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LMS社に「ハンドリング評価手法」を委託

ここのところこのスバル・カテゴリーでは2000年初頭にボクがSKCにて
あれやこれやと雑多な業務をしていたことを紹介しているのですが、
(といいつつ、前回記事からかなり間が空いてしまいましたけど)
今回もAWD関連やNR1,NPFなどとほぼ同時期に併行してやっていた
LMS社との共同業務というか形式上はLMS社への委託業務という形での
「ハンドリング評価手法(Vehicle Handling Analysis)」について紹介しておきましょう。

たしか、2004年の活動だったと思いますが、
その前の折衝・準備などは2003年ごろからはじまっていたのだと思います。

この頃のスバルは業績は大してよくなかったけど何故か社内的にはバブリーで、
よく知らないけどGMからお金をかすめ取っていたんでしょうけど(笑)、
それとともに先行開発などもちゃんとやらないといけないという認識も少しづつ出てきて、
だから自社内だけでやりきれないものは社外のコンサルティング会社なども利用して
多少お金を払ってでも積極的に研究や先行開発をしようという気運も出てきた頃です。

その一環という感じで、LMS社に「ハンドリング評価手法」を提示してもらうことになりました。
LMS社=LMS International はベルギーに本社があった主に自動車に関する解析ソフトウエア等を
開発・販売している会社なんですが……今、どうなっているのかと思い調べてみると、
あぁ2012年にはシーメンスに買収されているんですね。

で、確かLMS社は元々振動騒音などの解析が得意だったと記憶してますが、
そこから発展してハンドリングというか操縦安定性についても解析というか開発支援をしだして
当時でも欧米の自動車メーカーなどでも導入され実績を積んでいるということでした。
まぁ実績があるといってもどの程度の効力というか影響力を持っていたかは不明ですけどね。

 

そして、「ハンドリング評価手法」といってもかなり幅広いテーマになるんですけど、
ポイントは大きく2つあって、
一つはいろいろな操縦安定性に関する実車定量評価をもとに総合的な評点を算出する方法、
もう一つは実車定量評価とCAE(シミュレーション数値解析)との相関を取る方法であり、
それによって最終的にはCAE段階で操縦安定性の総合的な判断を可能としようということです。

また、逆に操縦安定性の総合的な目標性能を設定し、その達成手段をCAEで検討することもでき、
それによって開発の効率化を図ろうというものです。
あくまでも開発支援という意味合いなので全てをCAEだけで済まそうという考えではないですが。

個人的には特に操縦安定性の総合評点の算出というところに非常に意義を感じていて、
それはもちろん当時のスバルにはそういう手法、操安性総合評点というものが存在してなくて、
それ故に何をもって操縦安定性(走り)の良い車なのかがかなり曖昧で、人それぞれバラバラで、
特に担当者よりも上の人が好き勝手に言い出して空中分解しそうな感じになっていたから
ある程度形式的になったとしても、そのような総合評点の算出が必要だと考えていたからです。

21Zの開発などを傍から見ていると、担当者が良かれと考えて開発している途中に
課長がやってきてちょっと試乗してあーじゃないこーじゃない、あーしろこーしろと指示する、
で担当者がそのようにすると、今度は部長がきて試乗してまたあーしろこーしろと、
次に車両全体のまとめをしている人(PGM)が試乗してまたあーしろこーしろと、
また役員がやってきてちょっと試乗してはこーじゃないだろうとちゃぶ台ひっくり返して……

本当は、その前に担当者もその上の人も一緒になって同じ場で喧々諤々と議論をして方向性を統一し、
開発を進めて行くのが近道で効率的なはずなんですが、
それぞれが社内的にいがみあったり自分の立場を主張したりしして議論の場につかないから
こういうことになるんですけどね。
後年、ちょいと別の公の場でそのことをボクは「船頭多くして舟山に登る」だといい放ったのですが……

なんにせよ、操縦安定性の総合評点という計算式が確立されれば、こんな不毛なやり方はなくなるし、
その総合評点の計算式を確立していく過程でも議論は深まるはずですから、
LMSへはそこに外圧的立場での介入をを期待したんですよね。

 

なお、操縦安定性の総合評点というのは当時の(今も?)スバルにはまったくなかったんですが、
乗り心地については昔から実車計測を元に乗り心地総合評点を算出する方法が確立されてました。
乗り心地には総合評点があるのに操縦安定性にはないというのが逆に不思議でもあるんですけどね。

しかも、官能評価、フィーリング評価として評価シートに記入していく時には
乗り心地総合評点とともに操縦安定性総合評点も記入することになっていたのに
実車計測になると総合評点という概念がまったくなくなってしまうのはやはり不思議ですよね。

 

ところが、この先行開発としてのLMS業務委託には設計部門(機構設計のCAE担当グループ)も
相乗りするような形となっていたため、彼らは先ずは実車定量評価とCAEの相関取りをしたいとなり、
結局は先行開発を取りまとめしている技術開発部の考えも含めて
とりあえずやりやすいところから、つまりその定量⇔CAE相関からやりましょうとなりました。

そう、当時でもいちおう社内で操縦安定性のCAEはやっていたので
わざわざLMSに委託せずともそれなりに出来ていたはずなのですが、
まぁ何かLMSなりの知見があるかもしれないし、
そんな難しそうな話でもないのでLMSの実力というか手腕の見極めにはいいだろうという判断です。

それに、当時は他の業務も含めて多忙だったらボクらにとっても
操縦安定性の定量評価結果とサス基礎特性と呼ばれる台上試験結果を提出さえすれば
あとはLMSに丸投げできるだろうから、まぁ楽できるしいいかなと安易に流れたんですよね(汗)

 

ところがどっこい、全然楽なんかできないばかりか大変な思いをすることなったんですが……
そのあたりのことは、また次回の記事に書くことにしますかね。
いつになるか分かりませんが、乞うご期待。

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