新書「阪神・四番の条件」掛布雅之著を読みました
本書では、データなども用いて阪神が優勝できない理由や
阪神の四番として大山悠輔選手や次期四番候補の佐藤輝明選手の分析などもしていますが
ここで細かいことを紹介するのはやめておきましょう。
また、四番の条件として具体的な数字なども挙げていますけどそれも割愛させていただきます。
けれども、数字ではなく次のようなことも書かれていて単なる野球解説本ではないと気づかされます。
(以下引用)
僕のときもそうだった。「今日は負けたけど、掛布のホームランが見られたからよか
ったね」と言って帰ったというファンの話を聞いたことがあるが、本当にうれしかった。
これを「わがままな野球」と言う人もいるが、僕の考えは違う。
たとえば0-10で負けていて、8回裏や9回裏にランナーなしで打席が回ってくる。
そこでホームランを狙うことは、お金を払って見にきてくれたファンに対しての、四番
としての責務である。決してわがままではない。
野球はチームスポーツだが、プロ野球だから許される「個の野球」というのもあると
思う。 (引用終わり)
掛布氏ならではの美学ですね。また、こんなことも書かれてます。
(以下引用)
思えば、僕は誰よりも球場に遅く行って、誰よりも早く球場を出た。これは僕なりの
ポリシーだ。四番打者が死に物狂いで練習している姿を若手に見せたら窮屈だ。
(引用終わり)
これなんかも、率先して練習してその背中を見せるんだという考えの選手もいるかもしれませんが
裏でどんなに努力していてもそれを表に出したくないというのはボクも通じるものを感じます。
まっボクは裏でも大して努力してなかったんですけどね(笑)
それでも、「大変だ」とか「忙しい」とか口癖のように言ってる人は尊敬できないですね。
そんな掛布氏ですから引退の決意にも美学があります。
(以下引用)
だが、1985年の日本一以降、ヒザが痛い、腰が痛いと言い訳するようなもうひと
りの自分が出てきた。ファンの期待を裏切るような野球しかできなくなった。そのとき、
もうプロ野球選手としてグラウンドに立つ資格はないと思った。
もっと長く野球をやれたのかもしれない。しかし、六番や七番で打席に立つことをよ
しとして野球を続けてはならない、と自分に言い聞かせてきた。若い選手に対してポジ
ションを空けてあげなきゃいけないという気持ちもあったが、これが「四番打者」のプ
ライドだ。僕は「四番・掛布」のまま、現役15年、33歳でユニフォームを脱ぐことを選
んだのだ。 (引用終わり)
何歳になっても現役選手であり続けようとする選手はそれはそれで素晴らしいのですけど
やっぱり早期リタイアしたボクには掛布氏のこのような美学に共感しますね。
というより掛布氏の早い現役引退に肯定的である故にボクもボクなりに考えて現役引退したんですが。
もっともボクは四番みたいなそんな影響力のある重責なポジションでもなんでもなかったですけどね。
また、本書では今の阪神の選手のことばかりでなく他球団の選手についても触れられているし
掛布氏と同世代の選手やそれ以前のレジェンドたちの記録や逸話なども紹介されていて楽しめます。
そんな中から最後にひとつ紹介しておきましょう。
(以下引用)
村山実さんのプロ契約金は、巨人が2000万円を提示したのに対し、阪神は500
万円だったという。それでも「東京の人間に負けたくない」と阪神を選んだ。
洗練されていた村山さんは、野球漫画『巨人の星』の星飛雄馬のライバル・花形満の
モデルになったそうだ。 (引用終わり)
まぁ東京に敵対心を持つ関西人の心象には冷ややかなボクですけど
村山氏の心意気はカッコいいですねぇ。
それよりも花形満のモデルだったというのは初耳で驚きました。
ボクが阪神ファンになったのはこの巨人の星がきっかけだったんだと思います。
巨人の星を見て巨人ファンになった子供の方が圧倒的に多かったんじゃないかと思いますが
天邪鬼なボクは花形満のカッコよさに憧れて阪神ファンになったのでしょう。
なにしろ花形満は小学生の頃からスポーツカーを乗り回していたのですから
クルマ好きな当時小学生だったボクにとっては憧れないわけはないです(笑)
そういえば、掛布氏も大のクルマ好きで知られていますね。
ちなみに、掛布氏の著した本は過去にもほぼ似たようなのを読んでいます。
宝島社新書の「4番打者論」掛布雅之著。2014年発行です。
また阪神の四番ということでは次の本も読んでいます。
角川oneテーマ21の「覚悟のすすめ」金本知憲著。2008年発行です。
さらに、阪神が優勝できない理由/優勝した理由ということなら次の2冊も読んでいます。
左:宝島社新書の「阪神タイガースの黄金時代が永遠に来ない理由」野村克也著、2014年発行。
右:新潮新書の「阪神タイガース」吉田義男著、2003年発行。
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