単行本「キーエンス解剖」を読了
なので、一般の人にはあまりなじみのない企業かもしれませんし、
ボクも現役エンジニアの時代でも工場の生産技術とかとはほぼ無縁でしたけど、
キーエンスについては少しだけ接点がありました。
ひとつは電動ラジコンをやっていた当時に、一時期だけ
キーエンスがアンプ(受信機信号をモーター出力に増幅する装置)を作っていて、
それを使っていたこととがあるのと、
さらに、室内でも遊べる小型ラジコン・ヘリコプターの完成品も販売していて、
それも購入して遊んでいた時期があるので、独自の技術力のあるメーカーと認識していました。
それともうひとつは、2000年初頭、勤めていたスバルで車両開発用実験に使う計測器として
キーエンスの非接触距離計を使おうとして、実際に試験導入していたことがありました。
少し補足説明すると、当時のスバルでは車両のロール角などの計測には機械式ジャイロを使ってました。
ボクが入社する前くらいまでは機械式ジャイロではなくて、
外から写真撮影してその写真から分度器でロール角を測っていたらしいですけどね。
ただ、ジャイロだとロール角は分かってもロール軸がどうなっているかまでは計測できません。
外輪の沈み込みと内輪の浮き上がり具合、フロントサスとリアサスとのバランスなどは測れません。
なので、車体4隅に非接触距離計を設置して地面までの距離をリアルタイムに計測して
それらを分析してロール角、ピッチ角、4輪の沈み込み/浮き上がりを測ろうとしたわけです。
ただ、これはボクのオリジナルのアイデアではなくてGMの真似をやってみただけですけどね(汗)
それに、ボクはある程度概要を示しただけで、あとはほとんど部下に任せていたんですが、
それでもキーエンスの営業(技術営業)の方とは何度か顔を合わせてやりとりし、
何故だかスバル車の紹介販売もしてしまったという過去があります。
その時も、正直なところ、工場センサとして使うわけではないので幾つも大量に購入しないのに、
わざわざ来てくれて、実機デモなどもしてくれて、なんだか申しわけないなぁと思っていました。
そんなキーエンスですが、
ボクが抱いていた印象はやはり製品開発力・技術力が凄いと思ってたのですが、
意外にもまずは営業力に特徴があるというのが本書の骨格になっています。
(以下引用)
そんな商品を顧客の手元に届け、価値を感じてもらう原動力になっているのが、キーエ
ンスの代名詞ともいえる「直接営業」だ。三菱電機やオムロンといったFA機器の強豪メ
ーカーが代理店を使った間接営業を主軸にするのとは対照的に、キーエンスは社員が営業
担当として顧客企業を直接訪ね歩く。 (引用終わり)
また、その営業の割合もかなり高いようです。
(以下引用)
キーエンスの2022年3月時点の従業員数はグループ全体で8961人(単体は
2599人)。キーエンスは営業職の数を公表していないが、「全社員の半数近い」(同社
OB)との声もある。 (引用終わり)
そうした直接営業の強みを生かすための組織づくり、制度づくり、なんといっても人材育成など
そこかしこにキーエンスならではの取り組みと特徴があることが本書を読むとよくわかります。
そして、そういう営業力が企画・開発にまで好影響を及ぼしているようです。
(以下引用)
ここにもキーエンスは仕組みを用意している。通称「ID制度」だ。ある事業部の営業担
当者が別の事業部の担当者に「この顧客にこの商品の需要がありますよ」と紹介すると、
成約したときに「金一封」がもらえ、自分の評価にもつながる制度だ。 (引用終わり)
あぁ、なんとなくあの時に数量的・金額的にはまったく大したことないスバルの実験部相手に
あんなにも真剣に向き合ってくれたのはこんな背景があったのね、と今さらながら合点がいきました。
一般顧客を相手にし、しかも高額商品となる自動車メーカーとは同じ製造業とはいえ
対極にあるとも言える業態のキーエンスですけど、それでもかなり驚愕の企業体質を持っていて、
あっそれは凄い考え方だなと感服することしきりな内容となっていました。
ボクはもう働いていないのでそれらをどうこう活かすこともないのですが(汗)
もし企業経営やそれに近い管理職で働いている方には大いに参考になるのではないでしょうかね。
と興味が湧いてきた人は一度この本を読んでみるとよいのではないでしょうか。
まっ、この記事に触発されてこの本を買ってもボクには一銭も入ってきませんが(笑)
さて、最後にあまりに意外でビックリしたことを紹介しておきましょう。
(以下引用)
ワープロソフト「一太郎」や日本語入力システム「ATOK」で一世を風靡した国内ソ
フトウエア企業の老舗、ジャストシステムが急成長を遂げている。2022年3月期まで
の5年間で売上高は2倍超、営業利益は3倍超になった。
そのジャストシステムがキーエンスの関連会社であると聞いて驚く人もいるかもしれな
い。(中略)
「『一太郎』のジャストシステム キーエンスが出資 株44%取得」(日本経済新聞)
2009年4月4日、新聞各社はこんな見出しで総額45億円に上る出資の決定を伝えた。
(引用終わり)
恥ずかしながらボクもまったく知りませんでした。
一太郎とか懐かしいなぁと既に過去のものとしか思ってなかったし、
ATOKだってMSオフィスIMEのキー設定でATOK(ライク)にするのが残ってるだけで、
ジャストシステムももうなくなってしまってるのかとも思ってましたよ。
このジャストシステムへの出資もキーエンス自身も進化していこうということなのでしょうね。
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