ブルーバックス「世界は『ℯ』でできている」を読了
講談社ブルーバックスの「世界は『ℯ 』でできている オイラーが見出した神出鬼没の超越数」
金重明(Kim Jung Myrong)著を読みました。
前回紹介の「円周率πの世界」で「ℯ:ネイピア数」に興味が湧いたので続けて読みました。
著者は日本生まれの在日韓国人だそうですが、数学者とかではなく小説家なのだそうです。
ですから、本書は左開きの横書きのスタイルで数式もバンバン出てきますけど、
数式を使わない説明部分やその比喩的な解説部分ではなかなか面白い表現が多々出てきて、
それもまた面白くて読み応えのある内容になっています。
というか、数式部分はちゃんと順を追って数式の変形などをすべて理解しようとすると大変だし
まぁ流れだけ分かればいいというくらいなら理系の人ならほとんど飛ばして読んでも済むので、
むしろその文章や全体の展開がこの本の面白さになっていると思います。
前回の「円周率πの世界」はπの不思議さなどより桁数追求の歴史が主たる内容になってましたが
今回のℯ は別に2.71828……の桁数追求にはまったく触れられておらず、
もっぱらそのℯ の不思議さ、神出鬼没さについて書かれています。
ただし、ほぼ時系列にのっとって書かれてますので、ℯ の歴史とも言える内容です。
前書の「πの世界」で、πもℯ も超越数(代数的でない数)と呼ばれるもので、
かつ無限にある超越数の中で超越数であると証明されているのは僅かなことを書きました。
そして、πでもオイラーが主役級だったのですが、このℯ でもオイラーが主役級です。
なんせ、ネイピア数にℯ を使いだしたのはオイラーですし、
ℯ を別名でオイラー数とも呼ぶほどですからね。
そのレオンハルト・オイラーは18世紀の数学者ですから
ℯ の歴史はそれほどいにしえに遡ることはないのではないかと思っていましたが、
円周率πの歴史にはまったくかないませんが、それでも結構昔から出現していた数のようです。
「まえがき」には次のように書かれています。
(以下引用、改行位置変更)
謎の存在である超越数の中で、例外的に人類が昔から親しんできたのが、πとℯ だ。
ℯ はπに比べて知名度では劣るようだが、数学における重要度はπに勝るとも劣らぬ位置にあ
る。(中略)
連続ガチャをするときにすべてはずれる確率や、複数の封筒に適当に手紙を入れた場合すべて
の手紙が間違えた宛先の封筒に入る確率、最良の結婚相手を選ぶ戦略を考えるときに必要となる
確率などに、不思議なことにℯ があらわれることも知られるようになった。(中略)
オイラーの公式は間違いなく近代の数学の金字塔だ。そしてこの式の主役が、われらのℯ なの
である。
数学界のスーパースター、ℯ の物語を堪能してもらいたい。 (引用終わり)
このように、様々な確率を計算しようとするとℯ が出現するということだが、
人類史で最初にℯ が出現したのは、高利貸しの「夢の数字」だったというのですから、
これまたさらに面白味が増すというものです。
そして、オイラーが出現してからは、微分・積分しても変わらないとして、
y=ℯx の関数としてℯ が脚光を浴びていきます。
さらに、cosh(ハイパボリックコサイン)、sinh(ハイパボリックサイン)という双曲線関数に進みます。
もちろん、オイラーの公式も出てきます。
ちなみに、オイラーの公式は、(このブログで数式書くのは難儀ですが頑張って書いてみます)
ℯix =cosx+i sinx です。
この式で、x=π を代入すると
ℯiπ =-1 (∵ cosπ=-1,sinπ=0),これより
ℯiπ +1=0
この式のことをオイラーの等式(本書では「オイラーの宝石」)と呼ぶそうです。
前回の「円周率πの世界」の帯にデカデカと書かれていたのはこちらのオイラーの等式ですね。
実はボクはこのオイラーの公式とオイラーの等式がごちゃまぜで曖昧に記憶してました(恥)
そして、最後は複雑系の話にも及んでいて、実生活に役立たないけど面白く満足できる一冊でした(笑)
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