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廉価MT用のスバルAWD開発は混迷を極めた

前回記事では2001年頃に、スバルの廉価というかAT車用の主流となるAWDシステムである
ACT-4の制御を10数年ぶりに一新して新ACT-4制御として
結果的にその後の20数年以上に渡るスバルAWDの礎となる技術開発に
微力ながら役立てたことなどを書きました。

その記事でも次回はMT車用の主流となるAWDシステムについての話をすると宣言したので
その宣言通りに今回はその話を書きたいと思います。
ただ、結論からいうと、タイトル通りにそれは混迷を極めたので
この記事でも整理して書けるかどうかちょっと自信がありませんけど……

そもそも、新ACT-4はSさんが95%、残りがボクとほぼ2人だけで
実質的にわずか数ヵ月で開発してしまったのですが、
それは制御ソフトだけでハードの開発がなかったこととか
周りの人間の興味がなくチャチャが入らなかったなどの幸運もあり、スムーズに進んだわけです。

一方、このMT用となると一転してやたらと登場人物が多くて数十人にもおよび
開発期間というかああでもないこうでもないと4年以上もすったもんだが続いてしまったんですから。

まっ、何かにつけて徹底的に反対して揉める原因を作ったのはボクだったわけですが。。。
ただ、いくら天邪鬼のボクだって技術的に正しければ反対しなかったわけなので、
つまり技術的に間違ったことをゴリ押しされたりしたので、そこまで揉めたとも言えますが……

 

そのすったもんだの話の前に、先ずはスバルのMT車用のAWDシステムの変遷ですが
1972年のレオーネ・エステートバンのパートタイム4WDから始まり、それが長らく続き、
1986年のレオーネ・フルタイム4WD(確か開発符号:53P-Y)で
50:50のベベルギア式センターデフを使ったフルタイム4WDとなります。

ただ、フルタイムといっても1輪が滑るとハイそれまでという代物で
それを防ぐためにマニュアル操作のデフロック機構も付けていたわけですから
真の意味のフルタイムではなく実質的にはパートタイムと同程度のものでしかなかったです。
この辺は初期のアウディ・クアトロもラリー等ではセンターデフロックしていたのと同じです。

そして、スバルのMT車で真のフルタイム4WD=これをAWDと言ってもいいようになるのは
1989年のレガシィ登場の時からとなります。
センターデフLSDにビスカスLSDを使うのは1984年登場のプジョー205T16より
5年遅れということになりますけど、まぁ市販車としては特に遅かったわけではありません。
日産ブルーバード・アテーサやミツビシ・ギャランVR-4などとほぼ同時期です。

そして、この時の記事にも書いたように50:50+ビスカスLSDというのは
完全に理想的とまでいかなくとも、工学的にもかなり真っ当な技術であります。
スバルもここでそのAWDシステムに行きついたというのはかなり真っ当なことであり
その意味でも先見の明があったとも言えるかと思います。
そして、だからこそそれから何十年にも渡ってこのまま使い続けられたとも言えるのです。

 

しかし、この記事でも書いたように、2000年初頭になってスバルが
「プレミアム・ブランドを目指す」とかいうようになり、そのためにAWDに特化しようとしだすと、
他社のAWDと差別化したいという邪念から、この50:50+ビスカスの見直しが議論されてきます。

ここで、個人的な見解、といっても好き嫌いではなく工学的に正しい選択という意味ですが、
将来的にはMT車は先細りしていくことは目に見えていたので、50:50+ビスカスのままでも良いが
敢えてそれを変えるのであれば、AT車との整合性も含めてACT-4と同様な
電子制御のアクティブトルクスプリット式AWDしかないと考えていました。

AT車との整合性というのは、スバル・シンメトリカルAWDとかなんとか言っていながら
実は技術的にも思想的にもテンデバラバラなAWDシステムを無節操に使っていたので
ユーザーに対して説明し納得してもらためにもある程度共通性のあるシステムとすべきだろうし、
また自動ブレーキ等の先進安全デバイスも含めたブレーキ制御デバイスなどの進展を考慮すれば
AT/MTとほぼ共通のシステムとしてどちらにも適用でき、かつ開発負荷を減らせるとの目論みです。

まぁ、当時は自動運転まで見据えていたかというとボク自身もそこまでは考えていませんでしたけどね。
そこまで考えていたら、AWDシステムより以前にクラッチの自動化を考えなければなりませんし。

 

ただ、MTにACT-4と同様なAWDシステムにするというのは
前回の新ACT-4の話でも少し触れましたけど、そんな簡単で単純なものでもないわけです。
ACT-4はAT(変速機部分)の油圧を使い、ATの電子制御コントローラーを間借りして
非常に軽量で安価に出来ているわけですが、MTは油圧もコントローラーもありません。

AWD制御のためだけに油圧ポンプを作ってその油圧を使うのは無駄ですから
ハルデックスやITCC(豊田工機)など外部油圧が不要なトルクカップリングを使うことになります。
その場合でもコントローラーは必要となります。

日産のように、ABS用コントローラー内にAWDコントローラーも組み入れる手もありますが
それは下請け部品メーカーにそれを頼めるだけの大手メーカーだからこそ出来るワザで、
弱小スバルにはそんなことが出来るわけがありませんから。

それでも、多くのメーカーはハルデックスやITCC+コントローラーでのAWDを作っていて
スバルもそれをやったからといって、スバルだけがバカ高いものになるわけでもないのですが、
なにせACT-4がタダみたいに安くできているAWDであるだけに、
また50:50+ビスカスもビスカスが少し高いもののそれより安くできていただけに、
すんなりITCCを使って電子制御コントローラーを新設する方向には決まりませんでした。

なお、WRX STi専用とも言えるDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)については
これだけはお金かけても許されていて電子制御コントローラーも専用に作ってました。
こういう目立つところにだけは、というか意地になるところだけはお金かけるんですよね。

この頃のスバルは、レガシィとWRX STiだけはお金かけるって感じでしたな。
逆に「ブレミアムブランドを目指す」とか言っていても
それはレガシィとWRX STiだけしか見てなかったということなんでしょうけど。
(その後のB9トライベッカもお金はかかりましたけど)

 

そんなこんなもあって、MT用の新AWD案は幾つかの考え方というか流れが生まれます。
(A)は、ボクのイチオシの電制カップリング式、具体的にはITCCを使うものです。
が、前述の通りでその電子制御コントローラー(のコスト)が課題となります。

(B)は、センターデフ上等、リア偏重トルク配分上等という頭から抜け出せない考えです。
つまりAT用だったVTDやWRX STi専用のDCCDを安く作れないかという妄想です。

(C)は、とにかく電子制御なしでビスカスより安い機械式AWDは出来ないかという考えです。
ここからは、LSDなしのセンターデフ、つまり3オープンデフでLSDの役割は
ブレーキ制御デバイス(トラクションコントロールやVDC/ESC)に任せるか、
あるいは、トルセンセンターデフのようなセンターデフを安く内製しようという案がでてきます。
トルセンからそのまま買うとパテント料を払う分だけ損だというケチ根性ですが(汗)

 

と、ここまで書いてやっぱりイマイチ整理された記事にならないので
本日はここまでとして、また続きは仕切り直して書かせていただきますね<m(__)m>

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