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新書「なぜ私たちは存在するのか」を読了

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PHP新書「なぜ私たちは存在するのか ウイルスがつなぐ生物の世界」宮沢孝幸著を読みました。

メインタイトルだけを見ると何やら哲学的というか下手すりゃヤバイ宗教的な話かと思っちゃいますが、
サブタイトルにウイルスとか帯に遺伝子とか出てくるので、生物学などの科学的な内容だと分かります。

実際に著者は京大教授のウイルス学者とのことです。
ボクはこれまで著者が著した本は読んでいませんでしたが、「京大 おどろきのウイルス学講義」、
「ウイルス学者の責任」、「ウイルス学者の絶望」などの本を著しているとのことで、
それらを買おうかどうか迷ったことがあったので、あぁそれらの本も著していたのね。って感じです。

まぁ、でもコロナウイルスとは関係なくこの本に興味を持ったわけですけどね。

本書の「まえがき」には次のように書いてあります。
                                    (以下引用)
 私たちは地球以外で生命体が存在する天体を知りません。地球以外に生命体が存在すると
いう確証もまだありません。しかし、 (中略)                 ですか
ら、この宇宙には生命が存在する可能性は高いと思います。(中略)
 しかしながら、改めて考えてみると不思議なのです。なぜ宇宙に生命が存在しているので
しょうか? 宇宙には生命体がいなくてもよいはずです。生命が存在する必然性はあったの
でしょうか。それとも、生命は偶発的に発生してしまったので、存在しているだけなので
しょうか。
 私は偶然だとは思いません。宇宙の摂理として生物は必然的に生まれたのではないでしょ
うか。 (中略)
 宇宙は乱雑さが増大する方向で動いています。その一方で、生物はエントロピー増大の法
則とは逆に、秩序だった方向に動いています。
(中略)     一時的にせよ、なぜ宇宙の法則に逆らう生物が存在するのでしょうか?
その存在意義とはどのようなものなのでしょうか。(中略)
 本書では、ミクロのウイルス研究を通して育んできた私の「生命観」について、お話しし
たいと思います。                           (引用終わり)

途切れ途切れの引用で申しわけありませんが、これを読むとやはりウイルスや生命科学の話より
具体的で科学的な話ではなく抽象的で哲学的・思想的な話ではないのかと思えますかね。

地球外生命の存在も生命の誕生も未だに科学的に結論はでていないものですから、
あくまでも著者の「生命観」という妄想的な話ではないのかと言えばその通りでしょう。

 

けれども、本書の中身のほとんどはウイルスについての科学的で具体的な話です。
そして、ウイルスと生物の遺伝子との関係の話で、これも科学的で具体的な話です。
もちろん、そこにはまだ仮説のことも書かれてますが、最新研究の情報も入っています。

そのようなウイルスと遺伝子の関係から最後の最後に著者の生命観が語られるという構成です。
個人的にはその最後の「生命観」もいろいろと考えさせられるものがありましたが、
やはり本書の面白さはそこよりもウイルスと遺伝子の関係にあるのかなと思えました。

そのウイルスと遺伝子の関係については例えば次のような記述があります。
                                    (以下引用)
 遺伝子が種の壁を越えて移動することを、生物学では「ラテラル・ジーン・トランス
ファー」と呼びます。私たち研究者はその一端をすでに知っていますが、遺伝子は私たち研
究者が想像する以上に縦横無尽に動いているのかもしれません。
 ウイルスがその移動の役割を部分的に担っているのであれば、環境が大きく変わったとき
に、生物はウイルスに感染することで新たな遺伝子を得て、進化し続けているのではない
か。                                 (引用終わり)

ウイルスのRNAなどが生物のDNAに入り込んでいる痕跡はすでに明らかになっていて、
さらにはウイルスが種を越えて移動することによりDNAの一部が種を越えて移動する可能性が
示唆されているということで、それらが進化に影響しているのではないかということです。

なかなか興味深いことですし、むしろ単なる突然変異だけでDNAが改変されて進化するという説より
説得力が高いような気がしますね。

 

それと、恐竜絶滅についても次のような考え方が示されていて、これも興味深いです。
                                    (以下引用)
 では、小さい恐竜はどうだったのか。単なるサイズの問題であれば、生き残ってもよさそ
うなものです。どうして、恐竜と一緒に長く同じ環境で生きてきたほ乳類は生き残って(ほ
乳類も中生代には恐竜と一緒に生きていました)、小さい恐竜は生き残れなかったのか。また、
鳥に進化していく恐竜は生き残ったけれど、他の恐竜が消えてしまったのはなぜか。
 私は、巨大隕石の衝突は恐竜絶滅の第一の原因ではないと思っています。恐竜はゲノムレ
ベルで進化のスイッチを入れて失敗したという「ゲノム崩壊説」を私は唱えたいと思いま
す。                                 (引用終わり)

へぇーですね。巨大隕石が恐竜絶滅の発端となったと言われていますし、
巨大隕石衝突の痕跡も特定されていますけど、
確かにそれだけでは何故小型の恐竜までも絶滅しほ乳類が生き残ったのかの説明としては不足でしょう。

環境変化に適応できなかった生物は絶滅してしまうわけですが、
適応するには進化しなければならず、その進化に失敗すれば絶滅してしまうのですからね。

 

さて、本書のタイトルに対する答え、つまり著者の生命観はどんなものでしょうか。
それについてはここでは紹介しませんよ。
ネタバレになるからというより、それはやはり本書を読んで各自で考えるべきものでしょうから。

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