うと、「日本の判決は、理解で
きない不思議な力やムードに影響されるのだ」と思ったものです。  (引用終わり)

青色発光ダイオードの話は詳細は知らないのでそれについて意見するのは憚られますが、
それでも日本でのメディアの論調は個人の発明者は凄い・偉い!で
企業側は儲けを独り占めしてケシカラン!ってな論調だったと思いますし、
ボクはそれについて何か違和感を感じていたのは確かです。

組織の中で研究してたんだから、その成果の大部分は個人でなく組織にあるのは当然だと思います。
もちろん個人の資質によって成功・失敗はあり、一個人がそこに強い影響を持つことはありますが、
それでもその一個人にだけ飛び抜けて多額の報酬や名誉が与えられるのはおかしいかなとね。
組織としてまったく関与せずに一個人だけが成果を上げたのなら別ですが、
その場合はその個人は組織人として失格だと思いますし。

著者も似たような感覚というか、おそらくもっとそれらについて詳しい立場でもそう感じたのでしょう。
その意味では、ボクの直感としての違和感もあながち的外れでもなかったのかなと安心しました(笑)

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