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44年前のスバルの小冊子「0次安全の思想」を読み返してみた

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1977年に作られたスバルの販促用小冊子が未だに手元にあります。
富士重工で働いていた時に何かの拍子に手に入れたとかオークションなどで入手したとかではなく
おそらく当時にスバル・ディーラーで働いてた父親が家に持ち帰ってきたものを貰ったのでしょう。
それを今まで持っているわけですから物持ちがいいというわけですな(笑)

それにしても、カタログでもなくこのような小冊子、といってもA4版で20ページほどあるものを
富士重工がこの時期に作っていたというのはどういう意図があったのでしょうかね。
定期的に発行していたんだろうか。。。

冒頭に以下のように書かれていてこの冊子が作られた経緯も少しわかります。
                            (以下引用、改行位置変更)
この小冊子は、月刊自動車専門誌「カーグラフィック」1976年5月号から1977年5月号に掲
された、スバルレオーネのシリーズ広告「スバルFF方式の話」をまとめたものです。

13回の連載をまとめるに当って、新たにタイトルを「0次安全の思想」としました。それは、
この“生まれながらに、だれが運転しても安全な車”という、0次安全な思想こそ、スバル
FF方式の発想の原点であり、スバルの今後とも変わることのない、車づくりの根っこの思
でもあるからです。                        (引用終わり)

なるほど、広告として作ったのでせっかくだからまとめて冊子にしたということですね。
そして、当時のスバルは初代レオーネの頃であり、まだ世の中にFF車は少数派であったから
FFの話を中心にレオーネの宣伝をしようということだったわけでしょう。

それでもタイトルを「0次安全の思想」に変更したというのはいかにもスバルらしいところと感じます。
まだまだ当時は“安全”がクルマのウリになるような時代ではなかったですし
ましてそこに0次安全とか1次安全とか2次安全とかそんな概念も一般にはなかった時代ですから。
まぁ、飛行機屋の発想というかその点も宣伝にしたいという部分もあったのでしょうけどね。

いずにしても、FFだから良いんだ、他社との差別化なんだではなくて
0次安全の思想からあってそのためにFFを選んだという理論展開は真っ当だと思います。
この記事でも触れたようにレイアウトやメカニズムでもってそのクルマを決めつけるのは嫌いで
それによってどんな機能・性能がもたらされたのか
逆に言えばどんな設計思想・意図でそのようなレイアウトやメカニズムを採用したのかが重要なわけです。

その0次安全については巻末に「FF余話」として次のように解説されています。
おそらくこの部分はこの小冊子のために追記された部分なのだと思います。
                             (以下引用、改行位置変更)
運転がやさしい車ということは、とりも直さず、その車が安全だということができる。運転す
ることが楽しい車、快適で疲れない車、といったこともこの根本的な安全につながるはずだ。
「1次安全」(アクティブセイフティ)とか「2次安全」(パッシブセイフティ)というのは、
何らかの事故を想定して、それにそなえるための安全対策だ。
いわば、できあがっている車にあとから追加されたものだ。その点でスバルFF方式は根本的
に異なる。スバルはまず「だれが運転しても安全な車」をつくることが先決だと考えているの
だ。技術者のやるべきことは、豪華な安全装置をつくることではなく、まず、運転を誤った場
合にも安全装置に頼る前に、その誤りをすくってやれる、そういう車をつくることだと考えて
いるのだ。「何ごとかにそなえる安全対策」という2次的なものではなく「生まれながらに安
全な車」つまり「0次安全」(ベーシックセイフティ)という思想が、スバルFF方式・レオー
ネの基本的な設計ポリシーなのだ。それは、フールプルーフという飛行機流の安全思想が、ス
バルの車づくりに与えた最も貴重な教えのひとつでもある。        (引用終わり)

もっとも、スバル1000からレオーネの時代になって視界や操作系などを含めて
0次安全の思想はかなり後退してしまったとボクは思っているし
実際に百瀬さんもレオーネの時代には開発から干されてしまっていたようですから
その点では説得力はやや弱いかもしれないですけどねぇ(汗)

 

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なお、この冊子の中ではFFについての歴史や技術的な解説もさることながら
シトロエン2CVやアルファスッドなども登場するシャレの利いたイラストも載せされていて
読み応えのあるものになってます。

 

面白いのは初代レオーネの時代ですからエステートバンにもセダンにも4WDが発売されてますが
それでも4WD推しでもAWD推しでもなくここはFF推しなわけで
そのFF推しなのは0次安全の思想によるものだというのだから説得力のある話です。

4WDについては次のようなところで少しだけ触れています。
                             (以下引用、改行位置変更)
FF車には、例えばルノー16に“7変化”のリアシートがあるように、レオーネに4輪駆動
やエステートバンなどの豊富な車種が揃っているように、独特の魅力がある。しかしいう
でもなく、それはFFの魅力のほんの一部分でしかない。         
(引用終わり)

あはは、エステートバンも四駆もFFの派生の魅力のでしかないと。
この数十年後にはツーリングワゴンのスバルとかAWDのスバルって言い出したんですけどね(笑)
ただ、それでも大もとは0次安全の思想であるということならワゴンはさておいても
AWDだってその延長線上にあるものと言えなくはないですね。

そう、今でもスバルは「安心と愉しさ」を掲げてその中で0次安全思想も語られていて
その文脈の中から(シンメトリカル)AWDも語られるようになっているので
44年前のこの冊子の内容もあながち見当違いというわけでもなく
むしろ今でも十分通用するスバルのぶれない思想を表していたと考えられなくもないでしょう。

 

ところが20数年前のGMグループ時代のスバルはこの0次安全思想はかなり後退してしまってました。
スバル開発理念」が等閑視されてしまったようにこのような安全思想も見捨てられそうだったのです。
もちろん衝突安全に関わっていた技術者やアイサイト(ADA)を開発していた技術者は
安全な車、安全な車の技術を真剣に開発していたのは確かなことですが
0次安全というものはすべての技術者がその意識をもって取り組まないと実現できないものです。

でもその頃のスバルは「プレミアムブランドを目指そう」などといって安全性よりも
まずは豪華そうに見える、あるいは差別化を図れる装飾や装備に目を向けていったのです。
AWD-CoEという部署が出来てもGM向けのAWD研究開発とは別に
スバルとしては高級に見え差別化できる新しいAWDが欲しいというトップの要望であり
そこには0次安全思想としてのAWDという発想
さらに言えばその元となった0次安全思想としてのFFという発想は顧みられなかったのです。

まぁボクはその状況を苦々しく感じていたしだから当時は本当にあちこちで対立したし
それもあって半ば干されていたりもしたんですけどね。
ということでそろそろその頃のことも次回以降に書いていきますかねぇ。

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