« サーモン号で太田市の「らーめん わをん」へ麺紀行 | トップページ | 和歌山ラーメンってどないよ?ってわけで前橋の「和歌山っ子」へ »

新書「異端の人間学」佐藤優×五木寛之を読了

B220331_1 
幻冬舎新書の「異端の人間学」佐藤優×五木寛之を読みました。
ボクも学生および現役サラリーマン時代にはしばしば“異端者”扱いされたので
それでこのタイトルに目がいったということもありますが、
帯には「ロシアの冷血」とか「ウクライナ侵攻」などと書かれていますから
タイムリーな内容(というのも不謹慎ですが)だなと思いよく確かめもせずに購入してしまいました。

けれど、この本は2015年8月に初版発刊なので喫緊のウクライナ情勢を踏まえて書かれてはなく
2014年2月からのウクライナ紛争を受けて書かれている内容となっています。
実際には今のロシアによるウクライナ侵攻もそのウクライナ紛争から続いているわけですけどね。

また、佐藤優と五木寛之という2人の著者となっていますが、実際には2人による対談となってます。
佐藤優についてはこちらの「公安調査庁」という本で知ってましたし
五木寛之についてもこちらの「孤独のすすめ」という本も読んでますし結構著名人でしょうから
あまり小説などを読まないボクでもまぁ知っている方ですし
(クルマ関連の小説として「メルセデスの伝説」五木寛之著は読んでましたね)
顔も見覚えがありますからまぁこの本も読んでみても損はないでしょう。

と、早速、読み始めたのですが……なんとなく既視感というか見覚えのあるフレーズが。。。
それもそのはず、2015年に買って読んでましたorz 二冊も買ってしまいましたorz
たぶんその時はロシアうんぬんでこの本を買ったのではなくて
タイトルから単純にボクもある意味他人から異端的に位置づけられることが多かったので
この本に興味を抱いたというだけだったのだと思い返してますが。

まぁでも、まっせっかくなのでもう一度読み直してみましたし
このブログでは紹介してませんでしたからこのタイミングで紹介することにします。

 

そもそも本書のタイトルは「異端の人間学」となっているものの題材は「ロシア」です。
ただプーチンを“異端の人間”としているわけでもロシア人を異端としているわけでもないですが。
で、どうしてロシアに焦点をあてて2人が対談しているかというと
佐藤優は今は自称・職業作家ですがモスクワの日本大使館に8年近くも勤務・滞在してきた人で
一方の五木寛之は戦後騒乱の経験からロシアを題材にした小説なども多く書いていることもあり
対談にいたったということのようです。

そして、その内容ですけど、真正面からロシア人の人間性などを直球で議論してはしません。
いろいろな切り口から半ば雑談的に対談が進められているような印象です。
その中からちょいちょいと面白いなと思った内容を少し紹介してみましょう。

                                 (以下引用)
五木 それからロシアで僕が感心したのは、賄賂の分配です。税関なんかでいろいろ賄
賂のやりとりがありますが、それを絶対独り占めしてはいけない。一度集計して、あと
で直接の窓口でない人間もひっくるめて分配する。だから賄賂の思想というか、賄賂の
カルチャーというか、そういうしっかりした伝統があるんですよ。  (引用終わり)

ボクはウクライナ紛争前の2013年のこの時にロシアに出張で行く機会がありました。
基本的に自動車の輸入・販売で儲けているロシア人相手の出張でしたから
少なくとも表向きはある程度はグローバルな資本主義的な感覚を持っている人ばかりなので
特に違和感を持つことなく普通に接することができる人たちという印象でしたけど
それでも交通違反などで賄賂的なところは垣間見ることがありましたね。

                                 (以下引用)
五木 平均寿命が短いし、自殺も多いでしょう。ウォッカを毎晩飲んでいるというのは
緩慢な自殺だから。
佐藤 それは間違いない。悩みがあったらウォッカを一本飲んで、その悩みが不安にな
ってもう一本飲んで……という具合ですから。
五木 ウォッカの語源は「ヴァダー」、つまり水でしょ。だからウォッカというのは、
「お水っこ」みたいな語感がします。(中略)
佐藤 (前略)        ロシア人は本格的に宴会に呼ばれたら、前日は昼夜の
食事を抜きますし、翌日は年休を取っていますから。
 宴会が始まると、一人二人ぐらいは気絶者が出て「今日はいい酒だった」ということ
になる。食事の量も半端じゃない。                (引用終わり)

ボクが出張中はさすがに相手も仕事だし日本人相手も心得ているでしょうからここまで酷くないですが
それでもやはりこれに近いような感じで毎晩宴会という状態になってましたね(笑)

 

この辺りまでならまぁ笑って済ませられるような内容でもありますが
次のような話になるとちょっと恐ろしいしおぞましくなります。
                                 (以下引用)
五木 これからはロシアが再び大きな存在になっていくと思いますね。いま、サントロ
ペとかニースとか南仏の海岸沿いに行くと、もうほとんどいいところの別荘はロシア人
が買ってますから。
佐藤 ベルギー、ロンドンも、高級住宅地はだいたいロシア人が持っています。言って
みれば、旧国有財産をすべて分捕ったわけですから、とんでもない大金持ちがたくさん
いるんです。
五木 そう。棚からぼたもちみたいな形で、山分けした。
佐藤 ただし、そういう棚ぼたレースに加わったロシア人五〇〇人の内の四九九人はこ
の世にもういない。だから、殺し合いをしながら分捕ってきたんです。
 私が見た印象では、友情もだいたい三億円で崩れました。こいつが死ぬと三億円が自
分に入るとなると、人を殺す。崩壊後のロシアは大混乱でしたから、殺しても捕まらな
い。警察官に一〇〇万円ぐらいつかませればいいわけだから。プーチンが権力を握るま
では、冗談でなく、簡単に殺し合いをしていました。        (引用終わり)

まじっすか。ですよね。
それならロシア国内でプーチン派が勢力を持つのも分かりますわな。
もちろんそれを肯定する気持ちはないですけど。。。

 

ウクライナについの部分も紹介しておきましょう。
                                 (以下引用)
五木 よくいわれるように、ウクライナの「クライ」には「辺境」という意味がありま
すね。しかし、ウクライナ人たちにとっては、辺境の国境があって、国境に近い内側と
いう内地の感覚だと思うんです。一方、ロシア人にとっては、端っことの感じがあるか
ら国の辺境という感覚があるんでしょう。(中略)
佐藤 いまの五木さんの話は、「ウクライナ」の前につける前置詞の問題に象徴的に表
れていますよ。おそらく五木さんがロシア語を習ったときは、「ナ・ウクライーネ」と、
ウクライナに関しては、前置詞の「ナ」をつけろと教わったはずです。この「ナ」とい
う前置詞がつくと、ロシアの一地域という語感になりますよね。でも最近は「ヴ・ウク
ライーネ」という方が強くなってきているんです。この「ヴ」という前置詞は、国の前
につけられるんですね。                     (引用終わり)

このようなちょっとしたニュアンスの違いからもロシアとウクライナとの確執も生じるんでしょうが
もっと本質的というか歴史的な経緯なども対談の中で出てきていて
昨今の状況の伏線にもなってきていることを理解することができますが
ここでそこまで踏み込んで紹介することはよしておきましょう。

 

なんにせよ、ロシアにもウクライナにもそれぞれ複雑な経緯や事情はあるんでしょうけど
それでも武力行使で戦争・人殺しは許される行為ではありませんよね。

|

« サーモン号で太田市の「らーめん わをん」へ麺紀行 | トップページ | 和歌山ラーメンってどないよ?ってわけで前橋の「和歌山っ子」へ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« サーモン号で太田市の「らーめん わをん」へ麺紀行 | トップページ | 和歌山ラーメンってどないよ?ってわけで前橋の「和歌山っ子」へ »