R2のデザインについて「driver」誌の記事も紹介
前回このスバル・カテゴリーではスバルR2のマガジンXの記事を紹介して
次回はその後に市場投入されたスバルR1のマガジンXの記事を紹介する予定でしたが、
このところマガジンXだけでなくその他の古い自動車雑誌などを整理している中で
スバルR2のデザイン(スタイリング)評についてなかなか面白い記事がみつかりましたので
このタイミングでそちららについても紹介しておこうと思います。
まぁちょっとしつこいという感じもしますが、そのくらいボクはこのR2の罪を重く受け止めてるんです。
もちろん、ユーザー側としてはデザインは個人の好き嫌いで他人に罪とか言われる筋合いはないですが
作り手側としては事業継続性も含めて個人の好き嫌いだけで論じられるわけではないですからね。
今回紹介するのは八重洲出版の「Driver(ドライバー)」2004年1月20日号で
数人の自動車評論家が2003年に発売された新型車をまとめて評論するというスタイルにて
主にデザイン評価に長けている自動車評論家・千葉匠氏が書いている部分になります。
2003年には4代目レガシィ(21Z)も発売されていたのですがそのデザインについてはスルーで
スバル車の新しい顔(スプレッドウイングスグリル)をつけ年末に発売されたR2について
かなりの行数をさいて書かれているし、かなり核心をついているなと思えるものなので
それなりに長文引用となり恐縮ですが紹介させていただきます。
(以下引用、改行位置変更)
その意味で、スバルの新しい顔はちょっと心配だ。いくら航空機をルーツとする会社だからといって、
翼のようなグリルにするのは疑問。60年代のアメリカ車が、テールフィンで航空機イメージを表現した
のと同じセンスをそこに感じる。テールフィンが一過性の流行で終わったという歴史の教訓を思えば、
けっしてカッコいい話ではないだろう。
ボクはこういう仕事を始めて20年になるが、実感として思うのは、今ほどデザインが重視される時代
は過去になかった、ということだ。技術指向の強いスバルも、竹中社長の新体制になってデザイン改革
に乗り出している。しかし、その第1弾のR2は、ボクの目にスバルらしいデザインとは映らない。
顔を除けばスタイリッシュと言えるR2だが、高いベルトラインは室内を狭く感じさせ、太いCピラー
が後方視界を遮る。機能性を犠牲にしてスタイリッシュに見せるのは、スバルの伝統に反するはず。航
空機はいつだって機能主義デザインだからだ。それでいてグリル形状で航空機イメージを表現しようと
する、このチグハグさ……。
デザイン重視の時代を迎え、各社それぞれ戦略的にデザインに取り組んでいる。これは絶対に、ユー
ザーにとってうれしい話だ。個性豊かなデザインが増えれば、それだけ選ぶ楽しさも拡大する。そんな
なかで、R2が従来のプレオとは違う、また他社の軽とも違う新たな選択肢になるのは確かだろう。
しかし……個人的に言えば、なにせビークロスに乗っていたぐらいだから、機能性よりもスタイリッ
シュでインパクトのあるデザインが大好き。しかしそれが日本のトレンドに合わないことを、4年前に
気づかされたからなぁ。
そこを頂点に今回の原稿を書いてきて、ボクはスバルの方向性に懸念を禁じえない。それがただの杞
憂なのかどうか、これからしっかり観察したいと思っている。 (引用終わり)
千葉氏としては個人的にはそこそこ好意的にもとらえているような節も垣間見えますし
逆にボクとしてはビークロスも含めてまったく肌に合わないデザインなので
そこは方向性が違うというか趣味趣向は全然真逆な気もしますが
そういう個人の趣味趣向とは切り離して冷静に見れば「日本のトレンドに合わない」と捉えていて
そこは結果的にその後の販売状況を見れば的中していたと言えるでしょう。
もっとも、その「日本のトレンドに合わない」=売れないっていう肌感覚は
何も自動車デザイン評論家の千葉氏でなくともボクだって最初にもう確信的に思ったし
多くの開発者も営業・販売の社員もそう思ったはずです。
なのに、造って・売っちゃったのがなんとも摩訶不思議な出来事だったんですけど。
というか、事前に一般人によるデザイン・クリニックをして好評だったというから驚くというか
正直なところそんなものやっても意味がないということなんですよね。
まぁ、デザイン・クリニックがまったく無意味かというとそんなこともないのですが
単に点数化して総合評点が幾つだから合格だとか、A,B,C案で評点高いのに決定とか
そういう決め方では見誤ってしまうということなんですけど。
それと、デザイン・クリニックのパネラー参加者をどのように選んだのかも疑問が残ります。
軽自動車なんて都心ではあまり売れずに郊外や地方の田舎がメインです。特にスバルの場合は。
なのに都内とかでクリニックを開催すれば必然的に都心周辺在住のパネラーに偏ります。
そもそも子育て世代で共働きなどの超多忙な方々や田舎の爺ちゃん婆ちゃんが
そんなクリニックのパネラーとして応募・登録なんてしてるわけないですから。
結局はクリニックをすることで、そのクリニックの参加者や集計結果に責任転嫁しちゃったんですな。
もうその時点で思考停止に陥ってしまっていたというべきでしょう。
ただ、そういう趣味趣向の話はいったん置いておくとしても
高いベルトラインによる室内の狭さ(閉塞感だけでなく実際に狭い)や視界の悪さなど
「機能性を犠牲にしてスタイリッシュに見せるのは、スバルの伝統に反するはず 」との指摘は重いです。
しかも、機能重視・安全重視の航空機イメージとのチグハグさの指摘は痛いです。
けれども、富士重工ってのはその昔にも同じような過ちをやってるんですよね。
スバル(初代)レオーネ、スバル(RR)レックスの時代です。
それを象徴するのが先日話題にしたレオーネ・グランダムですかね(笑)
この時期は富士重工以外でもアメリカ車の縮小版のようなスタイリングが流行りとなったのは確かですが
スバル1000(ff-1)やスバルR-2のようなシンプルで機能主義的なスタイリングへの反発で
レオーネやレックスは機能を犠牲にしても流行りのスタイリング重視という車造りをしてしまったのです。
(ff-1やR-2の頃からもだんだんとデコラティブになってその兆候はありましたけど)
まぁ、この時は突拍子もないデザイン重視ではなく流行りのデザイン重視であったのですが
それでも百瀬晋六さんの崇高な開発理念は失われてスバルのクルマ造りは後退してしまいました。
なので、ボクはこの初代レオーネ、レックスはスバル車としてはまったく認めていません。
(とはいえ、細部にはそれぞれの技術者の良心は継続して具現化されてるでしょうけど
それは今回紹介のR2にも言えることかもしれませんしね)
というわけで、初代レオーネ、レックス時代がスバル車開発の第一の暗黒時代だとするなら
今回紹介のR2が象徴する2000年代初頭はスバル車開発の第二の暗黒時代とも言えるでしょう。
そしてそれがスバルの軽自動車撤退の決定打というか大失投になったと言えるでしょう。
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コメント
R2が、「それでいてグリル形状で航空機イメージを表現しようとする」、へーそうだったのか、とWikiで画像を見てみたけど、何を表現したのがさっぱり判りませんでしたw
ちなみに、4ストレックス360ccとレオーネエステートバンを乗り継いで、どっちも思い出深いですが、まあダメな子がカワイイと言う系統でしたね。
投稿: ゆのじ | 2021-10-31 20:23
>ゆのじさん
あのスプレッドウイングスグリルは航空機イメージだと公言されてましたし
実際に社内でも航空機イメージでスバルの顔を作ろうとやってきたようです。
自動車部門と航空部門ではほとんど交流のない会社なのにねぇ(笑)
初代レオーネ、レックスをスバルらしい車とは認めないと書いたのは
あくまでも作り手目線での話であってユーザーサイドとしてはそれもこれもスバル車なのは理解してますから悪く思わないでくださいね。
投稿: JET | 2021-11-01 06:12