文庫「天気と気象の特別授業」を読了
そもそも3名の著者が名を連ねていますけど、誰がどのパートを著しているのか明記されてません。
もっとも、各章のサブタイトルに「お天気キャスター~~」とか書かれている部分は
明らかにお天気キャスターの広瀬氏が著しているんでしょうけど。
ただ、その広瀬氏にしてもなんとなく見覚えがあるくらいでしかありませんが……(汗)
やはり、誰がどのパートを著しているのかを明確にしてないと責任の所在が曖昧になりますよね。
文章を書いて公に出すと言うのであれば、責任を持って書く覚悟が必要だと思います。
だから、ネットニュースなどで作者が明記されてない情報源は信用する気になりませんし。
と、まぁ些細な話ではありますし、本書の内容自体がさほど重大なものであったり、
あるいは他人を批判したりするものではないので、いいんですけど……
ただ、途中というか、肝心とも思える天気図の見方や季節による天気の移り変わりの説明の章では
冒頭に次のように書いてあるんですよね。
(以下引用)
この章では、この壮大な長編ドラマを「戦国時代劇」になぞらえて説明してみまし
た。一つひとつの気象学的な解説には正確性が欠けることろもありますが、皆さまに
関心を持っていただくひとつの試みとしてご容赦ください。いつもの日本の季節変化
が、こんなにもドラマチックだったとは! と体感していただきます。(引用終わり)
確かに、よく「冬将軍到来」とか言われたりもするので
そもそも天気をそのように例えるというのは日本の文化にはあったことなのでしょうが、
それでも正直言って、科学的に知りたいと思ってこの本を買ったのに
突然こんなのが出てきて、なんじゃこりゃっとなってしまいました。
それに、こちとら戦国時代とかにさしたる興味も知識もありませんから
余計に分かりづらくなっているだけで、損した気分になってしまいましたよ。
このパートはいったい誰が書いているのか。
まさか、サイエンスライターの肩書の今井氏じゃないよね。
となると、大学教授の筆保氏? まっ、誰でもいいけど。という感じですかね(笑)
それにしても、こういう科学的なことを、わけわからん非科学的な内容に例えて
一見なんとなく分かったような気にさせるような説明をするってのは、
よくない風潮だと思いますね。特に日本はこういう傾向が強いんではないでしょうか?
また、本書では巻頭にカラーでさまざまな雲の画像が紹介されています。
けれども、残念なことにどうしてそのような雲が出来るかの詳細な科学的な説明はありません。
ただ、あっ「この雲、綺麗」とか「この雲、すごい」とかだったら
今やネットサーフィンすればいらくでも出てきますけど、
(本書の画像ではQRコードが付いていて、スマホなどでその画像を楽しめるようになってます)
こちとら、そういう鑑賞や感傷に浸るためにこの本を買ったわけじゃないんですけどねぇ。
ちゃんと、科学的に説明をして欲しかったものです。
さてさて、とは言いつつも、まったく科学的に書かれている部分がないわけではありませんし
中にはボクも知らなかった、あるいは勘違いしていたなんとこともたくさん書いてあります。
少しだけそれらを紹介しておきましょう。
(以下引用、改行位置変更)
ちなみに雨粒はどんな形をしているかご存じですか?
イラストやキャラクターで出てくる雨粒は、しもぶくれの形でかわいらしく描かれ
ていますが、実はもっと横方向につぶれたお餅のような形です。
雨粒はもともと球形ですが、落ちるときに下から空気の抵抗を受けて、平べったく
変形するのです (引用終わり)
ありゃ、勘違いしていました。ボクも通称しずく型というか、
ダイキンエアコンのCMキャラクターの“ぴちょんくん”のイメージを持ってしまってました。
確かに、ちょっと考えれば簡単な物理法則でお餅型みたいになるのは当たり前ですね。
でも、普段はそういう部分にも科学的思考はしておらず、通説イメージだけ先行してしまいます。
もうひとつ、紹介しておきましょう。
(以下引用)
対流圏は地上からおよそ10~20kmの高さまでです。この対流圏では、高度ととも
に気温が下がっていきます。ほぼ全ての雲は対流圏の中で発生します。
ところが成層圏に入ると、高度とともに気温が上がります。これは、成層圏の上部
にあるオゾン層が、太陽の紫外線を吸収するときに熱を発するからです。成層圏はお
よそ10~50kmの高度までです。
そして、高度約50~80kmの中間圏になると、熱源となるオゾン層から離れるため、
また高度とともに気温が下がっていきます。そして、最上層の熱圏では再び高度とと
もに気温が上がります。これは太陽からの紫外線を受けて窒素原子や酸素原子が電離
していて、そのときに熱を発生させるからです。 (引用終わり)
これまた、まったく知りませんでした。成層圏に入るとむしろ急減に温度が下がり、
その先はもう絶対零度に向かってまっしぐらと思ってました(恥)
もっとも、こちらは単純な物理の話ではなくて
オゾンが紫外線で発熱するなど化学的知識も必要で
ボクはそのような知識を今まで持っていなかったということではありますけどね。
それから、異常気象について解説している章もあり、ここも面白かったです。
(以下引用)
報道は、こぞって近年の異常気象多発は「地球温暖化」が犯人だとまくしたてます。
しかし本当に、全て地球温暖化が悪いのでしょうか。 (引用終わり)
と、まずは科学者らしく批判的・客観的な視点でこの章は始まっています。
もちろん、この本では地球温暖化がどうとか、そのような議論には入っていきませんけどね。
そして、まず「異常気象」という定義から説明されています。
(以下引用)気象庁では、「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年
に1回程度で発生する現象」を異常気象と定義しています。(中略)
過去のデータを低い(少ない)値から高い(多い)値まで並べ(図24)、低いほう
から10年分の範囲を「低い」、真ん中10年分の範囲を「平年値」、高いほうから10年分
の範囲を「高い」とします。そして、並べた数値の下位10%に入る場合は「かなり低
い」、上位10%に入る場合は「かなり高い」と検証しているわけです。(引用終わり)
ここでも、単純に平均とかしているわけではなく統計学の基本にそって処理されているようですね。
つまり、30年のうち比較的普通(?)だった10年分のデータを用いて
それを平年値というわけです。決して、平均値ではありません。
なので、「平年並み」とか言われる時は、比較はこの平年値ということなのでしょう。
しかも、この平年値は10年ごとに更新されるのだそうです。
つまり、10年間は同じ平年値が使われているわけです。
それから、もうひとつ、「観測史上初」についても次のように書かれています。
(以下引用)
しかし、「観測史上初」となるのは、実はそうめずらしくはありません。気象庁に
伺ったところ、「年間50件くらいであればさほど多いうちには入らない」という回答
をいただいたことがあるのです。
この「観測史上初」という言葉が多発するのにはカラクリがあります。
まず、気象庁の定義する観測史上初とは、ある観測所で観測を開始してはじめて出
た観測値のことをいいます。(中略)
つまり、「約1300カ所×複数の観測項目」で、1日の観測値だけで膨大な量にな
るのです。その膨大な中で「初」の記録が出るのは決してめずらしくない、というこ
とです。 (引用終わり)
ということなので、「観測史上初」と聞いても
まったまにはそういう時もあるよね、くらいに捉えた方がいいってわけですな。
そんなわけで、ちょっと期待外れな部分もありましたけど、それなりに楽しめた一冊でした。
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