« 左右デフLSDはビスカスかトルセンか? | トップページ | 庭木を伐採・抜根してもらってスッキリ »

新書「葬られた古代王朝」を読了

B220218_5 
宝島社新書の「葬られた古代王朝 高志国と継体天皇の謎」宮崎正弘著を読みました。
帯に書いてある「古代史『最大のミステリー』に挑む!」と言われても
日本古代史に限ったとしてもやはり「邪馬台国」「卑弥呼」が最大のミステリーだとは思いますが……

もちろん、ヤマト政権の成り立ちについてもこの高志国も絡んでいるのでしょうから
まったく「最大のミステリー」に関係してないわけでもないですけど
やはり帯らしい煽り表現が過ぎるかなという感じもしますね。

ただまぁ高志国=日本海沿岸の王朝については九州王権出雲王権などとともに
興味がありますからこの本を手に取ったというわけです。

本書の裏表紙カバーには次のように概要が紹介されています。
                                (以下引用、改行位置変更)
古代において、日本海沿岸は大陸との交易で最も進んだ地域だった。それが新潟から富山、石川にか
けての高志国だ。しかし記紀をはじめ、ほとんどの文献に高志国の名は記されていない。それはなぜ
なのか?著者はその謎の解明のために、高志=越の地に向かった。そこに残されていたのは夥しい遺
跡、そして多くの神社や伝統であった。まさにそこには、当時日本の最先端の文明があったのだ。
                                      (引用終わり)

内容的にはこれに加えて継体天皇の出自について書かれていることになります。
正直な感想としては、あまりきちんとした歴史研究として書かれているわけではないので
あまり説得力がないというか新たな説というよりどこかで聞いたような内容が多かったです。

というのも著者の略歴をみれば、著者は歴史研究学者でもなんでもないいわゆる作家で
得意分野も歴史より世界情勢や経済などについてのような人なのでした。
ちょっとこれには読み始めてから気付いてがっかりというところです。

 

それよりも、全体の構成にまとまりがなかったり歴史に関する話なのに
時系列が滅茶苦茶な展開になっていて縄文時代かと思いきや現代の話に飛んで
また古墳時代に戻ったかと思いきや江戸時代や戦後に飛んだりとしっちゃかめっちゃかです。
時間軸だけでなく場所についてもテーマについても流れがちゃんとしてないので
文章自体は難解ではないのですが読んで内容を理解するのに疲れてしまいます。

さらに、本題、つまり高志国=越とは無関係な著者の愚痴みたいな暴走箇所が出てくるので
そんなことどうでもええわい、と嫌悪感すら持ってしまいました。
例えば次のような部分です。

(以下引用)                             GHQに洗
脳され面妖な歴史教育を受けた国民の多くは男女同権、フェミニズムの論理、LGBT議
論の延長で「女性宮家」「愛子天皇」に賛成を表明している。左派系メディアの情報操作
の悪影響が大きい。この文脈から継体天皇即位への疑義が歴史学で改めて拡がった。
                                 (引用終わり)

高志国と左派系メディア批判がなんの繋がりがあるというのか。
ボクは左派系メディア擁護派でもなんでもないし、女性宮家と男女同権を並べても考えないけど
正直そんなことは高志国の話にとってはどうでもいいことです。

あるいは次のようなことも書いています。
                                  (以下引用)
 戦後の歴史論壇は、マルクス主義に毒された左翼的なインテリ層が破壊的言論を撒き散
らす場と化して、網野善彦や家永三郎が「活躍」した。騎馬民族説を本気で唱えて学界か
ら哄笑されたガクシャもいた。
 その後、多少の反省と客観的考察をする学者は増えたが、いずれもが戦前までの皇国史
観否定が「進歩的」と錯覚した人々であり、平泉澄、田中卓らは孤立を余儀なくされた。
長野朗、大川周明らの著作は発禁処分となった。           (引用終わり)

通説となっていることに対して論理的に理由を述べて批判したり自説を述べるのならいいけど
相手にされなかった人の名前を出してただ批判しても何の発展性もないし
そもそもこれまた高志国の話の展開にはなんの脈絡も繋がってないことです。
だいたい今の時代に“マルクス主義”とか“左翼インテリ層”なんて言われてもネェ。

 

こんな調子なのでほとんど内容も取るに足らないようなものでしたけど
唯一といってもいいほど興味深かったのは「プロローグ」に書かれた次のくだりです。
                                  (以下引用)
 なぜ日本海沿岸のほうが水上交通が発展したのかと言えば、海の干満の差である。砂嘴、
沙州は潮の干満さが低く、波浪が強い沿岸に形成され、特有の潟を形成する。石川県の河
北潟、島根県の宍道湖、新潟市は「潟」が平野になってからの命名だ。潮差が50センチ以
下が稚内から島根県までの日本海沿岸だから、丸木舟の改良型や中型の運搬船でも頻繁に
往来が可能だった。
 逆に干満さが激しい太平洋沿岸、とくに関東から九州にかけて潮差は1.2メートル。
対馬海流を目の前にする博多で平均1.6メートル。瀬戸内海も干満差が大きいので潮流
が速く、船団は満潮を待って出港する。               (引用終わり)

“干満さ”だったり“干満差”だったりするのは誤字なのか意図があるのか分かりませんが……
なんにしても単に大陸・半島に面しているというだけでなく干満差が大きく影響してたわけですね。
と、これについても著者が独自に研究した結果ではなく誰かの説を披露しただけみたいですが。

というわけで、ちょっと期待外れの一冊でした。

|

« 左右デフLSDはビスカスかトルセンか? | トップページ | 庭木を伐採・抜根してもらってスッキリ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 左右デフLSDはビスカスかトルセンか? | トップページ | 庭木を伐採・抜根してもらってスッキリ »