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新書「元素で読み解く生命史」を読了

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インターナショナル新書の「元素で読み解く生命史」山岸明彦著を読みました。

前回紹介の本「人類の起源」はDNA解析がその解明のキーとなっていたわけですが、
今回のはさらに小さな元素をキーとして、人類だけでなく生命誕生と進化を解明しようということです。
本書は「はじめに」では次のように紹介されています。
                                     (以下引用)
 本書は元素に着目し、地球の生命を論じている。(中略)
 生命はどのように誕生したか、そのとき生命はどのように元素を使ってきたのか。生命と人
類はどのように進化したか。そのとき、どのように元素を使ってきたのか。生命と人類の元素
利用の歴史を読み解いていく。
 宇宙の誕生から人類の未来まで、生命と人類進化のカギは元素が握っている。そのとき生命
は考えない。                              (引用終わり)

なんだか最後の方は宇宙誕生など壮大な話にまで発展していってしまいますし、
そのとき生命は考えない。」ってどういう意味?と少し観念論的な様相も呈してきていますが、
そこも含めて本書の醍醐味と言えるでしょうか。

つまり、ただ一般論的な定説の説明というだけでなく、
分子生物学者である著者自身の学説や主張、そして思想までも書かれているのが本書です。

そして、「おわりに」でも次のように書かれています。
                                     (以下引用)
 本書は宇宙のはじまり、星のはじまり、元素のはじまり、地球のはじまり、生命のはじまり
から、生命の進化と人類の文明史までを短くまとめたものである。(中略)
 本書の試みの一つは、人類文明史もダーウィンが発見した進化の仕組みで理解できるかもし
れないという検討である。石器から人工知能にいたる技術の進歩は、結局は試行錯誤の結果な
のではないかという作業仮説である。まだきちんと検討されているわけではないので、現在の
ところは作業仮説と思っておいたほうがよいだろう。
 試行錯誤という点で見ると、生物の身体がどのような元素でできているかということも試行
錯誤の結果と言えそうである。さらに人類がどのような元素を使って道具をつくったかという
ことも試行錯誤の結果と言えそうである。                 (引用終わり)

つまり、「そのとき生命は考えない。」とは試行錯誤の結果であって考えて進化してきたわけではなく、
人類の文明の歴史だってそれと同じく(その時々では人類は考えたとしても)試行錯誤の結果であり、
人類史の将来を見通して考えてやってきたわけではないという意味なのですかね。

まぁ、本書の最終章「元素が人類を進化させる」では、その人類の文明的な進化の話ですし、
特に最後の「人類に未来はあるか」と題された段落では、かなり観念的・思想的な内容であり、
分子生物学者としての著者の専門分野からは少しはずれるな内容なので、
それに賛同できるかどうかは人それぞれ意見が分かれるとは思います。

 

しかし、一方で、本書はそれほどぶ厚い本ではなくむしろ総ページ200にも満たないほどですが、
難しい話がかなり簡潔に、でも端折らずに説明してくれていて、
今までの定説がなぜそう言われているのか、あるいは定説が覆った理由は何なのかなど、
なんとなく偉い人がそう言っているからそうなんだろうなと分かったような気になってたものにも
ちゃんと説明がされていて、一歩深く理解できたような部分が多々あり面白かったです。

例えば、恐竜絶命は隕石衝突が原因だ、なんてのも次のように解説されています。
                             (以下引用、注釈部分は省略)
 今から約6600万年前、中生代末の地層は黒色をしている。この地層は世界全域で見つか
っており、場所による違いはあるが、厚さは数センチから数メートルで黒色の煤を含んでいる。
 この地質年代よりも前の時代の地層からは、多くの恐竜の化石が発見されている。一方、こ
の地質年代よりもあとの時代の地層からは、恐竜の化石が見つかっていない。また、この地層
から発見されている植物の花粉は、その前後の地層と比べて非常に少ない。
 さらに、この地層は前後の地層と比べてイリジウムが高濃度で含まれており、「衝突石英」
と呼ばれる石英の粒も見つかっている。(中略)
 微惑星が地表に衝突した衝撃波により、衝突石英ができた。衝突した隕石の破片と地殻表面
の破片は、大気圏の外にまではじき出されたのちに大気圏へ再突入する。その際、加熱された
破片が、地球各地で森林火災を起こした。                 (引用終わり)

高濃度イリジウムとか衝突石英とか初耳でしたし、
隕石と地殻表面が大気圏外まで撒き散らされ火球となって全世界を焼き払ったなんてのも初耳でしたし、
あぁそういうことが起こったのね、となんだか腑に落ちたような感じになりましたね。

 

こんな調子で地球の全球凍結が少なくとも三度はあったとか、
それがどういうメカニズムでそうなったのか、それがどんな研究結果から分かっているのか、
あるいは地球の酸素濃度、二酸化炭素濃度などがどう変化していったのか、
それがどういうメカニズムだったのか、あるいは生物進化とどう相互影響があったのか、
そしてそれもどんな研究結果からそう言えるのかなど簡潔だけど丁寧に説明されています。

もちろん、まだ分かっていないこと、諸説があることなどもきちんと分けて書かれています。

元素の話がカギになっているので、元素記号なども頻繁にでてきますけど、
化学はあまり得意ではなかったボクでもなんとか苦にせず読むことができましたので
分かりやすく、楽しめて、ためになった(と思わせてくれた)一冊でした。

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