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新書「統計学が見つけた 野球の真理」を読了

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講談社 BLUE BACKS の「統計学が見つけた 野球の真理 最先端のセイバーメトリクスが明らかにしたもの
鳥越規央著を読みました。著者は統計学者でセイバーメトリクスの日本での第一人者なのだそうです。
なお、本書は、左開き(左閉じ)で横書きで書かれています。

セイバーメトリクスって言葉は知りませんでしたが、インターネットのサイバーとは関係ありません(笑)
アメリカ野球学会=SABR(Society for American Baseball Research) +測定基準の造語だそうです。
選手の能力やチームの能力を統計的手法によって測定・評価しようというのがセイバーメトリクスですね。

著者はその日本での第一人者とのことですが、そもそも日本ではセイバーメトリクスが浸透しておらず、
この分野ではアメリカのメジャーリーグ(MLB)が圧倒的に進んでいるということになり、
本書ではそのMLBの実態の紹介とともに、それを日本のプロ野球に応用した分析が主となっています。

 

野球では1球ごとに公式記録がつけられているので、それを元に統計処理できるのですが、
今ではそれだけでなく、PITCH f/x という投手の投球の球速や軌道を追跡するシステムや
Statcast という選手の動きやボールの位置、方向、速度などを計測するシステムがあり、
MLBではPITCH f/x は2007年から、Statcast は2015年から全球場に設置されて、
その膨大なデータが利用されるようになっているそうです(驚)

一方、日本では、2021年にヤクルトスワローズがホークアイ(線審などでおなじみ)を導入し
投手の投球の軌道の修正などに役立てたことが唯一あるだけなのだそうです。
そのホークアイ導入の効果かどうかはさておき、2020年→2021年での
スワローズ投手陣のレベルアップなどもセイバーメトリクスで分析されているので、
今後は他球団も導入していくのか、あるいは日本球界全体で導入されていくのか興味あるところです。

面白いのは、次のようにこれらのシステム導入でストライク/ボール判定も既に可能ということです。
                               (以下引用、改行位置変更)
     PITCH f/x や Statcast といった測定機器による計測で、投球がストライクゾーンを
通過しているかどうかを即時に判定できるようになった。そのため、実際にはゾーンを通過して
いないのにストライクとコールされたり、逆にゾーンをかすめているのにボールとコールされた
りしているボールも、判別できるようになった。
 そこで、際どいボールを球審にストライクとコールさせやすいキャッチングをする捕手を評価
するための指標として「フレーミング」という概念が生まれた。        (引用終わり)

あれ、以前に読んだ「プロ野球 元審判は知っている」によると、著者の佐々木氏は
捕手の捕球でミットを微妙に動かしてストライク判定を誘おうとしても球審のコールは変わらないし、
国際ルールとしてこのような捕球は今やマナー違反だみたいなことが書かれてましたが……

実際には統計結果として捕手の捕球の良し悪しによって球審の判定に影響が出ているわけで、
またそれによって捕手の評価に影響が出てきているというのだから、面白い事実ですね。

なお、2007年以降のMLBでストライク/ボールのミスジャッジは14.4%もあるとか、
特に3ボール0ストライクだとかなり恣意的にストライクゾーンが広がるとか
そのようなことも統計的にはっきりと結論が出ているのだそうです。

セイバーメトリクスは選手やチーム全体の能力を評価することからスタートしていますが、
それって同様に球審の能力を評価することも出来てしまうんですよね。
本書では書かれていませんが、それで球審の査定・年俸・引退も決められたりしてね。
そうなってくると、ますます機械(ロボット)に判定させた方が良いとなってきますかね。

 

そして、本書では、投手の指標、打撃の指標、守備の指標、走塁の指標など細かく説明されています。
正直なところ、DAI語(DAIGOの勝手な略語)みたいなアルファベットの羅列の言葉ばかりで
何が何やらワケが分からなくなる部分もありますが、まぁ考え方だけなら簡単な話ですから、
あぁそういう観点で、そういう要素を加味して、計算していくんですね、というのは分かります。

そこで、帯に書いてある「大谷選手はMVPに値するのか?」についても本書内で触れられています。
大谷選手の所属したエンゼルスの2021年の成績は全然よくなかったし、
大谷選手自身もホームラン王でも打点王でもなかったけど、二刀流だからMVPになったのでしょうか。

それは、そうなんですが、単純に二刀流で凄い、珍しい、大変だ、という情緒的な判断ではなく、
上記の投手、打撃、守備、走塁などの各指標を元に総合評価=WARというものが計算され、
それによると、二刀流なら投手の指標と打撃・守備・走塁の指標を合算されるから
結果的に大谷選手のそのWARの値はMLBで最高点となり、
それを受けてMVPに選ばれたということになると解説されています。

一方で、日本の2021年セリーグMVPはスワローズの村上選手に決まったのですが、
実はMLBと同様にWARを計算するとカープの鈴木誠也選手の方が高くなるそうです。
ただ、日本ではセイバーメトリックスの考えは浸透していないばかりか、
MVPは優勝チームから選出されるみたいな不文律があるために村上選手になったのでしょう。

まぁ、セイバーメトリクスでは、チームの精神的支柱とかムードメーカーとかラッキーボーイとか
そういう(日本人が好きな)精神論的な要素はいっさい考慮されていませんので、
あくまでもMVPは個人の能力発揮によるものに与えられるという考えなのでしょう。

 

さて、セイバーメトリクスは個人やチームの能力を指標化することなわけですが、
その大元の考え方は得点期待値や勝利期待値にあります。
つまり、ある局面である選手のあるプレーが、どれだけ得点に貢献したか、
またその結果としてチームの勝利に貢献したか、ということから能力を指標化しているわけです。

その考え方を用いると、攻撃の作戦や守備シフトなどの有効性も統計的に論じることができます。
本書では「野球のプレーを得点化する」などと表現されていますが、
例として犠牲バントについての記述を紹介しておきましょう。
                               (以下引用、改行位置変更)
    ビル・ジェームズは『Baseball Abstract』の中で、得点期待値を用いて犠牲バントの
有効性について語っている。結論は「無死一塁のランナーをバントで送って一死二塁にする戦術
に、得点期待値を上げる効果はなし」というものである。           (引用終わり)


もちろん、MLBでの統計結果から導き出された結論なので、日本の高校野球とは違いますし、
その局面での投手の球筋や打者の調子や守備陣形などや、精神的な状態などにもよりけりですが、
それでも、犠牲バントはそれらの条件が揃ったときだけ有効な作戦と考えた方がいいですかね。
そして、この犠牲バントにはさらに次のように分析がなされています。
                               (以下引用、改行位置変更)
     したがって犠牲バントの損益分岐点は、ざっくりと言って、出塁率1割2分7厘とい
うことになる。
 2021年のNPBにおいて50打席以上の打者でこれを下回った者は、3名しかいない。しかも、
そのうち2名は投手である。よって無死一塁という状況ではヒッティングのほうが、得点期待値
を上昇させるという意味においては採るべき戦術である。           (引用終わり)


まぁ、そうでしょうね。ボクは犠牲バントってのも好きではないですし、
出塁率の悪い選手はたいていはバントも下手だったりして、だったら三振の方がマシかとなるし、
おそらく高校野球でもセイバーメトリクスで分析すれば効果なしとなるかと思いますけど。

 

その他、球場によるホームランの出やすさなどもパークファクターとして統計処理されてます。
                               (以下引用、改行位置変更)
 セ・リーグの球場で最も本塁打が出にくいのは、ドラゴンズが本拠地とするバンテリンドーム
ナゴヤである。PF0.57ということは、他のセ・リーグの本拠地に比べて本塁打は半分ほどしか出
ないということになる。それに対して、ジャイアンツの本拠地である東京ドームや、スワローズ
の本拠地である神宮球場は、他の球場に比べて約1.4倍、本塁打が出やすい球場であるといえる。
                                     (引用終わり)

よく言われてたことですが、こんなに差があるとは少し驚きとともに呆れてもしまいます。
これを知ると、ホームラン王というのが本当に意味があるのか怪しくなってきます。
なので、それらの補正も入れるセイバーメトリクスの指標が意味を持つのだとも言えますが……

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