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新書「物理学者のすごい思考法」を読了

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インターナショナル新書の「物理学者のすごい思考法」橋本幸士著を読みました。

前著に続いて思考方法のハウツー本みたいなものかと買ってみて読みはじめたのですが
ハウツー本ではなくまったく毛色の違ったエッセイ集でした(笑)
とは言え、実際に理論物理学者である著者自身の思考法なども書かれていたり
それ以上に日常のちょっとしたことをネタに普通の人とは違うものの見方について
「すごいだろ」というより半ば自虐的に変人扱いしながら書いているのはおかしくもあり
それでいて物理学などの雑学も盛り込まれていてへぇーとなることも多く
なかなか楽しめる一冊となっていました。

そのあたりは「はじめに」に以下のように書かれていますので
冒頭だけでも読んでから買えば間違いなかったのですが
この時期はあまり本屋に長居したくないし結果的に面白かったのでよしとしましょう。
                                   (以下引用)
 この本は教科書ではありません。 (中略)        この本はじわじわと効く
薬のように書かれています。物理学的思考法を構成的に学ぶのではありません。この本に
は、理論物理学者である僕個人が培ってきた物理学的思考法を、日常に起こる様々な現象
に適用したエッセイが書かれています。一つ一つの短いエッセイを、薬を飲むように読ん
でいけば、物理学的思考がどんなものか、そしてその適用方法が体験できます。
                                  (引用終わり)

笑えるのはその次に本物の薬になぞらえて使用上の注意や用法・用量が書かれていることです。
例えば、物理学でアレルギー症状が出たことがある人は書店に相談してくれとか
一日一回・適量を読んでくれとか使用期限は2ヶ月などと書かれてます。
さすがにボクは数日間で読んでしまったので一日の用量はやや超過気味だったのかもしれません。

 

いくつか面白いと思ったことを取り上げてみましょう。
                                   (以下引用)
 ここに一つの不思議が生じる。宇宙の自然法則は簡素であり、それはそもそも直線的だ。
例えば「慣性の法則」とは、力が働いていない物体は等速直線運動をすることを言う。す
なわち大本では、物体の運動は直線的なのだ。人間が造り出す形状は、その簡素な法則を
そのまま利用するため、直線的になるのだ。ではなぜ、その直線的な自然法則に支配され
ているはずの自然は、「曲線を創る」のだろうか。  (中略)
 二重振り子の運動は、科学的には「カオス」と呼ばれている。カオスとは、ほんの少し
でも運動がずれれば、その後の運動が全く異なってしまうことを言う。  (引用終わり)

グネグネしたビルに興味を惹かれてこのエッセイになっているのだが目の付け所が面白いですね。
確かに自然法則は簡素だけど自然はカオスに満ちています。
なので、地球環境も生物もカオスに溢れていて単純な人為的地球温暖化論や外来生物駆除などが
いかに浅はかで根拠に乏しい議論であるかということでもあるんですよね。

そして、その「カオス」については別のエッセイでも解説が加えられています。

(以下引用)                               カオス的
な対象は、二つの性質を兼ね備えている。第一に、初期値鋭敏性。第二に、エルゴード性
である。(中略)
 カオスの第二の性質であるところのエルゴード性、これは、「あらゆる可能性を尽くす
ことができる」ということである。時間をかければ、どんな可能性も試すことができる。
これ以上良い人生はないではないか。                 (引用終わり)

つまりは、カオスの現象についてシミュレーションしても初期値のほんのわずかな与え方の違いで
全然異なるシミュレーション結果となるわけだし、時間をかければ(初期値を全部試せば)
どんな結果だって得られてしまうということなわけですね。
ただ、人生は限られた時間しかないのでカオス的な人生が最高とも思えませんけど……(笑)

 

なお、著者は最初は数学者を目指して大学進学したけどそこで挫折して理論物理学者になったそうです。
そのあたりについて次のように書かれています。
                                   (以下引用)
大学における数学は、高校の数学とは違ったのだ。大学の数学は数学者のものであり、数
学者とは「新しい言葉を作る」職業なのだ。矛盾しない論理だけを頼りに言語を作ってい
く。それが本当の数学なのだ。   (中略)      物理学は、この宇宙で起こる
あらゆる現象を数式にして、数学者が作り上げた微分や積分などの概念を駆使し、現象の
理由を解き明かしてしく学問である。  (中略)
 今となってわかることだが、高校での数学は、すでに開発された言葉をどう使うかの訓
練と、その言葉を使えばどんな概念がつながりうるかを試験する場だった。これを僕ら理
論物理学者は「算数」と呼ぶ。算数は数学ではない。          (引用終わり)

といわれてしまうと、元エンジニア(工学)のボクも算数までしかやらなかったことになりますね。
ただ、小学校までの算数と中高の数学とはまったく別物だとも思っているのでうーんとなるかな。
別のエッセイで「社会の役に立つか」という話がでてきますが
理論物理学・基礎物理学の現場ではその質問自体が全く興味の対象ではないとのことなので、
そこのところからして工学とは発想の出発点も目的もまったく違うということでしょうね。

ただ、考え方が似ているなぁと感じるところも多々あって
例えば次のような話で球の体積の公式を半径rで微分すると表面積の公式が得られるのですが、

(以下引用)                「微分」の定義は、ちょっとだけrを変更
した時に出てくる変化分、ということである。  (中略)
 微分とかいう難しそうな考えを理解しなくとも、球の体積と表面積の公式を覚えておけ
ばいいじゃないか、と言われるかもしれない。それは違う。  (中略)      僕
は大学教授だけれども、高校で習う「三角関数の公式」など覚えていない。けれども、そ
の考えを理解しているから、必要な時に公式を導けるし、公式の適用範囲外でも使えるよ
うに一般化できる。物事の「働き」を理解するというのは、そういうことなのだ。
                                  (引用終わり)

ボクも公式覚えるのは嫌だったので最低限のものしか覚えてませんしたぶんほとんど忘れました(笑)
でも、公式は必ずどうしてそうなるのか論理的に導き出して納得するようにしていたので
(現役時代なら)必要な時には導き出せるという自信はありましたね。

社会人になってからも車両の二輪モデル(XY平面だけの運動)の連立運動方程式も導き出して
それらをラプラス変換することで周波数応答特性を得るのも導き出して完全理解してましたし
それによってバイブル的な安部正人著の本に誤記があるのも見抜けました。
社内教育の「車両運動力学」の講師をした時も講義資料は全て自分で書きなおしたくらいですし。

また、2本吊り法によるヨー慣性モーメント計測の算出式なども
社内の標準試験法では誤記されていたのを見抜くことができましたしね。

 

最後は思考法とも物理学ともあまり関係ないですが爆笑したことを紹介しておきましょう。
                                   (以下引用)
 研究室の、恩師の一人である先生は、  (中略)
     髪の毛は天然パーマで、伸ばし放題だから、体に対する頭部の大きさが日に日
に変化していた。3ヶ月に一度、急に頭が小さくなる現象があり、それを我々は素粒子物
理学の専門用語をもじって「繰り込み」と呼んでした(繰り込みというのは、計算結果が
無限大になるのを有限にする操作のことである)。           (引用終わり)

あはは、ボクが大学生だったころはまさにこの繰り込み状態でした。
天然パーマで3ヶ月に一度くらいもう爆発したみたいな頭になってから散髪に行くと
頭が小さくなって帰ってくるの繰り返しでしたね。
もちろんそれを「繰り込み」という言葉も概念も知りませんでしたけど(汗)

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