新書「騙されない老後」を読了

 
扶桑社新書の「騙されない老後 権力に迎合しない不良老人のすすめ」池田清彦著を読みました。

著者の本はこちらの「生物学ものしり帖」を読んでいて、つまり著者は生物学者ということです。
しかし、こちらの「環境問題の嘘」という本も読んでいて生物学からはやや乖離しています。
そして、この本は老後を扱っているのですから生物学からはさらに乖離しているように感じます。
実際、ボクは著者のファンとかわけでもなんでもないのでタイトルなどに釣られて
この本を買って読み出したら、ムムッなんか前に同じような主張に遇ったような……
と気づいて記録を調べたら過去にも読んでいた人だったのが判明したという次第なわけです。

なお、本書は今年１月発行ということもあり新型コロナ騒動についても触れられています。

さて、“騙されない老後”と聞くと高齢になってから特殊詐欺などに引っ掛からないようにしよう
ということかと思われるかもしれませんが、副題から分かるようにそういう意味ではなく
権力や利権に騙されずに生きようという意味でありそのために“不良老人”であろうということです。
「はじめに」で以下のように書かれています。

（以下引用）　　麻生が言う「民度レベルが高い」国民とは、お上の言うことに素直
に従う、言ってみれば騙しやすい国民のことなのである。
　日本人の多くが、このような「民度の高い」国民に成り下がっている理由は、自分
たちの手で世の中の仕組みを変えようという情熱などなく、決められたシステムの中
でどううまく立ち回るか、ということにしか考えが及ばないせいだと思う。
　特にその傾向が強いのは戦後生まれで、老後に片足を突っ込んでいたり、これから
老後を迎えるくらいの人たちだ。みんな一緒で横並びのシステムに順応するよう教育
され、そして社会に出れば効率よく大量生産することが求められ、道を踏み外すこと
なく、とにかく真面目にやっていれば年功序列で出世もできた世代である。（中略）
　こういう人たちはその素直さや真面目さゆえに、与えられた情報を精査することな
く信じ込み、多数派こそ正義だと無意識に思い込むので、社会に騙されやすいという
弱点がある。
（中略）
　世の中の人がとりわけ騙されやすいテーマが、｢安全｣｢健康｣｢環境｣である。（中略）
　ＣＯＶＩＤ－19の感染拡大防止のための自粛要請はその典型だが、がん検診や健康
診断を半ば強制するのだって、すべて「健康」を口実に利権を得るためでしかない。
　さらには、地球温暖化の原因がＣＯ2の人為的排出であると言い張るのも、そのバ
ックにはＣＯ2利権で巨額の利益を得ている企業の存在がある。（中略）
　権力に従順であるだけでは豊かな老後は過ごせない。大事なのは何が最善であるか
を自分の頭で考えて、自分で決める、ということだ。
　権力を持つ者に言わせればそんな老人は「不良」なのだろうが、本当は「不良老
人」こそが幸せなのだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（引用終わり）

まぁ麻生大臣の発言の意図がどこにあったかはさておくとしても
著者の主張は大筋賛成しうるところですし歯切れよくズバッと書かれていて痛快です。
本文中でもがん検診やがん治療や健康診断や血圧降下剤やらの否定もされているし
健康食品とかほとんど無意味だとか３３年以上毎日飲酒してるとかもまったく同感です(笑)

それにしても、著者も１９４７年生まれなのでいちおう戦後生まれになるのかと思いますが
まぁボクも戦後生まれで早期リタイアしてるから老後に片足入れているとも言えなくもないので
まさに著者がいう騙されやすい世代・人間なのかもしれないです。
ただ、横並びは大嫌いで天邪鬼で不真面目で大して出世もしませんでしたし
だからこうして早期リタイアなんて道に踏み外しているので(汗)
その点では立派な「不良老人」予備軍かもしれないですね(笑)

また、新型コロナのワクチンについても次のように書いていて、これまたボクも同意見です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（以下引用）
　僕のような老人は、若者に比べたら外出の機会などたかがしれているわけだから、
感染する確率も低いし、ましてや感染者になる可能性はさらに低い。そういう意味で、
まず若い人から先に打つというのは理にかなっている。
　特段の問題がないことがわかったら老人も安心してワクチンを打つことができるだ
ろうが、そもそも日本人の大半がワクチンを接種していれば、その時点で感染はかな
り落ち着くだろうから、老人は無理してワクチンを打つ必要さえなくなるかもしれな
い。（中略）
　多くの人は、ワクチンは自分のために打つと思い込んでいるが、本当は集団免疫を
獲得するため、すなわち社会のために打つものだということを忘れてはいけない。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（引用終わり）
特に最後の一文はその通りだけどあまり公に叫ばれないのが不思議なところですね。
逆に、ワクチン打ったから安心だとか遊びに行けるとか思ってる人が多くて
他者より我先にワクチン打とうとする人が目立つことは呆れるしかありませんね。
医療従事者などのように社会のために先に打つというのは貴いことですけど
基本は個人が打ったかどうかでなく集団免疫が獲得できて感染状況が落ち着かなければ
自由に遊びに行けないんですからね。

ただ、もちろんですが、全てにおいて著者に同意というわけでもありません。
例えば、仕事を続けるのは老け込まないコツのひとつとも書いてありますし
趣味をするにもある程度他人より目立って承認欲求を得た方がいいとかも書いてますし
会社を辞める前には後輩などに飯を奢ってやった方が慕われるなどとも書いてます。

これらは反対意見というわけではないけど、ボクはもう仕事をするつもりは毛頭ないし
趣味は自己満足だけで完結して承認欲求など端から考えない方が絶対に面白いし
現役時代に後輩に奢るなんてほぼありませんでしたからねぇ。
というか先輩から奢られるのが嫌でしたからそういう先輩を慕う気持ちも皆無ですから(爆)

それでも、次のようなスタンスというか心構えとしてはやはり全面的に賛同できるものです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（以下引用）
「自分自身が楽しくなる」ためにも、「他人と楽しくつきあう」ためにも、自分の頭
の中をいつもニュートラルにして、「多様性」を維持しておくのがいい。それはつま
り、自分の今の考えがＡだからといって、反Ａを拒絶するのではなく、状況に応じて
そっちに切り替えられるようないい意味での「適当さ」を持つということだ。トラン
プが嫌いならバイデンが好き、アメリカが嫌いなら中国が好き、などと敵と味方に分
けて考える人ばかりだと、最後は戦争するしかなくなってしまう。　　（引用終わり）

このブログではボク自身も面白半分である程度は主張した方が良いかと思って書くときもありますが
それでも物事を考える時には極力ニュートラルで多様性を維持しようと心掛けています。
まぁ神や仏じゃなくて人間なので完全にニュートラルにはなりませんけどね。
そのためには自分の今の考えの反対意見を拒絶しないというのも重要ですが
まずは権力や巷で言われる意見を疑って反対意見を考えてみることも大切かなと思います。
それこそが「不良老人」を目指す第一歩かなと。