リニアモーションマウントとNPFについて
スバル・カテゴリーとして前回まで道草を食いながらですが2000年初頭のNR1の先行開発である
NPF(ニュープラットフォーム)についてリアサスとフロントサスについて書いてきました。
このNPFではエンジンマウントというかパワーユニットマウント方法についても先行開発してたので、
今回はそれについて少しだけ書いてみたいと思います。
といっても、ほんのちょっとしか携わらなかったので大した深い内容のものではありませんから
さらっとあっさり薄味の記事としましょうかね。
NPFではプラットフォーム刷新ということなのでパワーユニットのマウント方法も一新する計画で
いろいろな案を試行錯誤していました。
どちらかというと、振動騒音関係がメインでしたけど、操安乗り心地にも影響があるということで、
少しだけ研究開発したということになりますが、
そのNPFの話の前に当時の21Z(4代目レガシィ)のリニアモーションマウントに触れておきましょう。
これについてもボクは傍から眺めていただけなので詳しい事まで理解しているわけではないのですが、
21Zの開発終盤になってから急に降って湧いたように採用することになって
かなりスッタモンダ揉めて採用した挙句、量産直後から問題続出で3度も仕様変更を余儀なくされ、
最終的にはビッグマイナーチェンジを機に後期型から已めてしまったという、
今となっては無かったことにしたいようなスバル迷走を象徴するようなモノです。
そのリニアモーションマウントの図解などあるかなと思い、ネットを漁ってみても皆無に近かったです。
モーターファン別冊「レガシィのすべて」(デジタル版)を見返してみると
「その他エンジン右側後部とボディとを専用のリニアモーションマウントで固定することで
操舵レスポンスに見られるリニア感の向上も追求された。」と書いてあるだけでしたし、
当時のスバル(富士重工)からのプレスリリース資料でも
「ターボエンジン車には、コーナリング時などでのエンジンの横揺れを抑える
リニアモーションマウントを採用し、一体感のある操縦性を実現。」と書いてあるだけでした。
つまり、操舵して車両にヨーモーメント(曲がろうとする力)が発生する時に
エンジンマウントが変形してエンジンなどパワーユニットが車体より遅れて運動するりを
エンジン右側後部(さらに上方)のつっかえ棒で押さえようというもので、
そのつっかえ棒のことをリニアモーションマウントと名付けたというわけです。
といっても、絵や図がないとどんなもんだかイメージできないですよね。
ネットで探して唯一理解を助けてくれそうなのがこのみんからの記事です。
※全く知らない方の記事ですけどリンクを貼らさせていただきました。
この記事と写真を見れば、かなり立派なというか大仰で重そうで高そうなモノかが分かるでしょう。
それとともに、ボクも当時というか、少しブーム(?)が去った時にこんな記事を書いていて
それなりに毒づいているし、炎上しそうになってますけどね(汗)
そもそも、このリニアモーションマウントは21Zの開発途中に某T氏が
エンジンが遅れて動いてる感じがあるから横棒で押さえちゃえとやってみたのが発端らしく、
この辺の感覚とか、エンジンマウントに目を付けるところや、思ったらやってみちゃう行動力などは
素晴らしいものはあると思いますが、理論考察や他性能への影響などの開発手順・期間を無視して、
というかある面でカリスマ的というか教祖的に信者を巻きこんで強引に進めてしまったようで、
結果的にメリット少なくデメリットばかりが目立つというモノになって失敗したのでしょう。
だいたいエンジンが動くから操安性が良くないというのならターボエンジンだけの問題ではなく
NAエンジンも含めて全車に採用すべきモノであるのにも関わらず、
ターボエンジンだけの採用となったことからしてもしがらみだらけの中で
教祖様のメンツを保つために無理矢理ターボエンジンだけ採用したということなのでしょう。
もっとも21Zのターボエンジン車はエンジン右側後部にターボを配置しているので
実はリニアモーションマウントのようなつっかえ棒を理想的な位置に設定することができず、
つまりアルファロメオ33のような位置にすればもっと簡易で有効なものにできるんですが……
というようなことも21Zの開発の失敗などから理論考察を深めて行って分かってきたことで、
もっと先行開発・基礎研究をしっかりしていればまともなモノが出来たかもしれませんけど。
まっ、スバルではスバル1000でほぼほぼ今のようなパワーユニットのマウント方法にして以来
それを刷新するようなことはせずに基本的には踏襲していただけで、
それについての基礎研究も先行開発もほとんど何もしてこなかったので時代遅れなのも事実です。
そこで、NPFではパワーユニットのマウント方法もゼロベースで新設計しようとなるわけです。
NPFは車体プラットフォームも新設計ですが、
いちおうエンジンもミッション(CVT)も新設計の計画でしたからね。
で、様々なマウント方法を検討して、理論考察で絞って、
幾つかの案については簡易試作で実車評価をした覚えがありますが、
まぁその結果については記憶も曖昧ですし、ここで書くほどのことはないですから割愛します。
と、冒頭に断ったように今回は大した内容ではありませんが、ひとつだけこぼれ話を。
このNPFでマウント方法を弄って試験をしている時のこと、
前述の某T氏、彼は当時ボクの上司でもあった人ですが、
嫌われていたので業務もほとんど口出しせずに放置状態だったのに
この件だけははっきりと「そんな試験はやるな!」と言われたのを覚えています。
やるなと言われても、設計や他実験部署も含めて計画的に進めている業務なので
やらないわけにはいかないわけですが……21Z開発直後で上手くいってなかった頃なので、
それにより失敗を明確化されたくなかったのか、
逆にまともなモノを作られないよう足をひっぱりたかったのか、、、よー分からんけど。
まっ、やるなと言われてもやるべきことをきちんとやるだけというのがボクの仕事のやり方ですけど(爆)
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