新書「サピエンスの未来」立花隆著を読了
講談社現代新書の「サピエンスの未来 伝説の東大講義」立花隆著を読みました。
本書の冒頭ではフリーライターの緑慎也氏が以下のような解説をしています。
(以下引用)
本書は、東京大学教養学部で一九九六年の夏学期に行われた「人間の現在」を元に
した講義録である。 (中略)
冒頭に述べたように本書は講義録だが、直接の元になったのは、講義そのものより
も新潮社の文芸誌「新潮」に一九九七年六月から二〇〇二年九月まで五七回に及んだ
連載「東大講義『人間の現在』の第一三回から第二五回である。 (引用終わり)
ということですので、それほど新しい内容というわけでもないですし
どこでどれほど“伝説”となっているのかも謎ですけど読んでみたということです。
そして、冒頭の「解説」の後に立花氏が著している「はじめに」と続いていきます。
そこでは以下のように書かれていて本文に繋がっていきます。
(以下引用、改行位置変更)
我々現生人類が、この先どれくらいの未来を持っているかを考えようとすると、(中略)
期待値をいわせてもらえば、まあ、これから数万年はいけるのではないだろうか。(中略)
本書では、ジュリアン・ハックスレーやテイヤール・ド・シャルダンといったユニ
ークな思想家の発想を手がかりとして、そこを考えてみたいと思っている。(引用終わり)
そう、この本を読んだ後としては著者の「サピエンスの未来」観というかその思想の提示というより
ほとんどが特にテイヤール・ド・シャルダンという人の思想とその解釈の説明という感じでした。
もちろん、そこに著者の共感や著者独自の解釈が入っているのは間違いないのですが。
テイヤール・ド・シャルダン?誰それ?聞いたことない。
という人がほとんどでしょう。当然ですがボクも知りませんでした。
というか、著者は以下のように書いています(講義で話しています)。
(以下引用) テイヤール・ド・シャルダンを知っている人はどれくらい
いますか?(手をあげる人ほとんどない。)そんなに知らないのかな。この人は、進化論
者、古生物学者として世界的に有名な人で、二〇世紀の知的巨人として指折り数えら
れる人間の一人です。せめて名前くらいは知っておいてください。 (引用終わり)
東大学生でもほとんど知らない人ばかりですからボクが知らなくても当然ですし
このJET-LOGなんて読んでる暇人も知らないのが当然でしょうね(汗)
ただこれだけでも、どんな人なのかよく分からないでしょうし
かといってこの本ではそのテイヤール・ド・シャルダンの思考・思想に迫っているわけなので
あまりに簡単に紹介されているわけでもないですから
ちょいとウィキペディアの記述を紹介しておきましょう。
(以下引用)
ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(Pierre Teilhard de Chardin,1881年5月1日 -
1955年4月10日)は、フランス人のカトリック司祭(イエズス会士)で、古生物学者・地質
学者、カトリック思想家である。 (引用終わり)
つまり、科学者として進化論を肯定しつつもカトリック司祭として神の創造も全否定できなかったという
(創世記の伝統的な創造論は否定していますが)
微妙で独特の立場から科学的思考を深め哲学的思想も深めたということなのでしょう。
そして、ダーウィンの進化論を発展して時間軸で考えて
宇宙そのものが進化し、生物も人類も進化し、
さらに人類は精神的・社会的に進化していき超人類になるとしています。
ここでいう超人類は今の人類個人のDNAが進化してスーパーマンになるということではなく
人類全体の精神というかネットワークで繋がれた社会的な叡智がそのように進化するという意味です。
そういう意味では楽観論的で明るい未来が待っているような話にも聞こえますが
その未来と言っているのは10年20年先とか100年200年先とかそんなスケールではなく
何万年先とかの話ということのようですからそれまでは紆余曲折があるんでしょうねぇ。
もっとも著者も含めて人類があと何万年も繁栄できると考えること自体が楽観的でしょうけどね。
一方、DNAの発見が1953年、ビッグバン説の提唱が1946年で信じられるのはもっと後で、
またノイマンのコンピュータ(ENIAC)が1946年完成ということからすると
テイヤール・ド・シャルダンの生きた世代ではそれらの科学的知見はまだ未熟な時代であり
現代の知見もまた僅かしかなかったころでした。
その割には宇宙の進化や生物や人類の進化や社会の進化をよく把握して予測しているとも言えます。
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コメント
あら、立花氏、先日(今年4月)亡くなられてしまっていたのですね。
ご冥福をお祈りいたします。
投稿: JET | 2021-06-23 06:05