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平凡社「アイヌの物語世界」を読了

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平凡社ライブラリーの「[改訂版]アイヌの物語世界」中川裕著を読みました。

この平凡社ライブラリーというのは文庫版より少し大判のHL判の本となっています。
HL判ってのがなんだか分からないけど、もしかして Heibonsha Library のイニシャルってこと?
なんにせよ文庫本の高さの本棚に入るか入らないか微妙な高さなのでちょっと困るんだけど……

そして[改訂版]となっているように、本書の元は1997年に発行された本です。
アイヌの物語そのものは時代とともに古くなるわけではありませんが
本書はその体系や世界観などの研究成果の本ですから内容的に少し古いところもあるかもしれません。
ただ、そのあたりは「改訂版 あとがき」では2020年4月に著者が補足・追記しているので
そこも併せて読めば納得できるところとなっていると思います。

なお、帯にも書いてあるように著者はマンガ「ゴールデンカムイ」の監修者にもなっている方で
ボクはアニメの「ゴールデンカムイ」は観ていましたしこちらの本も読んでいます。

そして、その「改訂版 あとがき」には復刊の経緯について次のように書かれています。
                                    (以下引用)
 平凡社ライブラリーで『アイヌの物語世界』が刊行されたのが一九九七年。それから二〇年
以上の歳月が過ぎて、その間にアイヌ民族を取り巻く状況は大きく変化した。二〇一九年には
いわゆる「アイヌ新法」が成立し、アイヌが法律上初めて民族として明記されることになった。
二〇二〇年には日本で五番目の(数え方によって八番目の)国立博物館として、北海道白老町に
国立アイヌ民族博物館が開設され、それに呼応して道南バスやJR北海道でアイヌ語の車内放
送が行われるようになった。音楽や工芸などの分野でも若い世代を中心としたさまざまな人た
ちが、アイヌ文化をベースにした創作・パフォーマンス活動を展開しているし、アイヌを重要
キャラクターとする人気漫画の登場などにより、注目度がここ数年で一気に高まったといって
よい。その流れの中で、ながらく品切れ状態が続いていた本書も、久しぶりに復刊されること
になった。                              (引用終わり)

恥ずかしながら、アイヌ新法も国立アイヌ民族博物館についてもまったく知りませんでした。
機会があれば国立アイヌ民族博物館へは行ってみたいですけど、いつになるやら……

 

なお、本書ではもちろんアイヌの物語そのものも出てきますが
単にその物語を紹介するのではなくその背景にあるアイヌの文化や信仰について解説されていて
アイヌの物語をより理解するため、アイヌそのものをより理解するための内容となっています。
そのあたりことは本書の「はじめに」で次のように書かれています。
                                    (以下引用)
 私は今、千葉大学をはじめ、いくつかのサークルでアイヌ語を教えているが、その一番大き
な目的は、ひとりでも多くの人が、アイヌ語で語られた物語を聞いて理解できるようにすると
いうことである。口承文芸というものは文字で読んではその魅力が半減する。それが他の言語
に訳されていたのではさらに魅力は薄れる。(中略)
 ただしそれは、英米文学を味わうには翻訳より英語の原文で読んだ方がいいというのと同じ
「理想」である。私はアイヌ語屋であるから、アイヌ語を多くの人が理解できるようになって
欲しいと思うのはあたりまえなのだが、できるだけ多くの人にこうした世界があることを知っ
て欲しいと思う気持ちはそれ以上にある。外国文学を翻訳で読んだとしても、よい作品からは
もちろん深い感動が得られるように、アイヌの物語世界にも、文字化され和訳されてもなお、
人をひきつけてやまない魅力がある。それを知ってもらうために私はこの本を書くことにした。
                                   (引用終わり)

 

それで、本文の内容についてはここで言及しなくてもいいかなとも思ったのですが
一点だけ、アイヌでよく出てくる「カムイ」についてだけ触れておきましょう。
語感も似ているので日本語の“神”と同一概念だと思われがちですが注意が必要とのことです。
                                    (以下引用)
 かつてのアイヌにとって、この世界は二種類の精神的存在によって構成されていると考えら
れていた。ひとつはアイヌ=「人間」であり、もうひとつがカムイと呼ばれるものである。こ
のカムイという言葉はひとことで言ってしまえば、「人間にない力を持ったものすべて」を指
す言葉である。(中略)
 こうしたものがカムイと呼ばれるものである。つまり、一羽一羽のスズメ、一匹一匹のキツ
ネ、一本一本の木や草がそれぞれカムイなのである。(中略)
 生物ばかりでなく、火や雷などの自然現象もまたカムイであり、精神を持つものとして考え
られている。山や川、風、太陽などもカムイだし、天然痘のような病気や飢饉のような災いで
さえカムイと考えられている。                     (引用終わり)

なるほど、今ならさしずめコロナのカムイが暴れているということですか。
そして、アイヌとカムイは対等であり共存しているということです。
だからこそアイヌの社会では誰かが支配するとか階級があるということもないわけです。

それよりも、まずアイヌ=人間ということに今さらながらハッとさせられます。
特に明治維新以降になって日本人(和人)がアイヌを迫害し搾取するようになったので
アイヌ人vs和人という区分けが発生しただけのことで、
もともとは先住民族とか渡来者とか関係なしに人間はみんなアイヌだったわけですから。

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