新書「マスクをするサル」を読了
新潮新書の「マスクをするサル」正高信男著を読みました。
ここで“サル”という表現には人間より下等動物と見なして小馬鹿にする意味合いはありません。
著者が霊長類学者であることから人類と遺伝的に近縁であるサルを持ち出すことにより
人類の遺伝的な特徴・特質をサルとして表現しているというこになります。
なので、「はじめに」の冒頭にも以下のように断りが書いてあります。
(以下引用)
だから、この本は、外出時にマスクを着用することを揶揄しているものではないこと
を、まずお断りしておく。
かと言って、マスクをせずに電車やバスに乗ったり、お店で食事したりすることを是
認するのが目的でもない。ましてマスクを着用しない客の入店を禁止することの、妥当
性を論ずるものでもない。 (引用終わり)
最終的に著者の主張は以下のようなことなのかなと考えられます。
(以下引用)
やむを得ずマスクをするという意識、つまり必要悪としてのマスクという意識が、同
様にやむを得ずマスクしている周囲に目をやることをためらわせるのだろう。顔の中心
部にかなりの広さのブラックホールがある、という感覚によって、人の集まりは特に名
前を持って認識されることのない、無名の者たちの群れと化した。
群れは、「鬼滅の刃」のアニメが人気とか、「嵐」が解散前の最後のコンサートライヴ
をネット配信するとかの情報に接する度に、遅れてはならじと我れ先にそれに飛びつく。
消費が拡大して好ましいことのように一見映るものの、他のイベントや作品は無視され
てしまい、興行収入は二極化するばかり(中略) 無名の群れは、やはり解体さ
れるべきではないのか。
そのためには(中略) 発想を転換すべきではないかと私は考える。マスクも着けて
いる個人の自己表現の重要な要素であり、その人の人となりを判断する大事な材料であ
るというような雰囲気を形成することが必要だろう。 (引用終わり)
新型コロナ騒動前のこの記事にも書いたようにボクはマスクは嫌いですし
マスクの効果はかなり限定的なのでマスクをせざるを得ない場面はかなり限定的ですし
マスクしてればなんでも安心みたいなマスク馬鹿はかえって事態を悪化させると考えてますが
かといって科学的および社会的(体裁)に必要となる場面では一応マスクする人間ではあります(笑)
なので、前述の「マスクにより無名の群れ化が起き、それを解体すべき」との意見は賛成です。
ただ、それでも著者はマスクはもう否定できないから逆にマスクを使って個性を出そうという
かなりポジティブというか難しい提案ですね。
色とか柄とか刺繍とかワッペン貼るくらいで解決できるとも思えないですからねぇ。
とかなり小難しい話が展開されている本なのかと思われるかもしれませんが
実は大半の内容は口元がマスクで隠されることによるセックスアピールの問題の話となってます。
何故人類はパンツを履いて下半身を(女性はバストも)隠すのかといった下ネタが展開されてます(笑)
面白いと思ったこと(エロ本や官能小説ではないので性的な面白さではないですが)を紹介しましょう。
マスクとは全く関係のないお金(貨幣)の話なんですが
(以下引用) お金を貯めると
は本来、女性の性器をコレクションすることだったと言えなくもないのである。
(中略) 五円玉の穴は
膣道をシンボル化していると言えるのである。 (中略) つまり娘を他所へやるとい
う習慣だった。その後に貨幣がいよいよ登場した。だから、お金は女性を他の共同体に
やる代わりの機能を果たしたし、ゆえに女性を象徴化する形をとらざるを得なかったの
だと考えられるのだ。 (引用終わり)
かなり途中を端折っていますが、太古はお金の機能として子安貝が使われその後穴あき貨幣となり
それは女性器を表し女性の象徴なんだよということです。ホンマかいなというところですけどね。
それから、髭についての話も面白いです。
以前、テレビのバラエティ番組で男性に髭が生えるのは殴られた時の衝撃緩和のためだと紹介され
その検証といいつつ芸人が殴られてみるみたいなおバカなことやっていましたが、
(以下引用) 人類の成人男子に生える髭は、何らかの性的・視覚的メッセージを周囲
にアピールするための他の霊長類と共有される身体特徴からユニークに進化した
(引用終わり)
人間の髭はライオンのたてがみやクジャクの羽根と同じ役目で遺伝的に発達したということです。
確かに衝撃緩和なら最も無謀で攻撃的になる思春期には髭ボーボーになってないと役立ちませんからね。
ちなみに、陰毛や脇毛は縮れているので体臭を気化して発する役割をしているそうです。
現代では体臭はあまり好まれませんが古代では重要なものだったということですね。
そして、何故人類のオスはそんなセックスアピールが必要になったのかというと
それは人類が一夫一婦に適応するよう進化したわけではないからだというのです。
つまり、人類の基本は乱婚だと。
実際にイヌイットなど伝統的文化では誰とでいつでもどこでもヤルんだそうです(汗)
しかも誰に見られてもおかまいなしで、子供もわざわざ見に来るんだそうな(爆)
チンパンジーもニホンザルも乱婚生活なのだそうですけど
その違いというか性交というか射精や精液の違いなども書かれていてとっても面白いです。
あまり書くと卑猥に感じる人もいるのでここで引用するのは止めておきますけどね。
さらに、パンツというか人類が下半身を隠すようになった理由というのも面白いです。
(以下引用) 陰部を布で覆うことの第一義的な役割は、女性の生理を隠蔽する
ことにあったと思われる。だがそうしてみると、隠すことが異性を魅惑し、魅惑される
原因は、相手が覆うものが外された時をイメージするからであることが判明した。これ
を逆手にとり、男女とも陰部は覆うことにし、加えて女性のバストも隠し、配偶者のみ
が性交渉の折にのみ、それが外されたのに接する「特典」に浴するという、乱婚では得
られない快感を体験してもらうことで、一夫一婦制の導入に成功したのだと考えられる
のである。 (引用終わり)
だからこそ、人前でマスクをするのが当たり前になったこれからは
マスクを取ることの喜びや取られることの羞恥という性的感情が喚起されるというのです。
まぁ個人的には確かにマスクを外したらどんなだろうと想像することはあっても
性的感情というものはほとんど意識したことはないですけどねぇ。
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