単行本「限りある時間の使い方」を読了
かんき出版の「限りある時間の使い方 FOUR THOUSAND WEEKS Time Management for Mortals」
オリバー・バークマン(Oliver Burkeman)著、高橋璃子訳を読みました。
原題の「FOUR THOUSAND WEEKS」とは帯にも書いてあるように
人間はおよそ4000週間しか生きられないということから来ているようで、
「Mortal」は死ぬ運命にあるというような意味なので、邦題の「限りある……」なのでしょう。
帯には「タイムパフォーマンスを優先する人だけでなく……」なんて書かれていますけど、
本書はいわゆる時短とかタイパとかに関するライフハック本ではありません。
なので、前回紹介の「映画を早送りで……」なんてことも書かれていません。
むしろ、タイパを優先する人の考え方とは真逆のことが書かれてますから
ほとんどのタイパ指向の人はこの本を読んでもハッと気づくことはできないでしょうね。
そのへんのところは本書冒頭の「イントロダクション」でも次のように書かれています。
(以下引用)
そうだとすると、時間をうまく使うことが人の最重要課題になるはずだ。人生とは時間
の使い方そのものだといってもいい。
ところが現代の、いわゆるタイムマネジメントというやつは、あまりにも偏狭すぎて役
に立たない。タイムマネジメントの指南書が教えることといえば、いかに少ない時間で大
量のタスクをこなすかだったり、いかに毎朝早起きして規則正しく過ごすかだったり、あ
るいは日曜日に1週間分の食事をまとめてつくりましょうということだったりする。
(中略)
生産性とは、罠なのだ。
効率を上げれば上げるほど、ますます忙しくなる。タスクをすばやく片づければ片づけ
るほど、ますます多くのタスクが積み上がる。
人類の歴史上、いわゆる「ワークライフバランス」を実現した人なんか誰もいない。
「うまくいく人が朝7時までにやっている6つのこと」を真似したって無駄だ。
メールの洪水が収まり、やることリストの増殖が止まり、仕事でも家庭でもみんなの期
待に応え、締め切りに追われたり怒られたりせず、完璧に効率化された自分が、ついに人
生で本当にやるべきことをやりはじめる――。
そろそろ認めよう。そんな日は、いつまで待っても、やってこない。
でも悲しまないでほしい。それは実際、とてもいい知らせなのだから。 (引用終わり)
まぁボクはもうリタイアしてからは、仕事のメールは来ないし、やることリストはないし、
誰にも期待もされないし(笑)、締め切りも怒られることもないんですけどね。
それに効率化なんてのもほとんど考えなくなったし、
それでも人生で本当にやるべきことなんかあるわけないと思っていますけどね。
そうです。人が本当にやるべきことなんてあるわけないんです。
ということが本書でも最終章で次のように締めくくられています。
(以下引用)
どれだけ多くの人を助けたか、どれだけの偉業を成しとげたか、そんなことは問題では
ない。時間をうまく使ったというる唯一の基準は、自分に与えられた時間をしっかりと生
き、限られた時間と能力のなかで、やれることをやったかどうかだ。
どんな壮大なプロジェクトだろうと、ちっぽけな趣味だろうと、関係ない。
大事なのは、あなただけの次の一歩を踏みだすことだ。 (引用終わり)
はい、ボクもそう思ってます。
特にリタイア後は100%が自分の時間となったわけですが、
だからといって何かを成しとげようとかなんてこれっぽっちも考えてなく
ちっぽけな趣味や楽しみで生きているし、このブログもそれをテーマにしているようなものですしね。
なお、本書はタイムマネジメントの本ではないし、ライフハックのような本でもないですが、
最後に「付録 有限性を受け入れるための10のツール」と書かれたものが付いています。
そのどれもがなかなか示唆に富んでいて素晴らしいなと思えるのですが、
最後の10番目のツールだけ紹介をしておきましょう。
(以下引用)
10 何もしない練習をする
「人間の不幸はすべて、一人で部屋でしっとしていられないことに由来する」と、哲学者
ブレーズ・パスカルは言った。
自分の4000週間を有意義に過ごすためには、「何もしない」能力が欠かせない。何
もしないことに耐えられない場合、単に「何かしないと気がすまない」という理由で、ま
ちがった時間の使い方を選んでしまいがちだ。(中略)
何もしないことができる人は、自分の時間を自分のために使える人だ。
現実逃避のために何かをするのは、もうやめよう。
心を落ち着かせ、自分だけの限られた時間を、じっくりと味わおう。 (引用終わり)
さすがにボクも本当に何もしないで1日を過ごすどころか、そんなの1時間も耐えられませんが、
でもたまにボーとすることはむしろ積極的に(というと変ですが)やってますし、
散歩なんてのも歩いていても、あるいは頭の中であれこれ思考していても何もしないに近いし、
そういう意味では、ある程度は何もしないことができる人に属するのかもしれないです。
おそらくリタイア生活ができる人というか早期リタイアして失敗しない人っていうのは
この「何もしない能力」がある程度備わっている人じゃないかなと思いますね。
まぁ、超富豪で豪遊しまくり、パーティしまくりのようなリタイア生活であれば
「何もしない能力」はまったく必要ないのかもしれませんけど。
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