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GM内AWDの仕事より、スバルAWDの進化を求められるように

ちょいと前のこの記事にて、GMからのAWD-CoEとしてのスバルへのAWD関連の業務依頼は
2代目オペル・ザフィーラのAWD化以降は大きな案件はなくなり
むしろ、スバル内部で、新しいスバルAWDの進化、
あるいはスバルAWDのアピールということが求められるようになっていった、と書きました。

本日の記事では、その辺りのことについて全体像を書いていくことにしましょう。
その前に、2000年あたりのスバルのAWDシステムのライナップをそれぞれ見ていきましょう。

スバルの小型車、つまり水平対向エンジン縦置きの特殊なAWDとしては、
①廉価(?)MT用……50:50センターデフ+ビスカスLSD
  ※1989年初代レガシィRSなどに初採用。
    なお、50:50センターデフのLSDなしは1986年のレオーネから。
②ハイパースポーツ(?)MT用DCCD(ドライバーズ・コントロール・センター・デフ)
  ……後輪偏重トルク配分センターデフ+電子制御LSD
  ※1994年初代インプレッサWRX STiに追加・初採用。
③廉価(?)AT用ACT-4(アクティブトルクスプリット)……電子制御トルクカップリング
  ※1987年アルシオーネおよび3代目レオーネに初採用。
④高トルク(?)AT用VTD(バリアブル・トルク・ディストリビューション)
  ……後輪偏重トルク配分センターデフ+電子制御LSD
  ※1991年アルシオーネSVXに初採用。

いちおう、スバルの軽自動車系にも触れておくと
かつては、ツインビスコとかワンウェイクラッチ式など独創的なものもありましたけど、
1990年発売の5代目サンバー、1992年発売のヴィヴィオからは、
FFベースとRRベースの違いはあれど、ビスカスカップリングによるオンデマンド式と
他社とほぼ同様なものに落ち着いています。

 

これらを見ると分かるように、当時のほとんどのスバルAWD技術は
1990年代はじめまでに開発されたもので、10年以上も“進化”していないことになります。
個人的にはほぼ完成されたような技術であれば、別に無理矢理“進化”させる必要はないし、
むしろただ目新しさだけを演出するのが目的なら、
それは“進化”ではなくて単なる“変化”でしかないのですが……

まっ、それはともかく、どうやら上層部(?)としては「プレミアム・ブランド」を目指すために
「スバルのAWDは(他社よりも)凄いんだぞ」といいたいわけなので、
先ずは、①の廉価MT用AWDの進化というか他社とは異なる独自AWD化させること
それより重要なのは、②のハイパースポーツMT用AWDをさらに進化させることであったようです。

プレミアム・ブランドを目指すので軽自動車なんてもうどうでもいいって感じでしたし、
ACT-4も同様にどうでもいいし、もう十分に格安で作れているし、
VTDは理論的にどうであれ、スバル独自技術としてなんとなく評価があるし……って感じでしょう。

①の廉価MT用は他社でも普通にある(当時は、であり、その後廃れますが)AWDであり、
他社との差別化が出来ないというのがその理由でしょう。
②のハイパースポーツ用AWDに関しては、ひとつには目立つ技術で「凄いぞ」アピールしたいことと、
当時勝手にライバル視していたミツビシ・ランエボのAYCなどにイメージで負けたくないことと、
社内で「NBR最速チャレンジ」ごっこをしていたのでそれに役立つものが欲しかったのでしょう。

ちなみに、そのNBR最速チャレンジごっこを陣頭指揮していたのは当時のボクの上司でもあり
今でも某・親分に次いで対外的に有名な方ではありますけど、
ボクは徹底的に嫌われて干されていたので、ボク自身はその“ごっこ”には全く関与していませんでした。

 

そんな感情論は別として、個人的にはそんなただ目立つことや見栄みたいなことに注力するより、
あるいは将来的に先細りなMT車用の技術を開発するより、
スバルにとって必要な技術開発はもっと別にあるし、
それらも含めてもっと地に足をつけた技術開発が必要だと感じていたのですけどね。

ACT-4にしても、50:50センターデフ+ビスカスにしても
それなりにリーズナブルでかつ理にかなったAWDシステムではあるんですけど
それにしたってネガ部分がないわけではないし、時代遅れになりつつある部分もあるし、
だから既存のスバルAWDシステムをすべて基本から見直して、アップデートする必要があるし、
それらの作業およびまったく新規のAWDシステムにも視野を広げることで
スバルAWDの技術力が底上げされるんじゃないかなと、そしてそうすべきだと考えたわけです。

そして、旧AWD-CoE内でももともとボクがそのように主張し続けていたこともあって、
実務者レベルでは、なんとなくその方向、
つまり既存のスバルAWDを全方位的に基本から見直そうという方向で動き始めます。

 

まず、①廉価MT用としては、トルセン(トルク感応LSD付)センターデフにするか
電制カップリングにするか検討が始まります。
74Xでオペルに提示したのと同様で、個人的には電制カップリング一択だったのですが
電子制御ユニットが作れない(というか作るとコストがかかる)というしょうも無い理由で
トルセン風(笑)センターデフの方に流れていきます。これについてはまた後で記事にしましょう。

②ハイパースポーツMT用は基本的にはNBR最速ごっこチームでやっているので任せたいところですが
なぜかYMG(ヨーモーメント・ジェネレーター)という左右トルクベクタリングの先行開発に携わります。
また、英国プロドライブ発の後輪増速&電制トルクカップリングというAWDも味見することになります。
これらについても別途紹介しましょう。

③廉価AT用のACT-4については、基本的にはまずまずの性能ながらもロバスト性に欠ける嫌いがあり
制御則などの全面見直しでこれらの改善を図ることになります。
ロバスト性に欠けるという問題点を指摘したのはボクなんですけどね。
これについては、次回の記事で詳しく書くことにしましょうかね。詳しくというほどでもないですが。

④高トルク対応のVTDは、個人的にはどうでも良かったし、
巷ではスバルを代表するAWDとしてもてはやされていたので、まぁほぼ何もしなかったですかね。
ただ、異径タイヤ判定の問題は最後まで残りましたけど。

ちなみに、その“異径タイヤ判定”というのは、タイヤ径が僅かに異なるタイヤを
1輪だけや前後違いで履いて連続高速走行をすると、駆動系にストレスがかかり、場合により発熱し、
最悪の場合は車両火災に繋がってしまうということに対し、それをどう判定し回避するかという問題です。

あまり大きな声では言えませんが、他社も含めてだいたい数件/年ほどその手のボヤ騒ぎがありますね。
これについては、電制カップリングが一番確実な対応策が取れます。
例えば、高速走行中に定期的に直結AWDにしたり2WDにしたりして、その差で異径判定したり、
それに基づいて危険と判断すれば、警告ランプとか点灯させるとともに2WDにしてしまえばいいのです。

これが、センターデフがあるとその分の内部循環トルクが悪さして異径判定の精度が悪くなったり、
あるいはセンターデフそのものが悪さして電制LSDを制御しても発熱を抑えられなかったりします。
まっ、センターテフ周辺の温度や油温などの検知精度を上げて
異径判定せずとも異常警告をする手もありますしけどね。

ただ、警告灯ついても気づかずにそのまま走り続けてしまうドライバーも多いことからすると
ただ、警告灯を点けるだけでは不十分な気がしますけどね。
車両火災は決して軽視すべきではありませんから。

一般の自動車ユーザーだけでなく、マニアというような人や評論家とかいうような人でも
このような異常検出とかその時の制御対応とかについてはほとんどの人は無頓着だと思うし、
それは当然のことで、それでいいとも言えますけど
実際に開発している技術者にとってはそういうことも大前提として必要不可欠なことなんですよね。

 

閑話休題。まっ、VTDについてはこれ以上はもういいですかね。

それと、軽自動車系については、いちおう電動アシスト4WDも試してみようって感じでした。
これは、当時の日産マーチなどが採用していた簡易4WDとも言えるもので、
FFベースでプロペラシャフトなどはなくて後輪側に電動モーターを装着して
発進時などのごく限られた場面だけ後輪もほんの少しだけ駆動してやるというタイプのものです。

いちおう、スバル・プレオをベースに試作車まで作ってみましたけど、軽のエンジンでは、
前輪が滑る→後輪モーター駆動→電気を食う→(エンジン側での)発電負荷増→
 エンジン出力を食われてパワーダウン→前輪の滑りが無くなりグリップする
という、4WD性能でトラクション向上より、単に前輪トラクションコントロール的な動きとなるだけで
まぁ冗談みたいな性能しかなかったので、早々に見切りをつけて終わりになりましたね(笑)

まっ、そもそも発進だけ4WDにすればいいってな発想はスバルでは相容れられませんしね。
スバルが4WDではなくAWDと呼ぶようになったのは、そのように単に発進だけではなく、
高速走行まで含めてすべての駆動力と拘束力(差回転)を制御して安定性・安心感を得る意図ですから。

 

というわけで、今回は簡単にここまでとして、上述のように次回は新ACT-4についての話とします。

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