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単行本「雨の日には車をみがいて」五木寛之著を読了

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幻冬舎の「雨の日には車をみがいて」五木寛之著を読みました。

先日紹介した期せずして再読となった「異端の人間学」つながりで
珍しく五木寛之著の小説なんぞ読んだというわけではなく
carviewなどのWeb自動車情報サイトを見ていると広告で出てくるので
気になって本屋で探して買って読んでみたというわけです。

ハードカバー付のしっかりした本で定価1600円もするので少し躊躇したんですけどね(汗)
帯に書いてあるように「究極の恋愛小説」という部分にはあまり興味はありませんが
「さらば愛しき車たちよ」という点ではやはり惹かれるものがありますからね。

ただ、本書は今年の1月に第1刷発行となっていますが、最近書かれたものではなく
次のような経緯であることが巻末に書かれています。
本書は、一九八八年六月角川書店より刊行され、一九九〇年九月角川文庫、
 一九九八年五月集英社文庫に所収された作品の新装版です。
なので古本屋で探せば手頃な価格で文庫本が入手できるのかも知れないですね。

 

そして、本書では9台のクルマが9人の女性とともに登場しているのですが
それらはそれぞれ独立しているわけではなくて主人公である男性の
クルマ遍歴と恋愛遍歴という形でストーリーが進んで行きます。

ただ、それでも全体のストーリーはそれほど強く繋がっているわけでもないですし
オチがあるわけでも伏線回収というほどの展開にもなっていないので
それぞれのクルマと女性が1話づつの短編小説のようにも読める構成とも言えますかね。

登場するクルマは帯に書いてある9台で、この順番で登場していきます。
時代設定が1960年代後半から始まっていることからも
ボクが生まれた頃からですからボクのクルマライフよりもかなりクラシカルなクルマばかりです。
なので身近に感じられるのはシトロエン2CV(本書ではシトローエン2CV)くらいですかね。

 

そのシトロエン2CVは第5話で登場してくるのですが、こんな風に書かれています。
                               (以下引用)
 そもそもフランス人は自動車を道具として考える傾向の最も強い国民だが、2C
Vに関しては最初から農具かリアカーのように考えているらしい。あらゆる装飾を
排して実用一点張りの安価な車を作ったら、こうなった、というのが2CVである。
 その意味では、最も面白味のない車であるはずなのに、不思議なことにこれがな
んとも奇妙に愉快な車に仕上がったのだから、わからないものだ。(中略)
 技術的に非のうちどころのないドイツ車や、安全と耐久力をとことん追求した重
い北欧車に慣れた目には、2CVはまるで風が吹きぬけるように自由な車に感じら
れたのだった。                       (引用終わり)

まぁドイツ車(特にBMW)が非の打ちどころがないとか
北欧車(特にサーブ)が耐久性に優れるとかは個人的にはツッコミどころではありますが
それでもこの部分は2CVの存在感を端的に的確に表現していて納得しきってしまいますね。

 

ただ、著者はエンジニアでもなくまた自動車評論家でもないので細かい事を指摘するのは野暮ですが
それでも自動車好き(著者も小説の中の主人公も)なら単位などは正しく使って欲しいです。
第7話ではメルセデスベンツ300SEL6.3が登場するのですが……
                               (以下引用)
<6・3>についてあれこれ説明するのはよそう。この車について語るなら、ぼく
が最も感銘をうけた一つのデータをあげるだけで充分だと思う。それは、この車の
今では古風なメカニズムをもつV8エンジンが、なんと、51㎏/Mというとほうも
ないトルクを秘めていた点である。              (引用終わり)

エンジントルクを表すには今はNm(ニュートンメートル)を使いますが
旧いクルマですからkgf・m(キログラムフォース・メートル)でしょう。
それを口語でキログラムとかキロとか略してもまぁ文脈で分かればそれでいいんですが
それを「㎏/M」と書かれてしまうと“/”は割り算なので次元が違ってしまうし
“m”は通常メートルですが“M”は通常メガ=百万倍ですからもうわけがわからなくなっちゃいます。

ということをここに書くとやっぱり野暮ですかね(汗)

 

なお、本書のタイトルは第1話の次のようなくだりから来ているのだと思われます。
                               (以下引用)
「雨の日だからこそ新しい靴をはくのよ」
 と、搖子は自信たっぷりに微笑して言った。
「わたし、靴が雨に濡れるのをいやがってビニールのカバーをかけたりする人って、
許せないたちなの」
 こんどは誰も何も笑わなかった。皆はできるだけ錦原のほうを見ないように、そ
れでいて故意に彼から目をそらせているようにも見られまいと、それぞれがつとめ
ていた。その場の異様な緊張感にも気づかず、搖子は一瞬、ちょっと間をおいて続
けた。
「よくいるわよね。ほら、自慢の車を洗車したあとに雨に降られると舌打ちしたり
するようないやな男が。ああいうのは絶対に女に嫌われるタイプよ。車は雨の日に
こそみがくんだわ。ぴかぴかにみがいたボディに雨の滴が玉になって走るのって、
すごくセクシーだと思わない? 雨の日に車をみがくのをいやがる男なんて最低
ね」                            (引用終わり)

まぁボクはここ何年も晴れでも雨でもクルマを磨くなんてことはしてないのですが
それでも若かりし頃にはそれなりに定期的に洗車してワックスがけなんてしてました。
そのころはさすがにワックスがけ直後に雨に降られるのは避けてましたけど
とはいえこの搖子の言う「雨の滴が玉になって走るのって」好きというのはなんか分かりますね。
セクシーかどうかは微妙ですけどね(笑)

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コメント

大昔文庫で読んだはず。2CVの話はすっかり失念。洗車の話と腹の中にツインカム持っている云々は微かに記憶があります。
単位の話は確かに大笑い。編集者も文系だから仕方がなかったんですかね?

投稿: TOMO | 2022-04-20 22:21

>TOMOさん

おっとっくに読んでいたのですね、さすがです。
著者のクルマに対する独特の感性や表現は面白いものがありますね。
ただ、もうそんなことを語るような人は絶滅危惧種ではないかとも思えますけど……(笑)

投稿: JET | 2022-04-21 05:22

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