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新書「サバイバルする皮膚」を読了

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河出出版の「サバイバルする皮膚 思考する臓器の7億年史」傳田光洋著を読みました。

タイトルからはまぁ皮膚に関する話だろうと、サブタイトルからはなんとなく進化の話だろうと
そのくらいは想像はできますけど、サバイバル?思考する臓器?って何って感じです。
さらに帯に書かれた文言を読んでもなんのこっちゃという感じですけど
アトピー性皮膚炎もちのボクとしては興味もあって読んでみました。

内容はもちろん人間の皮膚の話だし人間の進化の話でアトピー関連も出てくるのですが
なかなか壮大で深淵な内容となっていてかなり読みごたえのあるものとなっていました。
なお、著者は皮膚を専門とする研究者ですが、1960年生まれなのでボクとほぼ同世代ですね。

 

本書の「はじめに」の中では次のようなことが書かれていてここから話は始まっていきます。

(以下引用)             人間の皮膚は特異だ。体毛がほとんど無く、皮
膚の表面は環境に、外の世界に直接さらされている。人間が体毛を失ったのは120万年
ほど前だと考えられている。体毛を失った人間の祖先は、環境に、外の世界に直接、皮膚
を触れさせた。
 この特異な皮膚を持ったために、人間の脳も他の動物とは異なる進化を遂げた。体毛を
無くした頃から、脳が大きくなってきたのだ。その表皮と脳という二つの情報処理装置を
持つことによって、人間は、他の動物にはできない創造が可能になった、とぼくは考えて
いる。                              (引用終わり)

確かに普段はそれほど意識はしませんけど、体毛のない人間は特異ですね。
ボクはなんとなく人類が毛皮などの服をまとうようになったから体毛が無くなったと思ってましたが
どうもそうではなく体毛を失ったのはもっともっと昔のことだったわけです。
また、体毛を失ったことによって人類は体温の冷却が有利になって長時間走れるようになった
という話も聞いたことがあるので、アフリカにいた人類の祖先にはそれが有利だったのでしょう。

まぁそれはいいとしても、人類は2足歩行するようになって手が自由に使えるようになったから
そのために脳が大きく進化するようになったと理解していたのですが、
もちろん大きく重い脳を支えるために直立2足歩行が進化のために必要だったのだとしても
著者は体毛を失って皮膚感覚が発達したからこそその情報処理のために
人類は脳が大きくなったのだという説を唱えているのですから驚きです。

体毛を失ったのも、もちろんたまたま体毛の薄い人が生存に有利だったから進化したわけですが
それは皮膚感覚が鋭敏な人ほど様々な脅威から逃げ切れて生存できたからと推測しているのです。

まぁ、体毛もうろこも殻もないタコやイカも脳が大きく幾つもあるということからすると
皮膚感覚が脳を大きく進化させたというのも納得できない話ではないかもしれないですね。
もっともタコもイカも何本もの手足がありますけど……

 

そして、皮膚は単なる接触や温度などを感じるだけではなく
もっと高度な感覚器官であると同時に情報処理器官でもあるというのです。
                                  (以下引用)
 人間の皮膚は、人間が持つ感覚のすべて、眼や耳や鼻や舌で感じるもの、それ以上を感
知する能力がある。そして、そこで得られた情報を処理して脳に送っている可能性がある。
一方で、その情報を基に、脳が全身に命令するのと同じホルモンなどで、脳とは別に全身
に皮膚が指令を送っている可能性もある。さらには、表皮の指令が脳に届いていることも
ありそうだ。そう考えると、表皮への刺激は、人間の意識、無意識に作用しているようだ。
                                 (引用終わり)

ここでの意識は単に異性の手を握ってドキドキするとかのレベルの話ではなくて
人類だけが(というと語弊もあるが)持っている思考する意識という意味です。
ですから、7億年は少し大袈裟かもしれませんが少なくとも120万年以上の進化の話だし
単に皮膚だけの話ではなくそれが人類を人類たらしめた進化の過程だったという話なのでした。

 

本書の骨子としては上述のようなことですけどそれについてかなり詳しく書かれてますし
アトピーとか免疫とかについてもかなり言及されています。
というのも著者自身がアトピー性皮膚炎患者でもあるからのようです。

また、どうして人類はホモ・サピエンス・サピエンスだけが生き残り
人類の亜種(ネアンデルタール人など)は途絶えてしまったのかなどの話も出てきます。
ただ、それらについてはここでは紹介しませんので興味のある方はこの本を読んでください。

最後に本書の骨子とはまったく関係ないことですが面白い視点だと感じたことを紹介しておきます。
                                  (以下引用)
 やがて有名なカンブリア紀の大爆発、様々な動物が出現する時代が来た。でも、ぼくは、
それ以前からいろんな動物がいたと考えている。この時期に起きたことは、硬い殻を持つ
動物が出現したことだと思う。(中略)
  彼らは殻を持っていた。だから化石として残りやすかった。化石がいろいろ出てきた
ので、その時代、急にいろんな動物が現れたように思われている。   (引用終わり)

あぁ、そう言われると確かにそうかも、と納得しちゃいますかね。

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