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新書「戦後民主主義」を読了

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中公新書の「戦後民主主義 現代日本を創った思想と文化」山本昭宏著を読みました。

戦後民主主義ってまぁ日本の戦後の民主主義だろうけど「はじめに」で次のように書いてあります。
                                   (以下引用)
 戦後民主主義とは、日本国憲法に基づいた主権在民による民主主義、戦争放棄による平和
主義、法の下の平等を徹底しようとした思想である。それは帝国憲法下の天皇主権、全体主
義、軍国主義といった「戦前」への強い批判と反省のうえにあった。そのため個人の政治参
加の権利を重視した民主主義、第九条が規定した戦争放棄を人類の普遍的な理念として推進
しようとする。
 そこから戦後民主主義は、基本的人権の尊重、思想の自由、集会・結社・言論の自由など
を強く擁護し、国家に対してその拡充を求めた。            (引用終わり)

ウィキペディアにも「戦後民主主義」としての項目があるので
これでひとつの独立したワードなのであり
ある程度は決まった概念のある言葉であり思想であるということなのでしょう。
ただ、著者は同じ「はじめに」の中で次のようにも書いています。
                            (以下引用、改行位置変更)
 本書では、戦後民主主義という概念を固定的なものとしては扱わず、社会の変化に応じて
その内実を変化させてきた動的なものとして捉えながら、戦後史総体を捉え直していく。戦
後民主主義を「虚妄」や「幻想」として片づけることは簡単だが、「理想」がどれくらい定
着し、現実化したのか(あるいは現実化しなかったのか)という検証を抜きにして、「幻想」
だと決めつけるのはあまりに乱暴だろう。
 つまり、本書は、戦後七〇年を超えた時空間のなかで戦後民主主義をめぐる人びとの営為
を、擁護派・否定派をともに見据えて理解しようとする試みである。その際には、制度改革
や社会運動だけでなく、政治エリートや知識人・文化人の言説、さらには当時の映画や小説
など、広く親しまれた作品にも注目する。(中略)
 現代日本はいったいどこから来て、どこに向かおうとしているのか。それを知るためには、
戦後民主主義の検証作業は欠かせない。戦後民主主義と総称される思想や態度は、戦後社会
のなかで、どのように現れ、いかに人びとに受け止められてきたのだろうか。それが本書の
問いである。                            (引用終わり)

あはん、なんとなく分かってきましたかね、この本のスタンスが。



といっても、内容はそこそこ難しいし、政治思想にもつながるのであまりここでは深入りしませんが
安部元首相が口走った「戦後レジームからの脱却」について分かりやすい解釈がされてまししたので
それについて軽く紹介しておきましょう。
                            (以下引用、改行位置変更)
安部によると、戦後レジームとは、「憲法を頂点とした、行政システム、教育、経済、雇用、
国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組み」である。
 かつて戦後民主主義と呼ばれたものと大きな違いはない。戦後民主主義という言葉を使い、
そこからの脱却をアピールすれば、「民主主義」や戦後の社会運動の蓄積を否定するものと
受け取られかねない。戦後民主主義を戦後レジームと言い換える戦略は、一定程度成功した
と言える。戦後民主主義という言葉は過去のものになりつつあった。   (引用終わり)


なるほど、「戦後レジーム」という言葉を聞いた時「なにそれ?」としか思わなかったけど
それは「戦後民主主義」を言い換えつつネガティブな意見が出ないようにしたわけですか。
もっとも、この本を読むまで「戦後民主主義」という言葉もちゃんと理解できてなかったので
単なる言い換えだと知っても言い換えている安部元首相の腹の中まで察しれなかったでしょうけど(汗)

 

で、本書では著者が戦後民主主義をどう考えてるのか、肯定派なのか否定派なのか……
その辺は中立的な立場で様々な人の意見を紹介しつつ書かれているわけですが
「終章」の終わり部分では次のように締めくくられています。
                                   (以下引用)
 筆者は戦後民主主義の精神が、いまほど求められている時代はないのではないかと考えて
いる。戦後民主主義を、たんに改憲への賛否の問題だけに限定するのは得策ではない。戦後
民主主義は、民主主義が「統治」の手段ではなく、「参加」を通じた「自治」の手段である
ことも教えている。選挙以外の場での政治的意思表示から、コミュニティや集団に関わって
より良い運営を模索する粘り強い社会的実践まで、生活の至るところに民主主義があるとい
う感覚が、戦後民主主義の根幹にある。
 戦争体験が遠い過去になった日本社会は、戦後民主主義の何を継承すべきなのか、あるい
は何を継承すべきでないのか。戦後民主主義のどの部分が潰えたのか、どの部分が残ってい
るのか。本書がそれを吟味するために一助になれば幸いである。     (引用終わり)

あぁそういう考え方ですか。
ただ、「生活の至るところに民主主義あるという感覚」は今やほとんど忘れ去られているようで
それは選挙投票率の低さからしても特に若い世代ほど顕著になっている感じがします。
だからこそ、著者は「戦後民主主義の精神が、いまほど求められている時代はない」と言うのだが
それは著者の思いであっても多くの日本国民にはその実感はないんじゃないですかねぇ。

戦後民主主義に限らず民主主義について考えることもほとんどないかも知れないです。
かくいうボクはそのひとりであるとも言えますしねぇ。

 

それでも、明日10月31日は第49回衆議院議員総選挙ですから
単に今誰に(どの党に)投票するか、誰が当選したかという次元とは別に
民主主義という観点で将来的にどうなのかという視点でも選挙に臨むことにしますかね。

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