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文庫本「定本 日本マンガ事件史」を読了

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鉄人文庫の「定本 日本マンガ事件史」満月照子+桜井顔一・共著を読みました。

本書は「定本」となっていますけど、そもそも「定本」とは何ぞやというところです。
もちろん博識ある人なら「定本」が何かは知ってるのでしょうけど、ボクは知りませんでした(恥)
goo国語辞典によると以下のように書かれています。
 異本を比較・検討して誤りや脱落などを正し、その本の最初の姿に復元するように努めた書物。
 2 全集などの決定版。

そんな古典みたいな本ではなさそうだし、全集の決定版みたいに権威のある本とも思えませんが……
そう、もっと軽~い気持ちで買ってみた本なんですけどねぇ。

 

本書の「まえがき」では次のように書かれています。
                                (以下引用、改行位置変更)
 かつて横井福次郎という天才漫画家がいた。「漫画の神様」として知られる手塚治虫に多大な影響
を与えたと言われる人物だ。彼は若き手塚に、漫画に一番大切なのは「痛烈な皮肉」だと諭した。つ
まりは風刺やパロディということだろう。(中略)
 この本では、日本における、漫画にまつわるあらゆる騒動を「事件(トラブル)」と定義し、新聞、
雑誌、ネットなど、さまざまなメディアで報道されたものを、時系列に沿って並べることを試みた。
(中略)
 案の定、国による漫画そのものへの弾圧、市民団体による漫画表現に対する抗議といった類の事件
が中心を占めることになったわけだが、それ以外にも、漫画家自身が起こした刑事事件や訴訟事件、
死亡事件など、その時代時代における漫画史のエポックメイキングとなりそうな騒動は一通り網羅し
たつもりだ。                                (引用終わり)

結局、「まえがき」にもなにが定本なのかは書かれてませんし、最初の姿があったわけでもなく
しいていえば一通り網羅して全集みたいにしたということですかね。
みずから「決定版」というほどのものではないと思いますけど……

ただし、ボクは幼少の頃から漫画本はほとんど読まないで育ってきて
それは何も厳格な家庭だったから漫画排斥されていたというわけではなく
単にボク自身が興味がなかったのと、お小遣いで漫画本を買うのももったいないと思っていただけで
テレビアニメは結構観ていたので、アニメ化されたものならまぁ知ってるものも多いですかね。
それでも、漫画に関する事件となるとまったく無縁で、特に昔の話は知らないことだらけでした。

まっ事件そのものについてだけでなく幾つか紹介しておきましょう。

 

先ずは「赤本退治」なる言葉です。
                                (以下引用)
「子供の読物のうち特に漫画本は非常に俗悪ないわゆる赤漫画といわれるものばかり
が出版され、(中略)今度『漫画集団』で絵本漫画の浄化運動に乗り出し『面白くて
ためになる漫画』で今までの低俗な漫画を一掃しようと、近く出版社や教育関係者と
懇談会を開くことになった」。見ての通り、新聞紙上で報道されたマンガ表現規制だ。
「赤漫画」=赤本漫画とは、「低級な荒唐無稽を描き、誇張と称えて絵にならない符
号のごときものを並べ」、「安原稿、安インク、安直安価」で販売される漫画本を指す
(中略)           表紙はドギツイ赤色のものが多く、これらを一般書
籍と差別化させるため、「赤本」と名付けられた。        (引用終わり)

これは戦後直後の頃の話ではありますけど
ボクにとっては「赤本」といったら大学入試の大学別過去問題集ですから
まったく違う意味で「赤本」と言っていたんですね。
しかも、この赤本=低俗本というのは大正時代から呼ばれていたようですから歴史があるんですね。

 

次は「あしたのジョー」についての事件というか、事件に出てきた「あしたのジョー」です。

(以下引用)                             赤軍派
の若者たちによる「よど号ハイジャック事件」である。飛行機をハイジャックした若
者たちが出したこの謎の犯行声明はあまりにも有名だ。
 ――我々はあしたのジョーである。              (引用終わり)

へぇー、よど号ハイジャック事件は知ってますけどリアルタイムの記憶はないですし
そこで「あしたのジョー」が出てきたなんてまったく知りませんでした。
まっ意味不明ですし、それでハイジャックされても困ったもんですねぇ。

 

そして、この事件は「あしたのジョー」にも原作の高森朝雄=梶原一騎にも
作画のちばてつやにもなんの落ち度も問題もないのですが、
やはりここに挙げられている事件では政治的・宗教的・エロや差別発言などを理由に
連載打ち切りになったり廃刊になったりしたような事件が多くなっています。

あるいは著作権やスポンサー絡みのお金を巡る血みどろの争いなども非常に多いです。
若い頃は貧乏でもマンガが好きで必死で携わっていた人でも
ひとたび売れっ子になって「先生」と呼ばれるようになると途端に金にがめつくなるようですね。

まぁ訴訟事件で淡々と裁判で決着されているならまだいいですけど
中にはほんとうにヤバイ事件になっていることもあったようです。
                         (以下引用、改行位置変更)
 さて、一九八三年五月二五日の梶原一騎逮捕(153ページ参照)をきっかけに、
数々の彼の悪行がボロボロと白日の下にさらされたわけであるが、そのなかで「つの
だじろう詫び状事件」と同じくらいに漫画業界を震撼させたのが「アントニオ猪木監
禁事件」だった。(中略)             梶原は大阪のホテルに猪木を
呼び、猪木が指定された部屋へ行くと、そこに梶原と暴力団員がいて、猪木は暴力団
員にピストルをつきつけられて脅されたのだという。       (引用終わり)

梶原一騎といったら先の「あしたのジョー」だけでなく「巨人の星」「タイガーマスク」などの
原作者として有名ですが、人間としては相当に破天荒な人だったみたいですな。
その「つのだじろう詫び状事件」も単なる詫び状が書かせたというよりも
つのだじろうをホテルに軟禁状態にしていたようですし
そもそも、それらの発覚の発端となったのが酔って暴力事件を起こしたことなんだそうです。

まぁ、どんな確執があったのかはここには書きませんけど
アントニオ猪木とタイマン張ったのならまだいいけど、暴力団とピストル使ったのでは情けないですね。

 

「ドラえもん」のまぼろしの最終回の話も興味深いものがあります。
                         (以下引用、改行位置変更)
 藤子・F・不二雄の代表作「ドラえもん」には、ファンならずとも一度は聞いたこ
とがあるであろう同人誌での最終回が存在している。(中略)
 そもそもこの話は、一九九八年頃に名古屋工業大学の学生が、太陽光電池の研究を
ヒントにストーリーを考え、自作のサイト(のちに封鎖)に公開したところ、瞬く間
にチェーンメールで広まったのがきったけだ。          (引用終わり)

へぇー、ボクも名古屋工業大学=名工大の卒業生のひとりですけど後輩にそんな人がいたんですね。
名工大という一般的にはダサマジメなイメージがあるんですけど
そんなセンスのある人がいたとは少し意外な感じですかね。
まっここではその最終回ストーリーは書きませんけどね。

 

最後は「美味しんぼ」についても紹介しておきましょう。
                         (以下引用、改行位置変更)
 問題のシーンがあった回は『週刊ビッグコミックスピリッツ』二〇一四年二二・二
三合併号(四月二八日発売)に掲載された「福島の真実その22」である。
                               (引用終わり)

福島原発を訪れた主人公が鼻血が止まらなくなるという部分が問題視されたようです。
まぁこれだけではどのような状況でどこまで訪問したのか分からないし
放射線と鼻血ってなんだかバカげているような表現ではありますし
そもそも「美味しんぼ」というグルメとそのようなストーリーが必然ではないとも思いますが……

ただ、「美味しんぼ」ってまじめに読んだこともないのですけど
この本によると単なるグルメマンガにとどまらず社会問題などにも首を突っ込んで
時折各方面から批判されてトラブルとなっていたらしいですね。

そして、福島と美味しんぼということでは、この時の記事にあるように
長年お世話になったあのヒデ爺こと「深沢の高嶺蕎麦」が「美味しんぼ」に登場したんですよね。
それは、2013年の秋以前のことなので、先の鼻血の件より少し前のことではありますが。

その時のマンガにはおそらく福島を揶揄するような表現はなかったんだろうけど
なんにしてもちょっと残念なことになってしまいましたねぇ。

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