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新書「指導者の不条理」を読了

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PHP新書の「指導者(リーダー)の不条理 組織に潜む『黒い空気』の正体」菊澤研宋(けんしゅう)著を読みました。

サラリーマン時代にはこんなボクでもいちおう指導者・管理職という立場にもなったのですが、
もうそんな立場というか役割ともまったく無縁な早期リタイアした無職の身なので
いまさら「指導者の不条理」と言われても興味はないのですが、、、
「黒い空気」なんて言葉にはピクッと反応してしまうボクなので、読んでみました。

もちろん、この「『空気』の研究」山本七平著を読んで以来、“空気”に反応してしまうのですが、
それがまた“黒い”と形容されていれば、なお興味をそそられるというものです。

なお、著者はボクより少し年上の大学教授で、経済学・経営学などを専門とする方です。

本書の「まえがき」では次のようにはじまっています。
                                   (以下引用)
 本書は、私のこれまでの「不条理」研究をめぐる知的挑戦の歴史そのものである。(中略)
 新古典派経済学の世界では、合理的な企業は成功し、非合理的な企業は失敗し淘汰され
る。つまり、合理的成功と非合理的失敗といった二分法の世界なのである。
 ところが、(中略)
  当時、新しく注目されていた新制度派経済学を用いると、合理的成功と非合理的失敗
といった二分法を超えて、「組織は合理的に失敗する」という第三の現象が存在すること
を発見した。
 そして、このような「合理的失敗」のことを、私は「不条理」と呼んだ。(中略)
 そして、最後に行き着いたのは、カント哲学であった。しかも、組織の不条理は、日本
人論で著名な山本七平の空気論とも密接に関係しているように思えるようになった。しか
も、何よりも不条理な状態、私なりの言葉で言い換えると「黒い空気」は、カント哲学の
「実践理性」の助けを借りて解決できるという考えにいたった。(中略)
 以上のように、「不条理」というものを、およそ二〇年以上も研究してきた。本書は、
その私の、経済学的で、経営学的で、そして哲学的な知的挑戦の歴史をそのまま全体の構
成としている。この知的挑戦の歴史を、読者の皆さんと共有できれば幸いである。
                                  (引用終わり)

あっ、しっかり山本七平氏が登場してきますね。
もちろん、この部分だけ読んでもチンプンカンプンで、「組織は合理的に失敗する」って???
何が「黒い空気」なの??? いきなりカント哲学が出てくるの! となるわけですが、
まぁ詳しく書くとネタバレになっちゃうので、興味のある人は本書を読んでくださいね。

 

そして、本書は山本七平氏の「空気」を下敷きにして始まるとも言えるわけですが、
山本氏が日本人はアニミズム的思想から非合理的な「空気」が生まれやすいと考えたのに対し、
本著者は限定的な範囲でのみ合理的に考えた「黒い空気」に支配されやすいとして、
そのことを「組織は合理的に失敗する」という言い方をしているのです。

確かに、山本氏の縄文時代のアニミズム的思想が日本人の「空気」を生んでいるというより、
むしろ弥生時代の稲作共同体~江戸時代の村社会が日本人の「空気」を生んでおり、
その閉鎖的な村社会の中では限定合理的となる「黒い空気」になりやすいという説明は
個人的にはさらにしっくりくるような気がしますね。

本書では大戦中の日本軍の事例から、戦後の様々な企業の不祥事なども取り上げて
それらを題材にして「黒い空気」や「不条理」を解説し、
さらにそのような状況にならないように指導者はどうすべきかなど具体論にも及んでいます。

ここではそれらを紹介することはしませんが、ボクもサラリーマン時代には一社のみでしたけど、
様々な組織に属していたり、多くの組織を総括する立場だったこともありますから、
著者が指摘するような「黒い空気」となりやすい組織や管理者(指導者)の特徴などは、
あぁなるほど、そうだよねぇ、と納得し、共感する部分も多々ありました。

そのようなところも含めて、なかなか興味深くかつ意義のある一冊でした。

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