軽トラに4気筒エンジンは要らない
このスバル・カテゴリーでは前回記事まで軽トラの理想はRR、四独サスではないと書いてきました。
今回は予告通り軽トラの理想は4気筒エンジンではないということをさらっと書いておきましょう。
もっともボクはエンジンについては門外漢ですからあまりエンジニアリング的にどうこう書けませんし
だからその点ではあくまでも一般論的な話しかできませんので、
おそらく皆さんの予想通りの展開と結論で終わってしまうでしょう。
そう、結論から書けば、軽トラに4気筒エンジンは過剰でメリットはほとんどなく
3気筒で十分というか、それが適しているということになります。
660ccで4気筒にすると1気筒当たりの燃焼室が小さくなりすぎて熱損失が大きくなるし
4気筒より3気筒の方が吸排気の効率も良くなります。
部品点数、特に可動部の部品が多くなるので摩擦損失が大きくなります。
つまり、一般論としては燃費が悪くなるわけです。
それに部品点数も多くなるということはコストアップや重量アップになりますし
車幅が限られた軽自動車に横置き搭載するにも4気筒は不利で設計自由度も制限され
それによりまた余計に性能の妥協を強いられたりコストアップにつながったりします。
なお、2気筒でも軽トラは大丈夫な気がしますが軽乗用車と共通にするなら3気筒が良いでしょう。
もちろん、一般論として3気筒より4気筒の方が振動が少なく静かで高回転でスムーズとか言われますし
実際にそういうメリットも全くないとは言えませんが、
乗員の真下にエンジンを配置するFRならまだしもボクが理想とするMRやサンバーのRRなら
振動とか静粛性とかはそもそも大して問題になりませんからね。
というか、FFの軽乗用でも3気筒/4気筒で決定的に違いがあるとも考えていませんし
3気筒/4気筒のコスト差を考えるならその一部を遮音材・防音材に費やした方が利口でしょう。
では、どうしてスバル・サンバーは5代目以降に2気筒から突然4気筒になったのか?
理由は簡単で2代目FFレックス以降に軽乗用車用として4気筒にしてそれを流用したからです。
軽トラだけ別のエンジンを開発することは無駄ですが
かといってサンバーも考えて3気筒にすることなくサンバーを切り捨てて4気筒にしたわけです。
まぁ、切り捨ててというのは口が悪いですけど眼中になかったというか真剣に考えなかったのでしょう。
冷静に検討したら軽トラに4気筒なんて狂気の沙汰でしょう。
ただ当時はRVブームとかでサンバーも乗用ユーザーが増えてきて4気筒でもイケると勘違いしたのかも。
というか、そもそも軽乗用車用としても4気筒を選択したのが今思えば失敗だったと言えるでしょうが……
もちろん、4気筒故のスムーズさや静粛性などのメリットもなくはないですが
それよりも他社のほとんどが3気筒になっている時にまだ2気筒で出遅れた負い目から
今度は一気に4気筒にして機能・性能上のアドバンテージよりも
イメージ戦略や販売戦略としての優位性を狙ったのがあの4気筒化であったとボクは見ています。
本来、スバルというのはそういうことをやっちゃダメなメーカーなんですよ。
もっと愚直というか泥臭くユーザーにとって何がベストかを優先して考えて作るべきメーカーなんですよ。
ただ、お金がないから完全に理想のものは作れないけど金が無いなりに工夫するメーカーなんですよ。
(なので、ここで軽トラの理想を語ってもスバルでは絶対に検討にすらなりませんでしたが)
ところが4気筒エンジンはバブルでユーザー目線でなく作っちゃったというわけです。
特にサンバー・トラックのユーザーなんかは全く念頭に置かずに作っちゃったというわけですね。
もっとも、初代ジャスティの1L3気筒エンジンの出来栄えを鑑みると
軽自動車用の3気筒エンジンを新設計してもあまりパッとしないエンジンしか出来なかった可能性もあるし
そんな懸念があったので3気筒にせずに作りやすい4気筒にしてしまったのかもしれませんが……
ちなみに、あの4気筒エンジンは当初は550ccで開発されて
EN05型として2代目FFレックスの途中から積んで発売されましたけど
そのエンジン開発中に軽枠拡大で660ccになるということが決まって
急遽無理矢理ストロークを伸ばして660ccに大改造してEN07型になったんですよね。
前述したように車幅が限られている軽自動車に4気筒エンジンを搭載するために
各ボアピッチはギリギリまで詰めて設計しているわけですから
(※しかも当時のECVTは他社製3ATよりさらに横幅を取る代物だった)
ボアアップして排気量アップする余地は全くありませんからストロークを伸ばすしかありません。
ボクはこの550ccのEN05型搭載のレックスも660ccのEN07型のヴィヴィオも
どちらも愛車にしたことがあるのですが、550ccのEN05型の方が
4気筒エンジンらしい高回転のスムーズさなどは明らかに上というか無理な設計してない感がありました。
これはロングストロークによってピストンスピードがどうこうという話ではなくて、
もともとボアピッチをギリギリに詰めるためにクランクウェブが薄いいわゆるカミソリクランクなのに
ストロークを無理に伸ばしたのでメインシャフトとクランクピンのオーバーラップが減少して
これによってクランクシャフトの剛性が低くなって高回転で微妙に暴れているのが原因でしょう。
最初から660ccで開発することが出来ていればもう少しやりようもあったかもしれませんし
少なくとも二重開発みたいな無駄なことはしなくて済んだのですけどね。
こういう官や他社に対しての政治的な情報収集や駆け引きが劣るのもスバル(富士重工)の弱点ですね。
RRレックス時代の360cc→550cc+車体サイズup(1976年)の時も後手に回ったし
1998年の車体サイズupでも中途半端なプレオで時代の流れについていけませんでしたからね。
(※プレオについてはこれまた色々と言いたいことはありますけど別の機会にすることにしましょう。
そんな機会というか話の流れになるかどうか分かりませんが……)
ちなみに、1998年の軽枠拡大では車幅が1400mm→1480mmに拡幅されたので
この車幅前提で660ccの4気筒エンジンを新規開発していたらもう少しまともな設計できたかも。
といっても、3気筒エンジンより総合的に良いエンジンになっていたかどうか怪しいですし
ましてや軽トラ用としては依然として3気筒が理想というボクの考えは変わりませんけどね。
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コメント
三気筒だと
120度ずつピストン運動の死点がズレているので
回転しやすいって聞いたけど
違ったっけ?
投稿: nasa | 2021-06-15 13:47
>nasaさん
そう4気筒だと二次振動を消せないのに対して3気筒は120゜ずれてるので一次振動も二次振動もないです。
ただ直6気筒とは違ってエンジン全体が捻じれるような偶力振動が出るので完全バランスではないです。
この偶力振動でアイドリング付近の回転域での振動が目立つことになりまた1気筒当たりの排気量が大きくトルク変動も3気筒の方が大きくなることも併せて一般的には3気筒は4気筒より振動が気になることになります。
最近はエンジンマウント技術が進んでその差もほとんどなくなってきたと言われてますが。
それより、3気筒は排気の間隔が240゜毎となって排気干渉がほぼなくなることと
比較的簡単に等長排気にできるのが最大の優位点かなと思ってます。
投稿: JET | 2021-06-15 14:28