« 前橋にある「ハワイアンカフェ YAMYAM」でサイミンに挑戦 | トップページ | 彩図社「東京電力『黒い賠償』の真実」を読了 »

20年ほど前のAWD技術の話、先ずは4WDの分類

2000年にSKC(スバル研究実験センター)に異動になって5年半ほどのSKC勤務中のことは
この記事までで概要は書きましたし、その頃の職制試験で玉砕したことも書きましたし
そのGM傘下にあった頃のボクがほとんど関与していないスバル車の雑誌評価なども書いてきましたが、
そろそろ、このSKCでの仕事を具体的に思い出しながら書いていきましょうかね。

とりあえず、AWD-CoEから引き継いだ形のAWDに関する話からはじめていきましょう。
なお、スバルでは今というか20世紀末ごろから“AWD”=All Wheel Drive と呼ぶようになりましたが
もともとレオーネで世界初(?)乗用四輪駆動車を出した時には“4WD”と呼んでいました。
なんで4WDからAWDなのかは、まぁどのメーカーも4WDと呼びだしたから差別化したかっただけで
それでも後付の意味としては単に走破性・トラクションだけを目指したものを4WDとして
スバルはそこに走行安定性や安全性・安心感のためでもありAWDと呼ぶことにしたということです。

だから、確かに初代スバル・レオーネでは雪道・悪路などのために4WDとして開発されたわけですし
それをそれまでのジープなどの4×4ではなく4WDと呼んだのもスバルであるわけですが、
その後4WDの持っている走行安定性や安全性・安心感にも気づきそれらを高めようとしてきたわけで
自らが4WDと名付けたものを今度はAWDと呼ぶようにしてもそれはスバルの勝手でしょ、
というわけですが、技術的な話としては一般的となっている“4WD”という名称を使いましょうかね。

で、4WDの歴史とかをここで述べる必要はないですけど以降の説明をしていく前に
4WDの分類について少し整理をしておくことにしたいと思います。
いろいろな分類のしかたはあるでしょうけどあくまでもボクの頭の中での分類ですけどね。。。

 

先ず、パートタイム4WD/フルタイム4WDの区分けがあります。
初代レオーネ4WDはおろか初代のレックス4WD、サンバー4WD、ジャスティ4WDも
パートタイム4WDから始まったのですが
雪道や悪路の走破性として必要な時だけ(FWDから)4WDに切り替えるというものですが
まぁ2000年当時としてもほぼ過去の4WDとなっていたので改めて論じる必要はないでしょう。

なお、後述するオンデマンド式4WDなどで瞬間的にあるいは特定の条件のみ2WD状態になるものは
パートタイム式には含めないことにしています。
逆に瞬間的にあるいは特定の条件のみに2WD状態になる場合があっても
ドライバーが選択して2WDに切り替えたりできないものはフルタイム4WDに含めることにしています。

 

そして、フルタイム4WDにはオンデマンド式/センターデフ式に分けられます。
オンデマンド式とは2WD(FWDまたはRWD)ベースにカップリング(トルク伝達装置)を使い
後輪または前輪へと必要に応じてトルクを伝えるとともに必要に応じて回転差を吸収するタイプです。

そのカップリングにはパッシブ(制御)式/アクティブ(制御)式に分けられます。
オンデマントのパッシブ式にはビスカスカップリング式やそれに類する油圧カップリングなどがあり
オンデマンドのアクティブ式にはスバルのアクティブトルクスプリット(ACT-4)をはじめとして
今や最も一般的な4WDシステムとなっているものになります。

オンデマンドの中にはスバル・ドミンゴに使ったOWC(ワンウェイクラッチ)を使ったものも含まれ
ラジコンカーでも使われるシンプルな技術ですがもう量産車で使われることはないでしょう。
また、後述のLSD(リミテッドスリップディファレンシャル)の効果も併せ持つような
スバル・レックスにも使われたツインビスコ(ビスカスカップリング)などもありましたし
醜悪のGMアズテックも同様にツインで油圧カップリングを用いた4WDシステムでしたけど
これらも黎明期ならではのもので生き残るような技術ではあまりませんでしたね。

蛇足ながら、レックス・ツインビスコが発売される前にボクは学生の頃に同じシステムを考案してました。
ただまぁスバルはその前から開発していたのですからボクは特許を取れなかったでしょうけどね(笑)

 

一方のフルタイム4WDのセンターデフ(ディファレンシャル)式では
前後トルク配分が50:50の前後等トルク配分とそれ以外の前後不等トルク配分とがあり
さらに前輪のトルク配分が大きい前輪偏重トルク配分とその逆に後輪偏重トルク配分がありますが
機構的にはどれもほとんど同じなので呼び名としてはあるけど分類としてはひとまず同じとします。
この前後トルク配分の話はまた別の機会にしようと思います。

なお、上記のオンデマンド式のカップリング部分をセンターデフと呼ぶメーカーもありますが
ディファレンシャル=差動装置は入力1に対して出力2に振り分けるモノを指しますから
入力1、出力1の間を制御するだけのカップリングをデフと呼ぶのはいささか無理があるでしょう。

センターデフ式ではオープンデフ/LSD(リミテッドスリップデフ)付に区分けされます。
ここでのLSDはセンターデフに対する差動制限をするものを指すのでリアデフのLSDなどとは別です。
そして、センターデフLSDにもオンデマンドのカップリングと同様に
パッシブ(制御)式/アクティブ(制御)式とに分かれます。

さらにパッシブ式LSDはビスカスLSDのようなスリップ感応式とトルセンなどのトルク感応式があり
ビスカスLSDなら初代スバル・レガシィのMT車以来フォレスターのMT車まで続いてきましたし
他車でも一時期は主流とも言えるシステムでしたけど今はもう廃れた感じになってますかね。
トルセンLSDにはさらに細かく種類がありますけどここでは一括りにしてしまいますが
アウディとかが使っていたシステムです。
今でもアルファロメオとかが使ってるのかな? よく知りませんけど……

センターデフ+アクティブ制御LSDということになるとスバルのVTDと呼ばれるのがそうですし
同じスバルでもWRXなどに使われるDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)も含まれます。
ただ、今ではこのような複雑な4WDシステムを採用するメーカーはあまり無くなってますかね。

なお、機械的なLSDという装置というか仕組みがなくてオープンデフなんだけど
ブレーキ(のアクティブ)制御にて車輪の空転などを抑えLSDのような効果を得る技術もありますが
ここではあくまでもオープンデフ(+ブレーキLSD)という分類としておきます。
これについてはセンターデフだけでなく前後デフについても同じ考えとしておきます。

 

そして、オンデマンド式/センターデフ式のいずれについても(というかパートタイムでも)
フロントデフとリアデフがあるのでそれぞれに様々なLSDが装着される場合がありますが
まぁそれは2WDでもLSDは装着されますから今回の4WDの分類では言及しないことにしましょう。

また、左右の駆動力差または回転数差を意図的に作って車両を曲げる力を生みだそうという
トルクベクタリンクやヨーモーメントジェネレーターなどもありますが
ここではLSDの進化系というか一形態という扱いに留めておくこととします。
さらには、前後輪の回転数差を意図的に作るような4WDもありますが
量産車の4WD技術としては異質なものと考えてますからこれまた別枠としておきます。

さらに、EVということを見据えるとカップリングもセンターデフもなくプロヘラシャフトもない
さらには前後デフもないような4輪インホイールモーターなどもありますし
そこまで一足飛びでなくともこの2000年当時ですら既に
日産マーチなどFWDベースで後輪を電気モーターだけで駆動する4WDも発売されてましたから
これら非機械的4WDというのも別枠として存在することになります。

まぁ、でも今後はさらにEV化(電動化)が加速していくでしょうから
これから話を展開していくつもりの20年ほど前までの4WD技術というのは
もう時代遅れの古臭い技術ということになってしまうでしょうね。
だからこそボクは技術漏えいの心配なく心置きなく記事が書けるとも言えますけど(笑)

 

と、ここまで整理すると以下のようになるでしょうか。

  0)パートタイム……初代レオーネ、サンバートラック

  1)フルタイム
  ┣━1-a)オンデマンド
  ┃ ┣━1-a-ア)パッシブ
  ┃ ┃ ┣━1-a-ア-i)スリップ感応……多くの軽乗用車など
  ┃ ┃ ┗━1-a-ア-ⅱ)OWC……スバル・ドミンゴ
  ┃ ┃
  ┃ ┗━1-a-イ)アクティブ……スバル小型車、ACT-4
  ┃
  ┗━1-b)センターデフ
    ┣━1-b-ア)3オープン(LSD無)……一時期のベンツ?
    ┃
    ┗━1-b-イ)LSD付
      ┣━1-b-イ-i)パッシブ
      ┃ ┣━1-b-イ-i-α)トルク感応……アウディ
      ┃ ┗━1-b-イ-i-β)スリップ感応……レガシィMT
      ┗━1-b-イ-ⅱ)アクティブ……SVX,WRX

  2)その他……電動、左右トルクベクタリング、前後回転差など

本日の記事は以上となります。次回は直結4WDのトルク配分(?)の話をしましょうかね。

|

« 前橋にある「ハワイアンカフェ YAMYAM」でサイミンに挑戦 | トップページ | 彩図社「東京電力『黒い賠償』の真実」を読了 »

コメント

言われてみれば昔は4x4でしたね
4x4から4WD、そしてAWD、なんですね
未だに使ってしまう四駆という言い方は4WDということに?

ちなみに自分のアルシオーネもパートタイム四駆
この記事的には古の方式なのですね
ただ、四駆にする機会って無くなりました
雪が滅多に降らなくなって、車高下げて悪路を走る機会なんてのもなく
FFで充分では?なんて思ったりして

投稿: 五条銀吾 | 2021-11-28 21:20

>五条銀吾さん

AWDとなっても社内とかの会話では「ゼンク(全駆)」ではなく「ヨンク」のままでしたね。
たぶん今も社員は「ヨンク」と呼んでるでしょう。

ボクは今までジャスティとブラットと2台のヨンクをマイカーにしましたが
どちらもパートタイム四駆でしたね。
ジャスティはほとんどいつも四駆にして走ってましたけど
逆にブラットはほぼFFで走ってましたね。
後輪のドラシャ外して乗ってた期間もかなり長かったし(笑)

投稿: JET | 2021-11-28 21:48

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 前橋にある「ハワイアンカフェ YAMYAM」でサイミンに挑戦 | トップページ | 彩図社「東京電力『黒い賠償』の真実」を読了 »