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ビスカスもトルセンもセンターデフLSDとして一長一短

前々回の記事で、4WDの前後トルク配分はステア特性にはほとんど影響せず
ただパワーオンで前輪か後輪かどちらが先に空転するかだけの問題に過ぎず
かつセンターデフにLSDがなければ空転しっぱなしになって駆動力はゼロになるので
どのみち前後トルク配分もなにもまったく意味をなさなくなると書きました。

では、センターデフにアウディなどのようにトルセンデフを用いるとどうなるでしょうか。
トルセンデフというのは商品名なのでトルク感応式デフと言った方がいいですかね。
そのトルク感応式デフというのは入力トルクに対して一定の割合でLSD効果があるものです。
つまり一定の割合まで前後トルク配分を移動させることができるとも言えます。

例えば、基本の前後トルク配分が50:50だとしても
67:33~33:67の範囲で前後トルク配分が変化することが出来るとかになります。
これはこの範囲内において前後トルク配分は不定なんだけどこの範囲外にはならないの意味です。
ちなみに、この時の67÷33≒2の値のことをトルク・バイアス・レシオ(TBR)と言い
一般的にトルク感応式LSDの効きの強さはこのTBRで表します。

ただし、センターデフに使う時は基本の前後トルク配分が50:50ではなく
60:40とか36:64とか様々なモノがありますし
(ちょうど2000年ごろから前後不等トルク配分のトルセン=トルセンBが出てきた)
駆動側と減速側でLSDの効きが違っていたり色々なパターンが出てきますが
ここではあまり複雑にしないように、まず上記の基本50:50のTBR=2で考えてみましょう。

 

前後トルク配分が67:33~33:67の範囲でトルク配分が変化するわけですが
アクティブ制御しているわけではないので前後輪のグリップ力に応じて変化するだけです。
つまり、極端な話、前輪が宙に浮いて空転したら前輪の駆動力は0になるので
結局は後輪の駆動力も0になってしまいLSD効果は発揮できません。

実際にはイニシャルトルクと言って入力トルクが0でも摩擦力が僅かにあるので
LSD効果が少しは残るようになっているのですが(ノーマルのデフにも僅かにそれはある)
それでも完全に空転してしまうような状況ではほとんどLSD効果は期待できません。

つまり、何が言いたいのかというと、悪路などの空転しやすい状況とか
ラリー競技などワザと空転させてドリフトコントロールするための4WDとしては
トルク感応式のセンターデフLSDはあまり有用ではないということです。
クロカン4×4でセンターデフにトルセンを使っても別途デフロックなどを付ければいいですし
現在の技術ならブレーキ制御で空転を制御することも出来ますが。

それでも、67:33~33:67の範囲でトルク配分が変化することが出来るのなら
例えば重量配分が60:40のクルマであれば加減速時や登降坂時の前後荷重移動も含めて
だいたいその範囲内に前後荷重配分が収まりますから前輪だけや後輪だけ空転しにくくなります。
ですから、ワザの空転させてドリフトコントロールしようとしない限りは
普通の乗用車の4WDとしては比較的安定していて扱いやすい4WDシステムになりうるわけです。

そして、トルクに応じてLSDが効くということは差回転では効かないわけですから
低速で旋回する時の前後輪の差回転で起こるタイト・コーナー・ブレーキ(タイトコ)には無縁です。

さらには、これが自動車メーカーにとっては非常に都合がいいわけですが
駆動系には最大でも67%までのトルクしか掛からないわけですから前回記事のように
駆動系の強度としてはあまり余裕を持たせなくても設計できるということになるわけです。

 

では、トルク感応式LSDでなく差回転感応式LSDであるビスカスLSDだとどうでしょうか。
前々回の記事でラリーマシンなどでワザと空転させてドリフトコントロールするには
前後の差回転をコントロール必要があるから差回転感応式のLSDは理にかなっていると書きました。
それはその通りなのですが、ビスカスLSDにはひとつ欠点があります。
いや本当はパテント料含めて価格が高いという欠点もあったのですがここではそれは置いておきます。

ビスカスの欠点はなんていっても「ハンプ現象」が発生するということです。
これは大きな差回転が続くと内部圧力が高くなりロック状態になるということです。
これは悪路でスタックしてしまったときなどはしばらく空転するとデフロック状態となり
トラクションが最大化して脱出できる可能性が高まるので良い特性でもあるのですし
ハンプしてもそれで差回転がなくなれば元に戻るのでビスカス自体が壊れるわけではないですが
デフロック状態になるということはつまり前後直結になるということですから
前後トルク配分は完全に不定となって-100:200とかにもなりかねないのです。

そうなると駆動系の強度は相当に余裕を持って設計しなければならなくなります。
ラリーマシンとかならもともとジャンプしたりしても大丈夫なように
駆動系の強度も余裕のある設計にするからまぁいいのですが市販車ではやっかいになります。

また、タイヤのパンクやTタイヤなど径の異なる状態で走行すると長時間に渡ってハンプが発生し
ビスカスそのものが過熱・発火したり他の駆動系の耐久性に悪影響を及ぼしかねないことになります。

FFベースの4WDならそれでも強度に余裕を持たせた設計はまだしやすいですけど
FRベースで改造したような4WDではそのような強度を持たせることが不可能な場合も多く
したがって前輪の基本トルクを低くしてLSDも付けないという4WDも多かったわけです。

 

また、センターデフLSDとしてのビスカスではなくトルク伝達クラッチ(カップリング)としてでも
具体的にはFFベースで後輪へのアウトプットの途中にビスカスカップリングを使うとか
RRやMRベースで前輪へのアウトプット途中にビスカスカップリングを使う4WDもありますが
これも前後輪差回転コントロールとしては有用で扱いやすい特性になりますが
それでもここでもハンプ現象はやっかいな問題となります。

ハンプしてしまえばこれまた直結4WDと同じですから駆動系強度も余裕が必要です。
FFベースの4WDで雪道の発進だけ後輪も駆動してくれればあとは安くて軽い方がいいという
いわゆる生活4WD(それでもちゃんとした4WDの方が安心だけどね)にとっては
それだけ後輪駆動系に余裕を持たせなくてはいけないというのは大きな負担です。

だから、そういう生活4WDを作るメーカーはハンプしないビスカスっぽいカップリングを開発したんです。
まっ、先述のビスカスが高いというのもあるしABSの制御への影響などもありますけどね。
ホンダなんかは端から発進時だけ最低限リアを駆動できれば良いというこの考えですし
トルプルビスカスなんて謳っていた日産もいつの間にかほとんどの4WD車は
この最低限のリア駆動力という考え方に行きついています。

これは別に「なんちゃって4WD」などとバカにしているのではなく
そういうコンセプトもありだし、それならそういう設計にするのは当然だというだけのことです。
それにはハンプしないビスカスっぽいのが必要不可欠だったということです。

 

オンデマンド式4WDのカップリングの話まで勢いでいってしまいましたが
センターデフLSDとしてはビスカスもトルセンも一長一短だけど駆動系強度が確保できるのであれば
ビスカスLSDの方がドリフトコントロール性も走破性も一枚上手であるという話でした。
次回は4WDに限らない話でもありますが左右デフ(フロントデフとリアデフ)の話でもしますかね。

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