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左右デフLSDはビスカスかトルセンか?

前回記事で予告しましたので、今回はいちおうタイトルの話をすることにします。
ただ、これまでの一連の記事をきちんと読んで理解されてきた皆さんなら
もうだいた分かる話でしょうからおさらいをしつつさらっと簡単に済ませてしまいましょう。

センターデフについては前後トルク配分より前後回転差配分が重要と書きました。
一方、左右デフについては左右回転差配分より左右トルク配分(基本は50:50)が重要と書きました。
そして、センターデフLSDについてはトルク感応式(トルセンなど)も差回転感応式(ビスカスなど)も
一長一短ですが駆動系強度が確保できるのならドリフトコントロール性や悪路走破性という点では
差回転感応式の方がメリットが多いということも書きました。

ここから、左右デフLSDはトルク感応式の方がいいんじゃないと思った方、それは単純思考ですよ。
センターデフと左右デフに求められる特性は異なるのですが
LSD自体の特性はセンターデフに用いても左右デフに用いても同じですから
それらの組み合わせで考えていかなければいけません。
とは言え、結論的には、そして表層的にはトルク感応式も差回転感応式も一長一短となりますけどね。

これで終了ではあまりにそっけないので、もう少しだけ説明しましょう。

 

左右デフ用LSDとしても、悪路走破性として片輪が空転してしまう時の駆動力確保という意味では
トルク感応式はあまり役に立ちません。イニシャルトルクをかなり上げれば役に立ちますけど。
4WDでは前後のどちらかの左右輪が接地していれば空転するようなこともあまりないですが
それでも悪路では対角2輪浮上となる場面も多いのでトルク感応式LSDでは役立たずになります。
なので別途デフロックなどを設けないといけないですね。

センターデフ用LSDではドリフトコントロール性として差回転感応式LSDの方が有用ですが
左右デフでは左右の差回転でドリフトコントロールはしないのでそこは考えなくても良いです。
けれども、ドリフトコントロールするという時点でタイヤを空転させ続けているわけなので
トルク感応式LSDではLSDの拘束力が弱くなってしまい内輪だけ空転したりとなるため
やはりドリフトコントロール性はイマイチとなります。
これもイニシャルトルクをかなり上げれば問題なくなりますけど。

一方で、ビスカスにはハンプ現象があるので駆動系の強度設計は大変になるけど
トルク感応LSDではある一定以上のトルク分配はされないのでその点で楽になるのは
センターデフLSDでも左右LSDでも同じことになります。

 

そう言えば、左右デフ用LSDとしては競技用で機械式LSDと呼ばれるものも使われます。
ただこれ、勘違いしている人もいるみたいですけど原理的にはトルク感応式LSDですからね。
左右の回転差というか回転ズレでカムが作動して多板クラッチを押し当てるので
差回転感応式だという人がいますが回転ズレはきっかけだけで
差回転の大きさに応じてLSDの拘束力が大きくなるのではなく
あくまでも入力トルクに応じてLSDの拘束力が大きくなるのでトルク感応式LSDです。

ただし、機械式デフでは内部に多板クラッチを設けているのでLSDの効き=TBRが非常に大きいのと
皿バネを用いてあらかじめ多板クラッチを押し当てているのでそれがイニシャルトルクとなるし
競技用はそれを強化してるのでイニシャルトルクだけで片輪の空転を抑えられるということです。
その代り、ゆっくり交差点を曲がろうとしてもバキバキと異音を発したりするわけですが(汗)

 

で、そのバキバキとも関連するのですが、トルク感応式でも差回転感応式でも
左右LSDは左右の回転を同じにしようとする方向に拘束力が加わりますから
普通にコーナリングする時には直進に戻そうとする力が加わります。
それが前回も触れたように直進性を向上させる面にもなるけど
左右の路面状況が違う場合にはかえって直進性が乱れる原因にもなるわけです。

つまり強力なイニシャルトルクを付けたLSDではコーナリング初期の回頭性が悪化したり
左右の路面状況が違う場合、特に斑μ路などで直進性が乱れることになります。

けれども、このような特性はイニシャルトルクがなかったとしても
トルク感応式でも差回転感応式でも少なからず発生することになります。
それらも含めて競技車両でもなければそんなに強いイニシャルトルクは設定しないし
LSDの効き自体もそれほど強いものにはしない・できないということになります。
その意味ではビスカスLSDなどは普通のクルマでも使いやすい特性と言えます。

 

ところで、上記の下線を引いた部分ですけど、普通にゆっくりコーナリングする場合は
内輪より外輪が多く回転するので外輪より内輪にトルクが移動する=それが拘束力になるわけですが
限界近いコーナリングをするにつれて内輪の荷重が抜けてきて内輪が空転しやすくなってきます。
そこで内輪が空転し始めると外輪より内輪の方が多く回転するので内輪より外輪にトルクが移動します。

そうなると今度は車両を曲げよう(向きを変えよう)とする力(モーメント)になります。
差回転感応式LSDはそこまで大きく内輪が空転するのは時すでに遅しとなりますけど
トルク感応式LSDでは僅かな内輪空転でも車両を曲げようとする力は大きくなりますから
そこを上手く使えばトルクベクタリングのようにクルマはグイグイ曲がるようになります。

曲がるといってもタイヤのグリップが上がるわけでもコーナリング限界が上がるわけでもなく
ただヨーイング、つまり車両の向きが変わるだけのことなんですけどね。

それも、あくまでもドライバーが内輪空転し始めを上手く使えればの話ですし
ある意味ではドリフトするより繊細なコントロールが求められるとは思いますが。
それでも、それが出来るドライバーにとって、もしくはそういう走りをするドライバーにとっては
左右デフにはトルク感応式LSDの方が都合がよいということになります。

なので、基本的に駆動輪はしっかり接地させたうえで走らせることになるような
サーキットレースやジムカーナなどで速く走らせるにはトルク感応式LSDが好まれるわけです。

ただし、トルク感応式LSDで顕著なこの特性は内輪空転し始めで左右輪トルク差が反転するので
フロントデフのLSDに用いるとトルクステア同様に急激な舵力変化を伴いやすいく
あまり強力なLSDに出来なかったりフロントサスペンションやステアリング系の設計に苦労しますね。

 

ということで、結局は左右デフLSDとしては差回転感応式もトルク感応式も一長一短だし
機械式LSDのイニシャルトルクも一長一短だし
それを言ったら左右デフにLSDを付けることも一長一短だという身も蓋もない話でした(笑)

まっ、本当はセンターデフLSD、フロントデフLSD、リアデフLSDそれぞれの組み合わせや
それぞれの効きの調整やサスペンションやタイヤとのバランスなども含めて
車両トータルで考えていくことで好ましい特性にしていくことが肝要なのですけど
とりあえずここでは基本原理や基本の考え方ということでここまでとさせていただきます。

で、ここまで「スバル」カテゴリーで何回にも渡って4WDの基本的な話をしてきました。
なので特にスバルに限らない話が続いていたのですが、次回からは実際にボクがスバルにおいて
2000年代初頭にやっていたことなどを思い出しながら書いていきましょうかね。

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