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水平対向もシンメトリカルAWDも理想ではないけど……

このスバル・カテゴリーの一連の記事では前回まで
軽トラの理想は(富士重工製サンバー採用の)RR,四独サス、4気筒エンジンではないという話や
軽乗用車にとっても4気筒エンジンや四独サスが理想でもないという話を長々と展開してきましたが
その流れでいうなら次は現在までのスバルの小型車(ここでは普通自動車含む登録車)の特徴である
水平対向(ボクサー)エンジンおよびその縦置きエンジンも含めたシンメトリカルAWDについても
それが小型乗用車にとって理想なのかどうかも話をするべきかもしれません。

個人的な考えでは、水平対向エンジンのメリットはまったくゼロではないでしょうけど
エンジン単体として常識的に考えれば水平対向4気筒より直列4気筒の方が様々な面で良いでしょう。
正直なところ、スバルの開発本部内で本気で水平対向エンジンが良いと思ってるエンジニアは
ほとんどいないのではないかと思います。
他社との差別化や水平対向に拘るお客さんがいるから必要悪としてやめられないとか
普通の直4横置きのエンジンとプラットフォームを今さら新規開発・製造するお金はないとか
そういう意味でのスバルは(EVまでは)水平対向で行くしかないという諦念の状態でしょう。

だって、本当に水平対向エンジン縦置き、シンメトリカルAWDが理想の乗用車だというのなら
軽乗用車だってリッターカーだってそうすべきですし、
逆に言えばそうではなくとも初代FFレックスやヴィヴィオはあれだけの優れた乗用車足り得たわけで
それはスバルの技術力、というより開発姿勢がそれらの優れた乗用車を生んだわけですから。。。

このへんはポルシェも似たようなもので水平対向エンジンもRRも已めるに已められなかったわけです。
ポルシェはもっと早い時期に924、928などで脱水平対向、脱RRを図ったけど成功しませんでした。
もっともポルシェはスポーツカーというか信者だけが買ってくれればそれでいいメーカーなので
水平対向宗教の教祖として存在すればいいのですが
実用車であるスバルは本来そうあるべきではなかったのですが
已めるに已められない病める状態に陥ってしまったわけですね(笑)

 

ただ、もしかしたら、エンジン開発をしているエンジニアの中にはエンジン単体としてではなく
車両全体として水平対向エンジンを搭載することが理想なんだと思ってる人はいるかもしれません。
それは、巷で言われているような低重心とか衝突時に潜り込むとか諸々の謳い文句を信じていて
自分たちエンジン開発部門はそれらのメリットのためにエンジン単体としては不利な
水平対向エンジンを頑張って開発しているのだと本気で信じてる人もいるかもしれないということです。

そうなると、水平対向エンジンは直4エンジンよりこれこれの理由で燃費が悪くなるとか
あるいは重量がかかる、コストがかかるなどと論って
他社の直4よりこれだけ悪くても仕方ない(車体側が得してるんだから…)と言う発想が出てきます。
それを“水平対向悪化分”とか“四駆悪化分”とか呼んで言い訳にしていたというわけです。

まっ、その辺の愚痴(?)も含めて水平対向エンジンについてはあまり言わなくてもいいかなと思うし
まぁでも今後なにかの機会があれば低重心とかちょいちょい触れていくかもしれませんが、
今回はエンジニアリング的なことはすべて忘れて
シンメトリカルAWDという名称についてだけちょっと触れてみたいと思います。

 

というのも、2000年に数ヵ月だけ在籍していたAWD-CoEという部署時代に
このシンメトリカルAWDという名称について少しだけ関わっていたからです。
ただ、業務として、エンジニアとして携わったということでもなかったですから
この記事でのAWD-CoEで取り組んだことの中でも特に書きませんでした。

AWD-CoEという部署が発足した背景はこの記事にも書いたように
当時スバル(富士重工)の筆頭株主となったGM(ゼネラルモータース)対応が大きいですが
GMグループのAWD車の開発援助などするとなると逆にスバルのAWDは……となってくるので
スバルのAWDのアピールと将来のスバルのAWD新技術開発という課題も出てくるわけです。

ただ、スバルAWDのアピールといってもエンジニアリング的には小難しくなるだけなので、
というより何度か書いてますが、AWDの形式とか制御とかウンヌンではなくて
スバルは実際のAWDが使われる場面での地道な開発・改良の積み重ねで
お客さんが必要とする・期待するAWD性能を実現してきたのだから、
そしてさらに言えばそれは単なるAWD性能ではなく例えば極寒時の始動性や暖房・デフロスタ性能など
AWDだけでなくクルマ全体で必要となる様々な機能・性能をそうやって実現してきたわけで
そこにこそスバルAWD車の真骨頂があるわけです。

ならばということで、それらも全部ひっくるめて分かりやすくアピールしやすいように
スバルのAWDをひと言で表す名称を付けたらどうでしょうか?
とボクは提案したわけです。
そして、AWD-CoE部署の中で皆がそうだ、そうだ、ということになったわけです。

例えば、アウディなら“クアトロ”、VWなら“シンクロ”とかね。
ご存知のようなアウディもVWグループでプラットフォームは共用していて
どちらも同じ4WDシステムを使いまわしているけど、それぞれ違う名称を付けているわけです。

じゃぁ、その名称は何にしましょうか?
となった時、ボクはそういうものはエンジニア任せにしてセンスのない名称にせずに
宣伝や(本社)企画部門の責任で必要なら外部のコピーライターでも雇って決めるべきでしょ
と言ってそれ以上首を突っ込まないことにしました。
例えば、“環状力骨構造”なんてあまりにセンスがないけどそれでも無骨でスバルらしいんですが
エンジニアリングではなくアピールしましょうというのにそういう名称ではダメですからね。

 

ところが、その本社部門で決めた名称が“シンメトリカルAWD(Symmetrical AWD)”だったんですね。
うーん、ガクッとなってしまいしたよ(汗)
センスがないのは我々技術部門だけでなく全社的にセンスがないわけですからね。
というか、センスウンヌンよりもその時はこれは良い名称とは言えないなぁと思いましたね。

何故良くないと考えたのか。
一つめは、結局は左右対称のようなエンジアリング的な発想の名称になってしまったこと。
二つめは、それによって、上述のようなスバルAWDの真骨頂である開発姿勢などが隠れてしまうこと。
そして、三つめは、軽自動車を無視してしまったことです。
この時の軽乗用車はプレオで直4横置きFFベースなのでシンメトリカルではないですし
サンバーも同様ですから、じり貧なスバル軽自動車と言えども無視するのはいかがなものかと。

それと可能性は低いけどスバル小型車も将来的にはシンメトリカルでないAWDレイアウトになるかも
あるいはEVとなってシンメトリカルに優位性がなくなるかもしれないので
その時に言い訳めいたことを言わないでも済むようにしておいた方がいいなという考えです。

まぁとにもかくにも、長すぎて言いにくい名称じゃ普及しないしイメージアップにはならないですね。

 

ちなみに、水平対向縦置きエンジンで左右対称になるからシンメトリカルAWDなんでしょうけど
確かにパッと見は左右対称、アクスルシャフトの長さも左右対称、重量配分も左右対称に近くなるけど
肝心の水平対向エンジンは左右対称に回っているのではなく前から見て時計方向に回ってます。
なのでその反力は全然左右対称じゃないんですよね(笑)

リジッドアクスルじゃないので駆動反力がもろにロール反力になるわけではないですが
それでもトランスミッション+デフを傾けてアクスルシャフトの揺動角に左右差が出るので
それが左右のトルク差や接地荷重の差になるしトルクステアだって皆無じゃないし。

それに、普通の走行ではまったく関係ないですけど、ジャンプした時の姿勢制御でも
エンジンの回転慣性の影響で左右どちらかに捻じれる可能性がありますが
横置きエンジンなら空中でアクセルON/OFFでピッチングを制御することができます。
ラジコン・バギーなんかはこのテクニックで空中で姿勢コントロールするわけです。

そこまで突飛なことを言い出さなくとも、単に重量配分の左右対称だけに話を絞っても
それじゃぁ運転席は真ん中にないから一人乗りでは左右対称じゃないよねってことになりますよね。
だから、シンメトリカルなんてそんな本質的なことじゃないんですよ。
それを名称にするなんてねぇ。
だって、スバルの六連星マークだってシンメトリカルじゃないんだし(笑)

 

ということで(?)、やっとAWDの話に戻ったところで、次回はまた西暦2000年に時を戻して
AWD-CoEから操安乗り心地部署に出戻りした時のことなどをボチボチと書いて行こうかな。

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コメント

あっ、「アイサイト(EyeSight)」は近年のスバルでは唯一といっていいほど
センス溢れるネーミングでしたね。
これ考えた人は誰だか知らないのですけど(汗)

投稿: JET | 2021-07-03 17:05

毎度ご無沙汰してます。B10Mです。
BC,BFレガシィの時代にデイーラー出向に行ってましたが、
ブルーバードアテーサ、ギャランVR-4等よりレガシィの優位点をお客に説明する度、ビビオを貶すことになっているの嫌なもんでした。
まあ、レガシィとビビオで迷う人はいないでしょうが。
RX-RはレガシィRSより私は好きでした。面白い車だったし。
尤も、営業所の、代車用の一番安いMi?(1.8 パートタイム4WD)が当時のベストスバルと感じた人間ですから安い車が性にあってるようです。
今になって思えばBCは小さくて軽いんでしょうが当時はでかくて嫌だなと思ってました。

投稿: B10M | 2021-07-04 22:26

>B10Mさん

やはりメカで差別化しようとすると破綻しやすくなりますよね。メカは手段でしかないですから。
手段でなく目的と結果で示すのが一番ですが、それを巧くイメージできる言葉が必要でしょうね。

投稿: JET | 2021-07-05 05:17

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