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LMS社への業務委託の顛末

こちらの前回記事からまた1ヶ月以上とずいぶんと間が空いてしまいましたorz
暑い日が続くとか、プロ野球&高校野球のテレビ観戦で忙しいとか、
まぁ言い訳は幾らでも言えるのですが、単にやる気がないだけのことでして……(汗)

で、前回まで2004年ごろにベルギーのLMS社に「ハンドリング評価手法」の先行開発を委託し、
まずは操縦安定性の定量評価とCAEとの相関を取ることから始めることになり、
21Zの量産車を手配して、部下の方に操縦安定性の計測とサス基礎計測をしてもらい、
結果をちょいちょいと英語に翻訳してLMS社に提出してハイ完了! 

となるハズ。というところまで書きました。

 

そう、なるハズだったのですが……結果を提出してしばらくしてLMS社より問い合わせが来ます。
なんかサス基礎特性の値・グラフがおかしいんじゃないかと。
もちろん、英語での問い合わせだし、もっと具体的な問い合わせですが。

確かによーく見るとなんか変。微妙に数%のレベルで整合していないような部分があります。
で、サス基礎特製計測装置を製作している鷺ノ宮(サギノミヤ)製作所に問い合わせるも、
ほとんどまともに取り合ってくれず梨の礫(なしのつぶて)でしばらく放置状態。

埒が明かないので、計算プログラムの開示を求めて、こちらでひとつひとつチェックすると……
案の定、座標軸やプラス/マイナスの間違いがあり、鷺ノ宮を呼び出して修正を依頼。
単に依頼するだけでなく、明らかな製品の不具合=計算プログラムの不手際ですから、
強い口調で大至急での対応を強く依頼します。

 

しかーし、その後もLMS社から数ヶ所の問い合わせが続き、
これらもよーく結果を確認して、計算プログラムも確認すると同レベルの間違えばかり。

結局、鷺ノ宮にやり直し&総点検を依頼するもやる気まったくなしで、
仕方なくボクが全部総点検して、具体的な問題点をすべて挙げて、
鷺ノ宮に全て修正してもらうのにこのLMS委託業務の計画の半分以上を費やしました。

半期=6ヶ月での委託業務でしたから3ヶ月以上も
ただサス基礎特製計測装置を正常にすることに費やしてしまったということです。
当たり前ですが、ボクの工数の大半もこれに費やさざるを得ないことになったわけです。

 

さらに言うと、このサス基礎特性計測装置の導入後にそれまで計測してきたデータは
計測結果が微妙に正しくなかったことになるわけですから、再度解析し直す必要にも迫られ、
それらもボクらの担当で行わざるを得ず、部下の工数もあわせて相当に工数を要しました。

もう、あまりの鷺ノ宮のいい加減さにボクも半分ブチ切れになりそうでしたよ。
まぁ、鷺ノ宮の方はそれはそれで優秀な人材も不足していて対応ができずにフリーズしてたんでしょうが
それを許してしまえば、何も解決しませんからボクもかなり強行にでていましたよ。
ということもあって、この記事に書いたような「あなたは一体何者ですか?」発言をくらうことに(笑)

でも、本をただせば鷺ノ宮のいい加減な仕事から不完全なサス基礎特性計測装置が納められたわけで、
本来ならそれによって被った諸々の損失(ボクらの工数、今まで計測した結果への補償など)の補填を
鷺ノ宮に請求してもよいはずなのですが、さすがにそこまで強行しても前向きではないのでやってません。

なので、いちおうパワハラ(下請けハラスメント)にはならないギリでやってましたね。
というか、こちらも導入責任者のF貫さんが一度は現物確認した上で設備導入をしているので
不具合のある状態を見逃していたという点ではF貫さん、つまり当社にも非がないわけでもないのでねぇ。

結局、F貫さんの尻拭いをやらせられた格好になったわけです。当然、当時のF貫さんは見て見ぬふり。
まぁ、こういう地味な仕事をコツコツと神経尖らせてやるのって向き不向きがありますけど、
F貫さんの性格上向いていなかったということでしょうけどね。
前任のO原さんは十二指腸潰瘍を患いながらもやりぬいたわけですが……
それにもっと悪いのはなんといっても鷺ノ宮製作所ではあるわけですし。

 

というわけで、外部業者に委託して楽しようとしていたのに、
そして本意ではないけど定量評価とCAEの相関を取ることを目的とすることで
実験部門であるボクらはさらに楽できると目論んでいたのに、
結局、F貫さんの尻拭いをさせられることになり無駄に多大な工数を要してしまいました。

その結果得られたことは、サス基礎特性計測装置の不具合の発覚という低レベルのことであり、
逆にそれさえなければ定量評価とCAEの相関は十分に取れるという「なにそれ」な結末だったのです。

そう、定量評価とCAEの相関なんてのは当時はもう別に新技術でもなんでもなくなっていたので、
特にLMSに委託せずともスバル単独でもやれていたことなので、
ただ相関とれるよねというお墨付きを得たというだけのことでしかなかったのです。

ちなみに、スバルの操安性CAE部隊は機構設計課内にあったのですが、
当時はなぜかやたらと車体剛性の影響をCAEにどう織り込むかに熱心になっていて
(NBR最速を狙う某氏が「サスなんてどうでもいい車体剛性が重要」とかのたまっていたからか)
それについての知見をLMSに求めていた節もあったのですが、LMSは端っから
「車体剛性なんて必要十分あればそれで良い、CAEには関係なし」と言い切ってましたね(笑)

と、その車体剛性についてLMSのまともな意見を聞けたのはボクにとっては収穫でしたけど、
なにはともあれLMSへの委託業務の結末は「なにそれ」となってしまったので、
次への展開への予算もつかなくなりそれで途絶えてしまいました。

個人的には最終的にLMS委託で「操縦安定性の総合評点」を算出するというのを目論んでいたので
これで途絶えてしまったのはかなり残念な結末になってしまいました。

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コメント

始めてコメントさせて頂きます。2年前よりオートマックス(株)にてフリーランスさせて頂いております佐藤 博と申します。貴殿のLMS社への委託業務に関してのご経験についてのブログ投稿を拝見し、大変興味深く読ませて頂きました。私は2年前まで、日立Astemoにて電動パワーステアリングの設計業務に携わっておりまして、SUBARU殿のインプレッサ、XV、フォレスター、レボーグ、レガシー、そしてアセントにご採用頂いた経緯が有り、当時はSUBAERU様のシャシー設計部、実験部の方々には大変お世話になりました。現在オートマックス(株)では、重心高:慣性モーメント測定、K&C(車両基礎特性)測定試験の受託業務をしておりますが、貴殿の当時のご苦労話をもう少し詳しくご教授頂けると幸いと思います。よろしくお願い致します。

投稿: 佐藤 博 | 2023-10-25 12:52

>佐藤 博さん

はじめまして。コメントありがとうございます。
オートマックス、日立電動パワステ、うーん懐かしいです。
スバルの慣性モーメント測定装置はオートマックス製でしたかね。
いちおうボクも承認する立場として関わったハズですけど、
優秀な部下に完全にまかせっきりでしたのであまり記憶はないんですよね。

その設備が導入される前の日本吊り法での慣性モーメント計測とか
傾斜計での重心高測定などなどの方が泥臭い想い出がありますけど(笑)

またよろしくお願いいたします。

投稿: JET | 2023-10-25 16:20

JETさん

コメント回答頂き有難うございます。私自身は2021年以前の事はあまり知らないのですが、当社の重心高・慣性モーメント測定装置やサスペンション基礎特性試験機もSUBARU様にご愛顧いただいていると聞いております。

投稿: 佐藤 博 | 2023-10-26 13:38

>佐藤 博さん

慣性モーメント&重心高計測装置は確か米国NHTSAが重心高の情報公開をやり出すということで、
その米国NHTSAの同等の計測方法の装置ということでオートマックスさんに決めたと記憶しています。

それで、サス基礎特性試験機の2010年ごろまではこの記事のようにサギノミヤ製でしたけど、
ろくなもんじゃないというのがやっとはっきりしたこともあって、
その後にはオートマックスさんのを導入したのだと思います。

ただ、その頃はもうボクは操安乗り心地の実験・開発部署から異動しちゃったので、
それ以降の話はあまり詳しくはないんですよね。あしからず。

投稿: JET | 2023-10-26 16:13

JETさん

当社のサスペンション特性測定関係試験機のSUBARU様内での評判は悪く無さそうに感じ、安堵しました。有難うございます。今後もよろしくお願いいたします。

投稿: 佐藤 博 | 2023-10-26 16:27

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