新書「2002年、『奇跡の名車』フェアレディZはこうして復活した」を読了
ただし、ボクはスポーツカーよりも小型実用車の方が好みということもあって
初代フェアレディもフェアレディZもそれほど興味がなかったというのが正直なところで(汗)
なのでちょい試乗も含めても今まで4代目のZ32型しか乗ったことがないです。
興味があったらディーラーでのちょい乗りとかもしたでしょうけどね。
Z32も特に興味があったわけでもないけど、たまたま仕事の都合で試乗・試験しただけです。
ただ、その頃の日産車はイケイケの頃だったので
技術者目線でその性能などについては大いに興味がありましたけど。
ただ、本書によるとそのZ32型はコスト高で販価も高く売れずに失敗作ということで、
それで著者がまとめたZ33型はコストを抑えて大成功したのだそうです。
個人的にはZ33型って乗ってもないので印象があまりなく
見た目は塊感はあるもののどこかハリボテ的な感じで安っぽく感じてましたし、
日本でそれほど見かけたわけでもないので成功作って言われてもへぇーという感じでした。
まぁ、著者がまとめあげた我が子のように思うクルマのことですから悪く書くはずもなく
その意味ではやや自画自賛的な本になっているのは否めませんが、
それはレベルこそ段違いですがボクもこのブログ記事ではその傾向はあるでしょうから否定できません。
ただ、そうは言っても、ブログと本は違いますし、次のような記述は少し違和感を持ちました。
(以下引用) 日産自動車から想起する
車名はといえば、シーマ、セドリック、グロリア、スカイライン、そしてZとGT-R、こ
れらはすべてフロントエンジン・リアドライブ(Front Engine Rear Drive : エンジンが前
にあって後輪で駆動する)のFR車である。メルセデスやBMWをはじめ、大排気量FR車
は高級車の証であり、日産はFRによってお客様の心を摑み、Fun to driveを提供してきた。
(引用終わり)
うーん、ボクの場合、日産が想起する車名は、サニー、ブルーバード(昔はFRでしたけど)、
マーチ、パルサー、プリメーラ、ティーダ……という順になるんですけどねぇ。
それにZは高級車(高額車)ではないといいながらここでは「高級車の証」と言い切るのも変だし。
まぁ、これも本書を読む人はフェアレディZなどのファンが多いからの表現かもしれませんが、
少なくとも日産社員で売れ筋・稼ぎ頭のFF車を担当している人が読んだらよい思いはしないでしょう。
なんとなく、随所に著者の思い込みが強すぎるようなところがあって、少し鼻につきますかね。
また、日本カー・オブ・ザ・イヤーでアコードに敗れた時の記述でも、著者の器の小ささを感じます。
(以下引用)
予想だにしなかったことだ。点数は記名投票であるので、誰がどの車に何点入れたかを一
人ずつ会場で発表し、その結果がすぐにわかるようになっていた。アコード一〇点、Z〇
点、もしくは一点というジャーナリストが十数名いたのを鮮明に記憶している。大人気ない
ことは承知の上であるが、私はそれ以来、彼らとは口を利いていない。 (引用終わり)
COTYについては元々〇〇贔屓のジャーナリストもいるし、接待攻勢などの闇の部分もありますが、
そもそも最も優秀な車を選ぶというものの、何を持って“優秀”とするのかなんて個人の所見でしかなく、
0点だった理由をちゃんと聞く方がよほどためになるかと思うんですけどねぇ。
個人的には多くの人には購入対象にならないような超高級車やスポーツカーよりも
いわゆる大衆車、コンパクトカーや今ならミニバンなどから選ぶべきものだと思うし、
そのように考える人ならZに0点なのも当然なのじゃないかと考えますけどね。
というか、そもそもCOTYなんてどうでもよいことですし(爆)
それと、このZ33型の開発と前後して、日産はカルロスゴーン体制になっていくのですが、
著者はそのゴーン氏についてキーパーソンとしてかなり持ち上げています。
もちろん、犯罪者・逃亡者としてどうこう言うつもりはないし功績は純粋に認めるべきですが
Z33型で大幅にコストカットできたのも、ゴーン氏が関連企業や下請けなど大胆に切り捨てて、
そのおかげで路頭に迷ったり人生を滅茶苦茶にされた人など多くの犠牲の上になし得たもののはずです。
その一方で次のようなことも書いているので、やはりゴーン氏の罪の部分も大きかったのだと思います。
(以下引用)
こうした状況では、誰も率先して新しいことをやろうとしない。目標が手の内サイズとな
り新しい創造性に向かわない。イエスマンが増殖し、上司の顔色を窺うヒラメ人間ばかりが
溢れる。職場の活気が失われる。そういう悪い風土が芽生えつつあった。ゴーン氏の側近た
ちによる「勘違いした忖度」が日産を侵食していた。 (引用終わり)
本当に優れたリーダーというのはそのような「勘違いした忖度」をさせないようにしないといけない。
まぁ企業に限らず、どんな組織でも、そして政治でも強大な権力が集中して長く続くと
往々にしてこのような「勘違いした忖度」が横行して組織が腐っていくものですから。
と、いろいろと突っ込みたくなるような部分も多々ありましたけど、
それでもやっぱり元自動車開発の現場にいた人間としては
共感できたり、なるほどと感心できたり、ニヤニヤしたりと面白く読まさせていただきました。
これを読んでZ33型のZに乗ってみたくなったということはありませんが、
確かタミヤの350Z(1/24)はストックしているので、
そのうちに作ってみようかな(笑)
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