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新書「呼吸の科学」を読了

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講談社・ブルーバックスの「呼吸の科学 いのちを支える驚きのメカニズム」石田浩司著を読みました。
著者は名古屋大学教授で運動生理学を専門として呼吸・運動を研究している方です。

単に肺でどう呼吸しているかというだけでなくどのように酸素を取り入れて血液で運んで
細胞レベルでその酸素をどうやりとりして活動に繋げているかなど詳しく書かれています。
正直なところあまりに専門的すぎて化学記号もばんばん出てきて
よく分からんなぁというところも多々ありました。

最終章にはある意味では本書のまとめとも言えるような次のようなことが書かれています。
                                     (以下引用)
 まず、ゆっくり呼吸をすることによって、不安などのマイナスの気分が解消に向かい、脳内神
経伝達物質(セロトニンやGABAなど)が分泌されることで、気分が安定してきます。さら
に、ストレスによる交感神経緊張が、副交感神経系優位になり、ストレスが解消し、リラクセー
ションが図れます。また、ゆっくり呼吸では、大脳の前頭前野が活性化し、実行機能や作業記憶
の正確性が増したり、ゆっくりと鼻で呼吸すると暗記力が上がるなど、認知機能が上がります。
 ヨガや腹式呼吸などの呼吸法では、神経症や精神疾患などの症状が緩和されます。さらには、自
律神経を介して免疫機能がよく働くようになり、感染症やがんの治療や予防に役立ちそうです。
 このように、呼吸は脳を介して、からだとこころの健康に深くかかわっており、呼吸法によっ
て心身ともに健康になることが可能だといえます。
 でも、ちょっと待ってください。実は、もう一つ大事な心身の健康法があるのです!
 それは「運動」をすることです。この本は「呼吸」についての本ですが、「運動と呼吸」を専
門にしている私の立場からいえば、健康のためにすべきことの第一選択肢は、「運動」なのです。
                                    (引用終わり)

まぁこれだけだと巷に流布していること健康法とかなんとかセラピーとかの言葉でしかないですが
本文ではこれらについて科学的・医学的に詳しく説明されているわけです。

 

ゆっくり呼吸が良いということでも、いきなり精神的な話ではなく次のように効率の話から始まります。
                                     (以下引用)
 吸った空気は、肺胞に届いて初めてガス交換に使われることになります。そのため、役に立た
ない空気もあります。吸い終わった時(吸気終末という言い方をします。これは呼気開始とほぼ
同じと考えていいでしょう)に気道にある空気です。この空気の量が「死腔量」と呼ばれます。
吸気が終わった時に気道にある空気は、次の呼気で外に吐き出されてしまい、肺胞で使われない
むだな空気になります。(中略)
 このことから、呼吸数が少ない、ゆっくりした呼吸のほうが効率がいいということがいえま
す。                                  (引用終わり)

ちょっと考えれば当たり前のことですけど、今までそんなこと考えてもみなかったですし
ということはそこまで真面目に呼吸のことなんて意識して考えてもみなかったということですね。

 

さて、まとめみたいに書いたのでもうほとんどネタバレになってしまってますけど
途中の内容はなかなか奥が深くて難しくて面白いものとなっています。
いくつか断片的に面白かったところを紹介しておきましょう。
まずはパルスオキシメーターの原理の話です。

(以下引用)                    ヘモグロビンは、酸素と結合している
と赤色を強く反射します。酸素と結合していないヘモグロビンは、光を吸収する性質がありま
す。そこで、赤外線を含む赤い光を当て、吸光度の違いから、総ヘモグロビンに対する酸素化へ
モグロビンの割合を測定できる装置が使われています。これが、新型コロナ禍で一般にも知られ
るようになった「パルスオキシメーター」です。このパルスオキシメーターは、1974年に日
本の青柳卓雄氏(日本光電工業株式会社)によって原理が紹介され、同時期にミノルタカメラ
(現コニカミノルタ)が製品化したものです。               (引用終わり)

あぁだから赤い光が出ていたわけですか。
しかも日本人が発明していたとなるとなんだか嬉しくなりますね。

 

酸素と結びつくというとヘモグロビンを連想しますがそれだけではないのだそうです。
                                     (以下引用)
 体内には、ヘモグロビンのほかに「ミオグロビン」という酸素貯蔵庫も存在します。ミオグロ
ビンは、骨格筋や心筋などの筋内に存在し、酸素と結合して代謝に必要な時まで酸素を貯蔵して
くれます。また、毛細血管からミトコンドリアまで酸素を運搬する働きもあるとされています。
(中略)                   この貯蔵+移動中の酸素があるので、組織の
ミトコンドリアのまわりには、常に酸素が一定以上(20~40mmHg)存在しているのです。
(中略)                        また、クジラやイルカなど水中に
長時間潜れる哺乳類には、ミオグロビンが豊富にあります。         (引用終わり)

なるほどイルカなどはそういう仕組みだったんですね。決して肺活量の差ではないんですね。
肺活量が多いだけなら浮力も大きくなって深く潜ることも困難になってしまいますから
そんなことちょっと考えればおかしいことに気づくはずなんですけど。
ただ、人間の海女さんやダイバーでもいくら訓練してもミオグロビンは増えないそうです。

 

次は脂肪燃焼についての話です。これは本当に目から鱗でした。
                            (以下引用、一部改行位置変更)
  脂肪は先ほどの解糖系ではエネルギー基質にはなりませんでした。そのため脂肪は有酸素系
でしかエネルギーを生成できません。これがダイエットで体脂肪を減少させるためには、有酸素
運動がいいといわれる所以なのです。(中略)
 グルコースの場合を化学式で表すと、以下のようになります。

  C₆H₁₂O₆+6O₂+36ADP+36Pi→6H₂O+6CO₂+36ATP

 この式だけ見ると、「糖質(C₆H₁₂O₆)を酸素(6O₂)で燃やしてエネルギーを得る」といえそ
うですが、実はこれが誤解を生む表現なのです。(中略)
 このように、水素がATP再合成の根源であり、酸素は戻ってきた水素イオンと電子が、マト
リクス内に溜まって濃度差が逆転しない(=反応が止まらない)よう、無害な水にするために使
われるにすぎません。(中略)
 ダイエットなどで「脂肪燃焼」という言葉をよく耳にしますが、実際、脂肪は酸素を使って直
接燃やされている(=脂肪と酸素が結びつく)わけではないのです。広義では酸化反応を燃焼と
いう場合もありますが、有酸素系エネルギー供給機構の主人公は、実は水素で、酸素はATP再
合成には直接かかわらず、脇役なのです。                 (引用終わり)


かなり端折ってしまったのでチンプンカンプンかもしれませんしボクも完全に理解してませんが
それでも脂肪が直接燃えているわけでも直接酸素と反応しているわけでもないってことですね。

 

その他にも、常圧酸素カプセルとか酸素発生器とか酸素水とかいうものは
まったく効果がないなどの話も笑えます。
もちろんへばる寸前の状態では酸素が足りなくなっているので有用ですが
そうでなければ健常者であれば酸素不足になるわけではないので意味がないそうです。
ただし、軽度の高圧高酸素カプセルはそれなりに効果がありそうなのだそうです。
ちょっ興味があるんですけどね、高圧高酸素カプセルは。。。

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