新書「5000日後の世界」を読了
(以下引用)
五千日後に到来する、新たな巨大プラットフォームの姿
「ビジョナリー(予見者)」。本書の著者、ケヴィン・ケリーは、しばしばこう称される。
ケヴィンは、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの四企
業)などの巨大テクノロジー企業による「勝者総取り」現象や、すべてが無料化するフリー
ミアム経済の到来など、テクノロジーによって引き起こされる数多くの変化を予測し、的中
させてきた。
インターネットが商用化されてから五千日(約十三年)後、ソーシャルメディアという新
たなプラットフォームがよちよち歩きを始めた。そして現在は、ソーシャルメディアの始ま
りからさらに五千日が経ったところだ。いま、インターネットとソーシャルメディアは二頭
の巨象として君臨し、われわれの暮らしに多大な変化をもたらしている。では、次の五千日
には、何が起きるのだろう? (引用終わり)
で、その五千日後の世界はこれこれですよ、と書いてしまうと完全にネタバレなので書きません。
といっても、表紙に「すべてがAIと接続された『ミラーワールド』が訪れる」と書いてあるので
簡単に言っちゃえばそれが答えになってしまっているわけですけどね。
まぁ予想は予想なので当たるかどうかではなくその思考過程を理解することが重要なんですよね。
ネタバレにならない程度の本筋から少し離れた部分で面白いと感じたことを紹介しておきましょう。
(以下引用) これまでは金持ちで繁栄している人ほど幸福だということになっていました
が、最近は冨があっても幸福さが増すということはなく、かえってそれが否定的に捉えられ
ています。
「ARやミラーワールドは人々をより幸福にしてくれるのか?」という質問に戻りましょ
う。正直に言えば、私にはわかりません。しかし思うに、人々は健康で自分の時間を自由に
使えれば、より幸せになったと感じるでしょう。他人に支配されずに自分の行動を自分で自
由に決められれば満足です。それこそテクノロジーがわれわれに与えてくれる、選択肢の多
様性です。 (引用終わり)
テクノロジーに与えてもらったわけではないですけど
ボクは早期リタイアによって正に自分の時間を自由に使えて自分の行動を自分で自由に決められて
結果的に幸福さは増しているわけですから納得できる内容です。
しかも、これ以上働いて冨や名誉が欲しいわけでなくむしろ個人的には否定的に捉えているわけで
その点でもそのように考えられる方が幸福さは増すというのは合点がいくところですね。
でも、一方で確かにそうなるだろうけどそうなって欲しくない、
その意味で納得しがたいと感じてしまうような次のようなことも書いてあります。
(以下引用) ですから最近流行
の「アンチ巨大化」は間違っており、もっと大きな計画やもっと大きな目標を立てるには大
組織がなくてはならないのです。
こうした大きな組織が人間の力で支えられ、環境的にも生態学的にも維持できる良いもの
にしなくてはなりません。巨大組織は、良くも悪くもなりえるのです。 (引用終わり)
ボクはもう子供の頃からアンチ巨人で阪神ファンでしたから間違っていると言われても……orz
プロ野球の話ではなかったですね
でも「大きいことはいいことだ♪」(若い人には分かりませんね)に対してアンチなのは変わりません。
もちろん森永チョコが嫌いなわけでも山本直純が嫌いなわけでもないんですが……
ですから、気持ち的にはやはりアンチ巨大化の立場でいたいと思ってますけど
もう直接巨大組織と対峙することも呑み込まれることもない立場なので気楽なもんですけどね(汗)
それから、日本について著者はとてもユニークな視点をもっているようで興味深いです。
まぁ日本人に向けた本ですからリップサービス的なところもあるのかもしれませんけど。
(以下引用)
日本についてはどうでしょうか。一番重要な点は、日本があらゆる面で他国と異なってい
るということです。というのも、ニューエコノミーが支配する世界では、すべてのイノベー
ションや冨の源泉は、他と違っているということなのです。他人と違う考え方やアイデアを
持っていなくてはなりません。日本人の考え方の違いは力です。
日本がどう他国と異なっているかというと、まず動かないものに対しても生命があるとい
う哲学を持ち、岩や石、土や木ばかりか、機械にも魂があるという感性を持っている点で
す。そのおかけで、ロボットに対しても他国と違う見方をしてきました。こうした世界の他
の国々と異なるテクノロジー観は、非常に強い文化の力になります。 (引用終わり)
日本は「空気」が重要視され「同調圧力」が強く他と違っていることが認められづらい社会ですが
一方で国または国民性として他国からみればガラパゴス状態とも揶揄されることもありながらも
それが日本の強みにもなっていくということのようです。
それに、確かにあらゆるものに神が宿るという感性は日本人固有のものですしね。
最後になりますが、次のようなことが書かれていることを紹介しておきましょう。
(以下引用)
ですから、スタートアップが可能な限りの資金を必要としていると考えるのは間違いで、
大金を与えることで彼らを破滅させてしまうこともありえるのです。彼らがそれを理解する
のには長い時間がかかるでしょう。しかし、死なない程度にお金があればいいんです。それ
は冗談めかして「ラーメン助走路」と呼ばれています。「昼間にラーメンを食べられるだけ
のお金があればいい」のであり、もちろんそれはインスタントラーメンでも可です。
(引用終わり)
アメリカ人の著者が“ラーメン”と言ったのか実は“ハンバーガー”じゃないのか謎ですが
(なお、著者は「テキサス式菜食主義」だそうなので哺乳類の肉は食べないそうですが)
ボクとしては昼間にラーメン食べられることはとても重要なことですけど
それだけのお金があれば十分とはなかなか言えないのでまだまだ煩悩の塊ってことですかねぇ(笑)
著者によれば、日本はスタートアップに対する資金は十分ほどあるということのようです。
であるなら、むしろ「死なない程度」をきちんと保障してあげることが大切というか
おそらくその保障も日本はけっこう厚いのではないかと思うんだけど
それでも失敗が許されないという傾向が強い社会なのでそこのところが一番の問題なんでしょうね。
その点についても著者は触れていますが、まぁこの辺りまでにとどめておきましょう。
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