新書「荘園」を読了
中公新書の「荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで」伊藤俊一著を読みました。
ボクは学生時代に、歴史、特に日本史はほとんどまともに勉強してこなかったので
(テスト前日の詰め込み一夜漬けしかしてなかったので)
「荘園」「墾田永年私財法」「応仁の乱」とかの言葉もなんとなくもやっと聞いたことがあるくらいで
きちんと理解できてませんから、まぁこの歳になってからいまさら感もありますが、
恥ずかしくないくらいに理解しておこうということで、この本を買ってみました。
まぁ、ボクの父方の祖先を辿ると新田姓で新田の荘あたりが出自だったらしいとのことなので
いちおう荘園などについても少しだけ興味が出てきたということもありますけどね。
で、本書の内容は日本史初心者のボクにとってはなかなか難しいところもありました。
なので、本書を要約して「荘園とは……」なんてここに書くのはハードルが高いですし、
まぁそれを書けたとしてもネタバレみたいになるので書きませんけどね。
なんにしても、著者の主張とか見解とかが書かれているというより
極力史実などに即して順を追って整理されて書かれていて、
荘園だけについて書いてあるというより、荘園から日本史を紐解くという形になっています。
本書の表表紙の袖には次のように内容紹介されています。
(以下引用、改行位置変更)
荘園は日本の原風景である。公家や寺社、武家など支配層の私有農園をいい、奈良時代に
始まる。平安後期から増大し、院政を行う上皇の権力の源となった。鎌倉時代以降、武士
勢力に侵食されながらも存続し、応仁の乱後に終焉を迎えた。私利私欲で土地を囲い込み、
国の秩序を乱したと見られがちな荘園だが、農業生産力向上や貨幣流通の進展に寄与した
面は見逃せない。新知見もふまえ、中世社会の根幹だった荘園制の実像に迫る。
(引用終わり)
そして、地元の伊勢崎や新田荘については次のように少しだけ紹介されています。
(以下引用)
赤城山南麓には豊富な湧水があり、用水路を引かなくてもある程度の開発は可能だった。
上野国淵名荘(群馬県伊勢崎市)は秀郷流藤原氏の藤原兼行が開発した私領を核に、佐位郡
全体を待賢門院が建立した法金剛院領の荘園にしたものだ。
淵名荘の東隣に鎌倉幕府倒幕で活躍した新田義貞の本拠地、上野国新田荘(群馬県太田
市)が成立した。 (中略) 新田荘は新田郡全
域に広がり、下司に任じられた義重の権益は拡大して、さらに三七郷を開発した。新田荘は
田地三〇〇町余、畠九六町余、在家二四八宇の規模になった。 (引用終わり)
さらに、この記述の直前に「女掘」についても紹介されています。
(以下引用、改行位置変更)
この時期の開発を物語る遺構として、女掘と呼ばれる巨大な用水路跡がある。この水路は
利根川の流路の一つである桃ノ木川から現在の前橋市上泉町の地点で取水し、赤城山の南麓
の田地を灌漑しようとしたものらしい (中略) これだけの水路を造
築したにもかかわらず、用水路として使われずに放棄されたのだ。
女掘は最初の設計にミスがあったようで、始点の溝底の標高は九三・八メートル、終点は
九〇・五メートルで、一キロメートルあたりの高低差はわずか二五~三三センチメートルし
かなく、この落差では、現代のコンクリート製の水路でも用水として機能させることは無理
という。女掘は当時の開発に向かうエネルギーと、その拙速さまで今に伝える遺構と言えよ
う。 (引用終わり)
設計ミスだったんだ!
というか、そもそも成立しようもなかったのなら設計ミスというより企画ミスなんでしょうけど。
女掘については、3年前にこの時の日本史セミナーで講演を聴いてきましたけど、
設計ミスとは言ってなくて、理由は定かでないけど完成前に放棄されたという話でしたけどねぇ。
また、新田荘についても3年前のこの時の日本史セミナーで講演を聴いていましたね。
新田荘遺跡も女掘(の一部の赤堀菖蒲園)も以前に見学しているのですが、
この本を読んでさらに理解が少しだけ深まったと言えるでしょうかねぇ、自信ないけど(汗)
最後に、「終章」のところで荘園制を現代の政治体制と比べて次のように書いているのが
印象的だったので、ここで紹介してこの記事も終わりにしたいと思います。
(以下引用)
日本の荘園の歴史、特に院政期以降の中世荘園(領域型荘園)の歴史は、小さな地域の自
治権を最大に、国家や地方政府の役割を最小にした場合、何が起きるかという四〇〇年にわ
たる社会実験と言えるかもしれない。
摂関期までの荘園は公領を補完するもので常に国衙の圧迫を受けていたが、院政期には領
域型荘園が設立され、私有される治外法権的な領域を基礎とする中世荘園制が形成された。
これは何かと硬直化しがちな官僚制とは対極にある柔軟な体制である反面、柔軟であるがゆ
えの制御の困難さを抱えた。 (引用終わり)
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