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新書「ブレインテックの衝撃」を読了

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祥伝社新書の「ブレインテックの衝撃 ――脳×テクノロジーの最前線」小林雅一著を読みました。

ブレインテックはサブタイトル通りでブレインとテクノロジーの融合を示す造語です。
この本ではその中でもBMI=ブレイン・マシン・インターフェイスのテクノロジー
つまりコンピュータをはじめ各種マシンと私たちの脳と接続して
双方の間で直接情報をやり取りする技術について最新情報と将来展望などを紹介している本となります。

この本の「はじめに」では次のようなことが書かれています。

                                  (以下引用)
 中でもマスク氏らが数年前、米国に設立したニューラリンク社は、脳に半導体チップな
どからなる小型装置を埋め込むことで外部マシンとの接続を可能にするなど、かなり過激
な方式のBMIを開発している。このためには、脳にメスを入れる特殊な手術が必要にな
ることは言うまでもない。 (中略)                      こ
の動機について、ニューラリンクの最高経営責任者マスク氏は次のように語っている。
「私たちが日頃、自分の指でスマホに情報を入力するスピードはイライラする程に遅い」
(中略)
 マスク氏は以前から「AIが今のペースで進化を続ければ、いずれ我々人類は完全に取
り残されてしまうだろう」と危機感をしばしば口にしていた。(中略)
 私たちがコツコツと時間をかけて教室や実地で学ぶよりも、「いっそ私たちの脳をコン
ピュータやインターネットに直結させて、新しい職業に必要となる技能や知識を脳に直接
ダウンロードしてしまえ」というわけだ。              (引用終わり)

マスク氏とは電気自動車テスラをも展開しているイーロン・マスク氏のことです。
そして、別にマスク氏だけがBMI開発をしているわけではないですし
今のところは何らかの障害などで身体を動かせなくなった患者に対して医療目的として
BMI技術によって脳と身体、あるいは義足・義手などを繋いで動かす開発が進められています。

ちなみに、「脳にメスを入れる特殊な手術」とさらりと書いてありますが
マスク氏のニューラリンクでは頭蓋骨を開いて脳に3100本もの電極を
手術用ロボットによって埋め込むのだそうです。
ロボットで手術する理由は人間(医師)ではそんな細かい作業は時間がかかって出来ないからです。

いやー聞くだけでゾッとする内容ですねぇ。
しかも3100本の電極を埋め込んだところで1000億個ものニューロンがある人間の脳の
ほんの僅かな活動しかセンシングできないわけですから
少なくとも今のところは驚異的で衝撃的な技術ではないわけですけどねぇ。
まぁ医療用ということで最低限の機能に限ればそれでも有用なのかもしれませんが。

 

しかし、マスク氏の発言からすればいずれ健常者にもそれらが使われていく可能性は高く
そうなると様々な倫理的な問題、社会的な問題が生じるであろうと懸念されるわけです。
この辺りの構図は前回紹介の遺伝子編集などと同じようなものがあるとも思われます。
実際に本文中には次のような記述もあります。
                                  (以下引用)
 しかし、他方で、ニューラリンクには傍目から見て、どうにも怪しげなところが散見さ
れるなど、今一つ信用しきれない面もある。
 たとえばマカク猿ペイジャーの動物実験が公開される数日前、同社社長のマックス・ホ
ダク氏が自身のツイートで奇妙なコメントを発していた。
「我々がやる気になれば恐らくジュラシック・パークを作り出すことができるだろう。そ
れは遺伝的に正統な恐竜とは呼べないかもしれないが、恐らく15年程度の飼育とエンジニ
アリングによって超エキゾティックな新種動物を生み出すことができるはずだ」という。
                                 (引用終わり)

ここまでくると、BMIというよりもはや遺伝子編集そのものの話になってきます。
もしかしたらニューラリンクはそういう開発も秘密裡に進めているのかもしれないですね。

もっとも著者はニューラリンクについて「今一つ信用しきれない」とだけ書くにとどめていますが
ボクなんてイーロン・マスク氏のことはまるっきり何ひとつ信用できない人間ですから
当然ながらこのニューラリンク社だって何ひとつ信用はできませんわなぁ(笑)

また、著者はマスク氏のような人は倫理的・社会的な問題があったとしても
「それでも構わないから、やってしまおう」というスタンスであるとしつつも、
それは何ら後ろ指を指されるような姿勢ではないとも書いていて完全否定ではないようです。

でも、個人的には「それでも構わないから、やってしまおう」というスタンスは否定したいです。
本書はマスク氏非難のものではないわけですが、電気自動車のテスラだって
その自動運転技術(ではなく本当は単なる幼稚な運転支援技術でしかないのだが)でも
安全性や社会的コンセンサスをないがしろにして「やってしまおう」の姿勢が見え
それによって何人もの人命が失われているわけですからねぇ。

 

そして、本書の「おわりに」でも次のような記述がされています。
                                  (以下引用)
 2024年までに有人火星旅行の実現を目指すマスク氏は「最初のうちは恐らく沢山の
人が死ぬことになるだろう」と率直に認めている。が、どんな危険を冒してでも、どれ程
の大金を積むことになってでも、未知の宇宙に飛び出そうとする人たちが少なからずいる
ことを彼ら革新的な起業家は信じて疑わない。            (引用終わり)

ここでもマスク氏は沢山の人の命よりも自分が儲かること
あるいは自分の名を残すことを優先するというスタンスなのでしょう。

まっ、ボクは幾らお金があっても……実際にないですけど逆に幾ら大金をくれるとしても
宇宙なんかに研究者としてではなく単なる物見遊山で旅行してみたいなんて
これっぽっちも思いませんし、
それでも行ってみたいと思う大金持ちが道楽で行って事故に遭って死んでも
まぁ自業自得でお騒がせなやつだなとしか思わないのでいいんですけどね。

 

なお、繰り返しますが、本書はイーロン・マスク氏のバッシング本ではないし
それ以外のブレインテック、BMI技術について広範囲に書かれています。
ただ、ここでは全部紹介することも出来ませんのでこれだけの紹介にとどめておきます。

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