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単行本「北関東『移民』アンダーグラウンド」を読了

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文藝春秋の「北関東『移民』アンダーグラウンド UNDERGROUND Bộ  Đội
             ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪」安田峰俊著を読みました。

北関東に住んでいるボクですからこのタイトルには興味を持ちますし、
でも移民とはあまり接点はないのですが、
接点がないからこそ知っておいた方が良いかもと思って読んでみたわけです。

でも、サブタイトル(?)の「Bộ  Đội」ってのは何ぞや、そもそも何語? というところですが、
ベトナム語で「ボドイ」=兵士という意味なのだそうです。
ただ、兵士と言ってもここでは軍隊の兵士という意味ではなく(元軍人もいますが)、
ベトナム人技能実習生として来日したが逃亡し不法滞在(に近い状態)の人を指す言葉だそうです。

そして、ベトナム人技能実習生は全国に居ますが、逃亡してからは何故か北関東に集まるようで、
その辺の裏事情やそこで起きている様々な問題・事件を本書では取り上げています。

また、北関東とひとくちに言ってもかなり広いのですが、
伊勢崎市や隣の太田市などが舞台となっているものも多く、それも具体的な記述も多く、
読んでいるとあっあそこじゃんとか分かっちゃうのは地元民ならではのことですし、
そんな身近なところが問題・事件の舞台になっていたとは知らなかったので驚きでした。

そんな問題・事件とは、無免許運転での交通事故、そこには車両盗難やナンバープレート盗難もあり、
また薬物や風俗、豚鶏などの家畜窃盗、桃などの果実・野菜の大規模窃盗、ボドイ同士の抗争など
かなり具体的に取り上げられて事件の顛末を追っているものとなっています。
ただし、最終的にはボドイが関与したかどうか不明なものも含まれてますけどね。

そして、外国人労働者ということでは、
最初は太田市の隣のボクも住んでいた大泉町でのブラジル人が非常に多い時代があり、
その後、中国人技能実習生などに移っていって、いまやベトナム人技能実習生が最多だそうです。

もちろん、それだけで問題となっているわけではなく、彼らが逃亡し、
その逃亡を生んでしまうような技能実習生システムそのものにも問題があるのですが、
それによってボドイとなった彼らが北関東に集まってきて集団居住して問題を起こしていることです。

 

                                        (以下引用)
 事実、私がこれまでにおこなった在日ベトナム人や警察関係者への聞き取り、現地取材を通じた感
覚などを総合して述べるなら、北関東エリアだけで万単位のボドイが暮らしていてもまったく驚かな
い。なかでも住民の外国人比率それ自体が高い群馬県の太田市や伊勢崎市の付近は、日常生活のほと
んどの行動がほぼベトナム語のみで可能なエリアであり、ボドイの大集住地になっている。
 日本の警察や行政・メディアがほとんど実態を把握できていない巨大な移民コミュニティが、広大
な関東平野の北部一帯に、地下茎のように張り巡らされているのだ。        (引用終わり)

いやー、普段ここで暮らしていてもそれらを意識させられるようなことはないだけに
余計にそら怖ろしさも感じさせられるような話ではありますね。

まぁ、その具体的な問題や事件についてはここで紹介することはしませんが、
なんだか興味深いのはボドイが集団生活してる可能性が高いアパートの特徴が書かれています。

(以下引用)                 大量の「金麦」やエナジードリンクの缶が見つかる
  (なぜかベトナム人労働者は「金麦」を好みがちである)。(中略)
  アパートの駐車場に「つくば」「とちぎ」あたりの不自然な県外ナンバーが貼られた一〇年落ち
  のアルファードが停まっていたりすれば、かなり気合いの入ったボドイが出入りしている可能性
  が高い。                                 (引用終わり)

アルファードはなんとなく分からないではないですけど、金麦ってのは謎ですね。
ベトナムのソウルビールの何かと似たような味わいなんですかねぇ。

 

そんなボドイが集まる北関東なんですが、本書の終盤では興味深い指摘もされています。
                                        (以下引用)
 ボドイたちは日本全国の技能実習先を逃亡してから、とりあえず同胞が多い群馬県の太田市・伊勢
崎市や茨城県の鉾田市、もしくは名古屋市の郊外あたりに向かう。フェイスブック上の逃亡ブローカ
ーを介することが多いので、ブローカーたちの息のかかった場所に行くのである。
 だが、刺激のすくなさに辟易してか、やがて大阪にやってくる人がすくなくない。(中略)
 ゆえに、日本の暮らしになれたボドイは北関東から大阪を目指す。        (引用終わり)

確かに、太田市や伊勢崎市の郊外は大都市部に比べればそんなに刺激溢れる場所ではないですが、
ボクにはそこそこ利便性がありながらまぁまぁ薄い地縁でのほほんと暮らしやすく感じるわけです。
でも、ボドイにとっては決して暮らしやすい、というより不法滞在で金儲けしやすいわけではなく、
むしろ大阪などの混沌とした雑踏の土地の方が地下で金儲けがしやすいんじゃないですかねぇ。

本書ではそこまで深く取材するまでにはいたってないようですが、
なにはともあれ、北関東のボドイが大阪を目指してもらえればここはひと安心でかね(違)

そして、さらに「おわりに」には次のように綴られています。
                                        (以下引用)
 ゆえに、実はボドイ問題は非常に簡単な解決方法が存在している。
 これから長くても一五年ほど、何もしないで待っているだけでいいのだ。それすればベトナムと日
本の経済格差が縮小し、ボドイは日本社会から消える。往年の在日中国人の不法滞在者やマフィアが、
いつの間にかほとんどいなくなったのと同じ現象が起きるのだ。
 もっとも、仮にボドイが姿を消したところで、かわりにOSやルオッ・ケェッ・クルオンが増え、
同じような問題を起こしていく。                        (引用終わり)

ここで、OSとはオーバーステイしている在日インドネシア人のことであり、
ルオッ・ケェッ・クルオンは在日カンボジア人の半グレのような人たちのことだそうです。

つまり、解決方法と書いても実際に外国人不法滞在者の問題は時が解決するわけではないということで、
しかもそれは何もただ北関東だけの問題ではなく、日本全体の問題であるということです。
だからといって、外国人労働者を拒絶できないし、それも日本全体の問題ですしねぇ。

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