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軽トラの理想はRR、四独サス、4気筒ではない

このスバル・カテゴリーの記事も先日は「田舎のポルシェ」というサンバーが登場する小説の話となり
ボクの現役サラリーマン時代の思い出話からは脱線してしまいましたけど、
その記事でも少し触れた「田舎のポルシェ」「農道のポルシェ」とか呼ぶのが嫌いだということについて
今日はもう少し書いてみようかなと思います。

「農道のポルシェ」はほとんどは肯定的な意味合いで使われてる言葉なのでしょうが、そこには
ポルシェ(911系)と同じRR(リアエンジン・リアドライブ)であるとの理由が大きいのでしょう。
もっともポルシェ356発売の1948年当時でも初代サンバー発売の1961年当時でも
RRはそれほど珍しいレイアウトでもなかったし、そもそもRRという言い方も
スバルがスバル1000でFF(フロントエンジン・フロントドライブ)と言い出してから
FR(フロントエンジン・リアドライブ)とかRRとか呼ぶようになっただけのことですけどね。

富士重工製スバル・サンバーを評する時に出てくる言葉はこのRRの他には
四独(四輪独立懸架)サス(※サンバーだけでなくスバル車共通の特徴として)とか
4気筒エンジン(5代目、6代目のみ)というのもありました。
ボクはこういうレイアウトやメカニズムでもってクルマを決めつけるような言い回しが嫌いなんです。
だからこそ、レイアウトやメカニズムが似てるからと他車になぞらえて呼ぶのがさらに嫌いなんですね。

まぁ、ウンチクを語る時には得てしてそのようなレイアウトやメカニズムを持ち出してしまうわけですが
ユーザーにとっても(作り手の)エンジニアリング的にもそれ自体に意味があるのではなく
そのようなレイアウトやメカニズムによってどのような機能・性能がもたらされるかが重要なはずです。

ですから、たとえレイアウトやメカニズムを持ち出すにしても
厳正中立にこのクルマはコレコレの機能・性能になっていると評価したのちに
それはコレコレのレイアウトやメカニズムの特徴や長所・短所が要因であると
工学的・理論的にウンチクを語るべきだと考えているわけです。

それに、あるレイアウトやメカニズムを採用してもそれらの一般論的な特徴や長所・短所はありますが
それがそのままクルマの機能・性能になるというほどクルマは単純なものではないので
レイアウトやメカニズムだけでクルマの機能・性能を決めつけることは決して出来ませんからね。
もっとも、採用しているダンパーメーカーだけでそのクルマの良し悪しを決めつける
自称・自動車評論家なる人もいるから困ったもんなんですけどね(笑)

 

さて、富士重工製サンバーは1961年発売の初代サンバーから一貫してRRを採用してきたのですが
まず初代サンバーでRRを採用したのはスバル360がRRだったのを流用したからでしょう。
スバル360や初代サンバーの開発責任者の百瀬晋六さんとは直接お会いしたことはありませんので
開発経緯など詳しいことは知りませんが、語り継がれた資料などによれば
スバル360構想時に初代サンバーまで併行して企画して開発してきたわけではないですし
初代サンバー構想にあたってスバル360流用のRR以外のレイアウトを検討した痕跡もありません。

そのスバル360では人間重視(軽枠内で大人4人が無理なく乗れること)のパッケージングと
当時の技術(等速ジョイントなしでFFは難あり)と軽量化や整備性など総合的に検討して
RRという当時としては特別珍しくもないレイアウトを採用したわけでしょう。
それを流用することで初代サンバーも成立するということでサンバーはRRになったわけです。

もちろん、スバル360の開発過程においては実証主義というか実験主義というか
愚直に走り込んで改良して開発していく中でRRによるトラクションの良さなどは実証されたろうし
それが初代サンバーとしてというか軽トラとしても有意義であることも理解していたであろうし
実際に初代サンバーの発売後にもユーザーの実用性として高く評価されたのも事実でしょうけど。

そして、2代目以降のサンバーではただ初代サンバーのレイアウトを踏襲しただけのことです。
それはRRがユーザーに受け入れられたというか否定されず決定的なデメリットがなかったからですが
お金がなく貧乏性な富士重工では多額の投資が必要なレイアウトの変更が出来なかったこともあります。

この辺りは未だに水平対向エンジンに拘っているというかそれ以外が作れないのと同じ構図ですが……
富士重工では軽乗用車だけが唯一この大英断ができてRRから名車FFレックスを生みましたが
それすらスバル360、R2、初代レックスとRRできてFF転換が遅きに失した感がありましたし……
※スバルR2はデザイン含めて好きですけど本来あのタイミングでFFにすべきだったと思ってます。

というわけですから、ボクは軽トラとしてはRRが理想だとは考えていませんし
ましてや富士重工製サンバーはRRだから良いとも考えていません。
じゃぁ、理想は何だ?と聞かれるとボクの使用状況だけに限った理想の軽トラと
軽トラ市場における多くのユーザーの使用状況における最適解としての理想の軽トラは違い、
つまり私的でわがままな目線と作り手のエンジニアとしての目線とは違うのですが
この一連のブログ記事の流れで行くならここはエンジニア目線で語るべきでしょうね。

その目線でいうなら、軽トラはMR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)が理想でしょうね。
なお、ここでいうMRは後軸前にエンシンとミッションを配置したものを指していて
運転席直下の前軸直後あたりにエンジンとミッションを配置したフロントミッドシップは含みません。
もちろん、冒頭で述べたようにこのレイアウトだから絶対に良いと決めつけるのはナンセンスで
きちんと特徴や長所・短所から工学的・理論的に述べていかないといけません。

 

RRが一般的に言われていることは、重量物であるエンジン、トランスミッションが車両後端にあり
そのために後輪荷重が大きくなるのでリアドライブだとトラクションが良いということですし、
逆に車両後端に分銅を付けてるようなものだから後輪が横滑りしだしたら止まらずスピンしやすいし
つまりは安定性が悪いということでしょう。

ところで、軽トラとして一番重要なことは荷室容量、荷台の面積、特に荷台の長さです。
畳みを積載できるというだけでなく様々なパレットやコンテナサイズも含めて
今までの軽トラの荷室容量を削ることはそのままユーザーの不利益につながることであり
エンジンレイアウトが何であれ前輪が運転席の下にあるフルキャブであることは必須です。
もちろん、荷室容量を重視しない使い方のユーザーも一定数いるので
その人たちだけに限定して荷室の狭いセミキャブにするのも完全に否定されるものではないですが
今までのお客さんを切り捨てるというのはメーカーとしては勇気もいるし好ましくはないですし
実際にひと時そのような軽トラにして失敗したメーカーも幾つかありましたね。

そして、フルキャブであることを前提にして駆動輪のトラクションを確保することを考えます。
急坂やぬかるみでスタックして立ち往生してしまっては軽トラとして実用になりませんし
狭い農道でスタックしてしまっては他のクルマに助けてもらうわけにもいきませんからね。
すると、空荷の状態でも最低限でも車重の半分(50%)は駆動輪に荷重をかけたいところですし
それを実現するにはやはり重量物のエンジン、トランスミッションを後ろ寄りに搭載すべきでしょう。

もっとも、現代では軽トラでも2WD(二輪駆動)だけでなく4WDもラインナップするのが常識となり
トラクションが必要になるユーザーは4WDの購入を薦めてそれでも儲けようという意図もあり
その点からすればエンジニア的にというよりマーケティング的に
どこまで(2WD車の)トラクションを確保すべきかという議論にもなるかと思いますけどね。

そう考えると、RRまでトラクションを最重視せずともMRくらいであれば十分実用的と考えられます。
RRのサンバーでも空荷の重量配分でリアヘビーというほどでもないので
リアヘビーが原因での安定性不足はあまり大きな問題はないのですが、
横風安定性という点ではもう少し重心位置を前寄りに持って行った方が有利になります。
もっとも横風安定性はトラックというより1BOXバン型の方が問題となりますけどね。

 

RRはリアヘビーよりも短所となるのがホイールベースとリアオーバーハングの関係です。
操縦安定性は地面に接したタイヤの横力で得るものなのでホイールベースが長いほど有利になります。
たまにホイールベースが長いと安定するけど曲がらない=操縦性が悪いと思い込んでいる人がいますが
クルマを曲げるにもタイヤの横力で曲がるわけなので力を加えるウデが長い=ホイールベースが長い方が
よく曲がるしよく止める(安定させる)ことができます。
ただ、軽トラの場合は農道・畦道などギリギリで曲がる必要があったりして小回り性能が大切なので
むやみにホイールベースを伸ばすわけにもいかないのも事実です。

前述の前輪がドライバー足元より前にあるセミキャブだとホイールベースを長くできますが
それだとドライバーの足元空間を確保するために前輪の最大舵角も制限されることとあいまって
小回り性能がかなり劣ることになってしまいます。
よってセミキャブは後輪を前方にずらしてホイールベースを短く設定しています。
フルキャブRRのサンバーは小回りは十分ですがエンジンが後端にあるためMRに比べると
リアオーバーハングが少し大きくなりその分ホイールベースが短くなっています。

トラックの場合は積載をしていくとこのリアオーバーハングの量が効いてきます。
どう効くかというと後輪にかかる荷重の増加に大きく影響するということです。
もちろん、リアオーバーハングが小さい方が前輪後輪にバランスよく荷重がかかり良いわけです。

そして、積載時に後輪荷重が大きく増加すると問題となるのがひとつは強度の確保です。
ボディもそうですがサス部材や車軸などの強度が必要になってきます。
またタイヤやサスにも負荷がかかり性能が不十分になり結果的に安定性が劣るようになります。
RRのひとつめの大きな短所がここにあるのです。
この点MRにすればリアオーバーハングを限りなく小さくできて有利になるというわけです。

ちなみに、大昔に台湾でサンバーベースにドミンゴの1Lエンジン積んで荷台を伸ばしたトラックを
現地会社が改造して販売してましたけど、これなんかはさらにリアオーバーハングを伸ばしてるのに
さらに日本の軽トラ以上に平気で1.5トンほど過積したりするので相当に厳しかったですね(笑)

 

RRにはもうひとつサスペンションの設定に関係した短所があるのですが
それについては次回の四独サスの話と併せて記事にしたいと思います。

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コメント

わかりやすい解説をありがとうございます。
360から派生のためRRというのはわかってましたが、空荷でも後輪にトラクションが掛かる利点もよく聞きました。
サンバーの長所・短所をオーナーになって確認したかったです。

投稿: ぶらっと | 2021-06-02 23:02

>ぶらっとさん

ボクは農道はおろか林道すら走ってないし農作業やら運送業やらに使ってないしで
サンバーの長所も短所もほとんど実感してませんね。
せいぜい横風に弱いくらいは感じてますけど……(笑)

投稿: JET | 2021-06-03 04:28

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