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軽トラの理想は四独サスではない

前回記事では軽トラの理想はRR(リアエンジン・リアドライブ)ではなくて
MR(ミッドシップ・リアドライブ)であることの理由について
荷台のリアオーバーハングだけでなくリアサスペンションの設計自由度の制約があると書きました。

そして、サスの話が出たところで富士重工製スバル・サンバーのRR以外の特徴と巷でよく言われる
四輪独立懸架(四独サス)についてもボクは軽トラにとっての理想とは考えていないということを
今回は書いていきたいと思います。

もっとも、四独サスについてはサンバーに限らずスバルの特徴というか
一部にポリシーみたいな言い方をメーカー自ら発信していたところもあるのですけど……

確かに昔ながらのリジッドアクスル(車軸懸架)はバネ下質量が重くて
路面の凹凸に対して乗り心地に悪影響があり接地性も悪いので操縦安定性にも難があり
特にリーフバネの場合は前回記事で触れたジオメトリ特性やコンプライアンス特性などの
設計自由度が低く、少なくとも乗用車向けとしては性能上褒められたサスではありません。

操縦安定性や乗り心地という点だけでなくリジッドアクスルはそれ自体が上下に動くため
さらにFRであればプロペラシャフトまでも上下に動くため大きなスペースをとり
それによってリアシートのクッション厚が不十分となったりセンタートンネルが邪魔になったり
乗用車としては全体のパッケージングに対して大いにネガティブな要因となってしまいます。

ただ性能は低くても安くて簡単に(トラックの流用で)作れるので
大昔のトヨタ・カローラや日産サニーなど安い大衆車は採用してたし
ブルーバードでもセミトレーリングアーム(セミトレ)の四独にしたのは1967年の3代目からだし
トヨタなんてセコくてコロナでさえ1982年の7代目になってからやっとセミトレにしたほどです。
それでも、ハチロク(AE86)とか呼ばれる化石みたいな大衆車はリジットサスのままでしたしね。
その後も2WDでは四独サスなのに4WDになると途端に古いリジットアクスルを持ち出してきて
適当な4WDを作っているというメーカーも多くありました。

そんな時代では確かにスバルは軽乗用車からレオーネまで2WDでも4WDでも
全て古臭いリジットアクスルではなくて四独サスにしていたというのは誇っても良いとも言えます。
でも、確かに重いリジットアクスルはデメリットが大きいですが
デファレンシャルを分離したド・ディオンアクスルやFFのリアサスに用いるトーションビームなら
バネ下質量の増加は抑えられるのでデメリットも少なくメリットを享受することが可能となります。

 

けれども、ここでは軽トラということで話をしてきましたし
軽トラの理想はRRでなくMRだと述べてきましたので
MRの軽トラにはどんなリアサスが理想かということに限って話を進めさせていただきます。

後軸の前側にエンジンとミッションを置くMRではリアをリジットアクスルにするのは無理なので
独立懸架かド・ディオンかになるでしょうが、ずばりボクの理想はド・ディオンです。
ド・ディオンが良いというか、独立懸架より(重くない)車軸懸架が理想ということです。

何故、車軸懸架が理想なのかというと
軽トラに要求される強度・剛性・原価などの総合バランスということも言えますが、
一番の理由はリアサスのロール剛性を低く設定できるからです。

ロール剛性が高くなるとは簡単に言えばロールしにくくなることですから
普通の人は直感的にロール剛性を低く設定できることがメリットとは思わないでしょうね。
ただ、ロールしやすいかどうかは実際には前後サスのロール剛性の総和で決まります。
前だけロールするとか後だけロールすることはありませんから(微妙に車体も捻じれますが)

もっとも、自動車エンジニアや自動車評論家とかいう立場の人でさえ情けないことに
「後ろのロールがでかい」とか言う人がいますけど……

 

ここで、タイヤの特性の話をしますけど、タイヤは垂直の荷重が増えるほど性能も上がります。
ここでいう性能は難しく言うとコーナリングパワーとかコーナリングフォースとかになりますが
まぁここではあまり難しく考えなくて単に踏ん張りがきくようになると捉えていいでしょう。
しかし、ある程度荷重が増えすぎてくるとだんだんと踏ん張りの伸び代が少なくなり
しまいには荷重が増えると逆に踏ん張りが減ってきてしまうようになります。
これをタイヤの非線形特性と呼んでいます。

クルマがロールしてそれに対してロール剛性でロールしないように支えているというのは
その分だけ外輪のタイヤの垂直荷重が増え、内輪のタイヤの垂直荷重が減っていることです。
なのでフロントサスのロール剛性が大きいならフロント外輪の垂直荷重はかなり増え、
一方でリア外輪の垂直荷重はさほど増えないということになります。

するとある程度以上ではフロントの踏ん張りがあまり増えずリアは相変わらず踏ん張る形になり
こうすることで急旋回(速度というよりも遠心力が強くかかる旋回)時に
フロントから徐々に滑り出すような安心して運転できる操縦安定性が作り出されるのです。
逆にフロントサスのロール剛性を低くしてリアサスのロール剛性を高くしてしまうと
急旋回でリアから先に滑り出していとも簡単にスピンするような車になってしまいます。

そう、FFはフロントヘビーだから曲がらないとかRRはリアヘビーだからスピンするとか
そういう問題ではなく、このように前後のロール剛性によって特性が決められるわけです。
大抵の良心的なクルマはフロントサスのロール剛性を高くして安全な特性にしているわけで
なので大概のクルマはフロントサスに太いスタビライザー(スタビ)を装着していたりするわけです。

余談ですが、このスタビライザー(安定させるモノ)って名前が良くないですね。
フロントサスに装着すれば確かに理論上は安定させるモノになるのですが
無暗にリアサスに装着すれば安定どころか不安定にさせるモノとなってしまいかねないものですから。
なのに、名前が名前なので勘違いされてリアサスにも無駄にスタビを装備しろという
勘違い客や営業や自動車評論家とかが出てきてしまい、
ホントに無駄に効果も悪さもしない針金みたいな極細スタビを形だけ装備したりして……
まっ、これは軽トラの話ではなくて乗用車の話ですけどね(笑)

 

閑話休題。
ところで、軽トラの場合、特に過積なども考慮するとリアサスのバネは相当に硬くする必要があります。
四独サスではバネ定数を上げれば必然的にそのままロール剛性も上がります。
フロントのロール剛性を際限なく上げられれば前後のバランスは保てますが
ピッチングも含めて乗り心地などの確保からそれも限度があるので
安定性の確保とその他性能や設計要件とのせめぎ合いで苦労することになるわけです。

一方、車軸懸架の場合はバネの取り付け点を内側(車体中心寄り)に配置すれば
高いバネ定数でもロール剛性を低くすることができるのです。
極端な話、バネを車体真ん中の1つだけに集約してしまえば
どんなに硬いバネを使ってもロール剛性はゼロということになりますから。
そこまで極端でなくとも、車軸懸架ならばバネ定数とロール剛性の設定自由度が高いわけです。

 

というわけで、理想の軽トラはRR、四独サスではなくMR、ド・ディオンアクスルだという話でした。
あっ、軽トラに4気筒エンジン搭載についての話はまた今度とさせていただきます。

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コメント

納得出来る説明をいただき、ありがとうございます。
普段ダイハツ・ハイゼットを足にしていて、ずっとホンダ・アクティに憧れているんですが、
まさに書かれた点を考慮していくと、軽トラはアクティを選択したいんです。
が、悲しいかな生産終了なんですよね。

投稿: はら坊 | 2021-06-09 21:30

>はら坊さん

そう、軽トラとしての理想のパッケージングに近いのはアクティなんですよね。
ホンダの良い面がでているのではと思ってます。
けど、軽ボンバンとしての理想のパッケージングはFFだと考えてますから、
軽トラだけMRで残して法規対応していくのは困難なのでしょう。
理想的であるが故に生産終了とせざるを得ないとも言えますかね。

投稿: JET | 2021-06-10 04:46

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