« 「うどん舞鶴」に再訪したら、リニューアルしていた | トップページ | U.F.O.「ポックンション 濃い濃い韓国風甘辛カルボ」を実食 »

NPFのフロントサス先行開発はほぼ成果ゼロだった

スバルカテゴリーの記事としては前回は直近の役員人事の話をしましたが、
今回はまた時を2000年代初頭に戻して、前々回の記事の続きとして、
NPF(ニュープラットフォーム?)のフロントサス先行開発のことを書いていきましょう。

もっとも前々回とその前とアッカーマンの話や21Zで舵角差を小さくした話など道草を食ってたので
実質的にはこちらのNPFのリアサス開発に続く記事ということになりますけどね。
ただ、今回の記事を書くに当たってはアッカーマンとか舵角差のことを知っててもらいたかったから
少し寄り道をしてきたということなんです。

 

さて、21Zでは軽量化目的でそれまでのプラットフォームとは微妙に違うものを
フロント部分はほぼ全面的に金型を造り直すくらいの大改造・大投資をしたわけですが、
NR1およびその先行開発の位置づけのNPFでは、同様にバブリーになってた時代でもあり、
フロントからリアまですべてを一新するというような形で企画・構想が進みます。
だからNPF=ニュープラットフォームなんて仮称になってたわけですが。

一方で、水平対向縦置きシンメトリカルAWDのレイアウトはもうスバルとしては変えられなく
NPFでもそこはもう“ありき”でしたけど、
それでもEJ→FAエンジンやCVT化は織り込んでの検討だったと記憶してます。

そして、フロントサスおよびステアリング系をまったく新規で開発することとなり、
また21Zで舵角差を小さくしたことの失敗もなんとなく設計部署も反省する風潮もでてきて、
そんな経緯からNPFではステアリングギアボックスを前軸よりも後ろに置いて
きちんと他社並みに舵角差がとれてアッカーマンに近付けられるようなレイアウトにします。

このあたりのレイアウト変更には、EJエンジンのターボ位置が右バンク後方の高い位置から
FAエンジンではエンジン前下になっていることとも関連もあると思いますけどね。
ただ、FAでエンジン前下にターボを配置したのは排ガス対策が主目的のはずですが。

結果的にバブリーなNR1は途中で開発凍結となり、その先行開発のNPFも凍結されますが、
それでもFAエンジン、縦置きCVT、そしてWウィッシュボーン・リアサスなど部分的には
その後のスバル車につながっていくことになるわけです。

けれども、NPFのフロント周りの車体構造、プラットフォームは以降のスバル車には採用されません。
あまりに大規模な投資が必要となり、GMグループから放出されたスバルではお金がないからです。
そもそもNR1が凍結となったのもお金がないからなので、NPFの話も全体としては凍結なんです。
リーマンショックよりも前のこの時にスバルは社内バブルが弾けたんですよね。

というわけで、ステアリングギヤボックス後ろ置きでのアッカーマン改善は儚い夢と消えましたし、
その点に関しては結果的にボクらは何の成果も残せなかったということになります。
まぁ、もうちょっと時間があれば、アッカーマン改善とハンドリングについて
定量的・理論的なノウハウを残せたのかもしれませんが、
ボクの異動もあって尻切れトンボ状態になってしまいましたし……

 

それからもうひとつ、NPFのフロントサスでは基本はストラット形式のままでしたけど
当時のBMWやベンツがやっていたダブルピボット・ロアアームというのも試していました。
これはロアアームがA型とかL型ではなくて2本のロアアームでそれぞれにピボットがあり
仮想転舵軸を持つというものです。

正直言って、設計も何が目的でこれをやるのかよく分からないままに
BMWやベンツなどプレミアムカーがやってるので真似してみようくらいの感じだったと思うし、
同時併行で従来同様のL型ロアアームのシングルピボットの開発も進めていたので、
興味本位でやってみよう/やっちゃいましょうってノリだったんでしょうね。

なので、ボクもあまり真剣に考えずにやってみたわけですが……
これは完全に失敗でした。というか失敗してから理解しました。

図を描くのは面倒なので描きませんが、ダブルピボットでは各ロアアームの延長線上での交点が
仮想のキングピン軸となりますから、(仮想)キングピン軸を車両外側に設定できます。
そうするとネガティブスクラブに出来たり、マスオフセットを減らすことができます。

ただし、ステアリングギヤボックス前置きだと仮想キングピン軸だけ外出ししても
タイロッドエンドが外出しできないので舵角差を大きく出来なくなる……
なんて頭の中で考えてしまっていたんですが。

実はダブルピボットで大転舵をすると、2本のロアアームが折りたたまれるようになって
仮想キングピン軸も車両内側に入ってくるし、タイヤ接地点そのものも車両内側に移動してきます。
すると、ステアリングギヤボックス前置きだと急激に舵角差が大きくなり、
逆にステアリングギヤボックス後ろ置きだと急激に舵角差が小さくなってしまうんです。

 

つまり、ダブルピボットはステアリングギヤボックス前置きでやれば
直進付近ではパラレルステアに近く、大転舵ではアッカーマンステアに近づくという
理想的と思われるような舵角差、ステアリングジオメトリーの設計が可能になるということで、
おそらくBMWやベンツが採用していた主目的はそこにあったのだろうということです。

一方、NPFでやったのはステアリングギヤボックス後ろ置きなのにダブルピボットにしてしまい、
大転舵になるほどどんどん舵角差が減少するというマヌケなものだったというわけです。

まっ、この失敗から得た知見もある意味では貴重なものと言えなくもないのですが、
それはその後にスバルがステアリングギヤボックス前置きでダブルピボットにしていれば
生きてくる知見だけど、残念ながらその後のスバルはそこにトライしてないですからねぇ。

そもそも、ダブルピボットにすると大転舵時にタイヤ接地点が内側に入り込んでくると
幅の広い水平対向エンジンを縦置きするスバル小型車の場合は
さらに転舵スペースが少なくなってしまい最小回転半径が大きくなってしまうので、
舵角差でメリットがあったとしても全体としてはネガが大きくなってしまうでしょうしね。

というわけで、NPFフロントサスでは失敗し成果もなく、
かつ舵角差の研究もやり残して、モヤモヤ感しか残りませんでした。スイマセンorz

|

« 「うどん舞鶴」に再訪したら、リニューアルしていた | トップページ | U.F.O.「ポックンション 濃い濃い韓国風甘辛カルボ」を実食 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「うどん舞鶴」に再訪したら、リニューアルしていた | トップページ | U.F.O.「ポックンション 濃い濃い韓国風甘辛カルボ」を実食 »